「カンヌで何してたかって?」
ボーンの運営会議をさぼってカンヌで何してたかって? 決まってるでしょ。G20ですよ。今年のG20/G8(金融・世界経済に関する首脳会合:金融サミット)はフランスのカンヌで11月4〜5日に開催された。欧州の財政危機が世界経済を揺るがしている折から、ヨーロッパが話題の中心で、それ以外の国の影は薄かった。でも日本では、野田首相が消費税10%を国際公約したことが、さぞ大きく報道されていたんでしょうね。なにしろ向こうにいると日本の新聞がなかなか読めないもので。ナンチャッテ。
ウソです。私は、G20の10日後、あの薄暗いパレ・デ・フェスティバルの地下で、クール・ジャパンのブースのデザインの責任者としてその設営にあたっていた(実際に切り盛りしていたのは、千葉大大学院を卒業し当研究室で博士号を取得したパレスチナのニスリン・ザヒダさん)。会期は16〜19日だが、私は14、15日に設営に参加し、19日に入試の業務があるので16日の初日の様子を見て17日朝には帰国の途についた。見本市の名称は「MAPIC
2011: the International market for retail real estate」。ショッピングセンターの見本市で、世界の都市自治体、ショッピングセンターのディベロッパー、設計事務所、出店者などが一同に会するまさに「市場」。自治体は地図を広げて用地を売り込み、ディベロッパーは新しいショッピングセンターの模型を並べ、出店者ではたとえばIKEAが大きなブースを構えて盛んに商談をしていた。
われわれのテーマは「Crafting Lifestyle」。今回は、被災地とくに岩手県のクラフトを中心に日本のライフスタイルを紹介した。併せて、宮城県石巻の、古くなった大漁旗を使った帽子や洋服のファッションも出品、展示の写真を白黒で統一したのでクールなクラフトとともに色鮮やかな大漁旗が見事なコントラストをなした。大船渡の紫雲石硯をつかって「心」という字を書いてもらうコーナーは、いつも誰かがトライしており、シェフがその場で握る野菜すしは、できた先からあっという間に捌けていった。
理論的背景は「ライフスタイルのブランド化」、昨年5月の「ぼやき」を見てください。@コンパクト・シティの実現(=中心市街地の再生・活性化)、A地域のライフスタイルのブランド化という二本の柱で、日本の地方を、都市と農村が相互に助け合う田園都市を再構築し、世界がうらやむような、魅力溢れる、豊かで清潔で住みやすい成熟社会のモデルにつくりあげていこうというプロジェクトの一環。今回は、経済産業省クール・ジャパン海外戦略室の支援を得て、復興に焦点をあて、「復興は暮らし方の創造から」をテーマに、「優れた工芸品や特産品によって生まれる新しい『暮らし方』」を出展した。[コンパクト・シティ×ライフスタイルのブランド化=復興まちづくり]の実現は、その他の地方を含めた日本の再生の試金石となる。
成果は? パリ・セーヌ川沿いのブラウンフィードで進行中の文化施設へ出店のオファーを受けるなど、手応えあり。会場を取材していた記者は、ブログで「ブースデザインの勝手ランキング」を発表し、わがブースを一等に選んだ。最終目標は、日本の各地に住民・市民が元気で快適に暮らすコレクティブ・タウンが形成され、そこにあこがれて海外からも人びとが訪れるようになること。いい初夢が見られるかな。
千葉まちづくりサポートセンター代表・福川 裕一 |