水道水源全国ワースト1・130万県民の飲み水 |
印旛沼再生への市民参加 「わいわい会議」開催のおしらせ |
平成18年10月27日 |
「子供の頃は、印旛沼でよく泳いだよ。底まで見えて、タンケ(カラスガイ)も採ったし、ウナギもいっぱいいた。」と酒々井の人が言う。ミスター長嶋と少年野球仲間だったというから70代か。今から40〜50年前の話らしい。 その後、昭和40年代から現在までに流域の土地利用は、水田・畑は60→40%へ、山林は28→25%へ、市街地は10→30%へと大きく変化し、印旛沼の環境悪化をもたらした。水質は人口の増加による都市型の排水汚染と農地・畜産からの汚染が多く、富栄養をもたらしている。 印旛沼は現在、飲み水、農業用水、東京湾岸工場地帯の工業用水として利用されている。その水源は沼に流れてくる川の源の谷津の湧き水や、流域の田畑や、林や、住宅地や市街地である。沼の流域の広さ、複合的な環境悪化の原因のからも、総合的な対策と、一貫した政策、なによりも市民参加が必要であることから「わいわい会議」が誕生した。 今、印旛沼流域で起きている問題は、 普段の水の量が減っている (水源谷津の消滅 下水道整備で川の水量が減少) 水が汚くなっている(全国湖沼の水質ワースト3位 水道水源としてはワースト1 COD10) 生き物が少なくなっている (沈水植物は23種から2種へ かっては雪の降らない千葉への渡り鳥だったガン類、トキ、コウノトリ、タンチョウ 食物連鎖の上位の鳥類が指標とされる) 人と水のかかわりが少なくなっている (漁業資源の減少 屋形船 泳げない) 水に触れる場所が少なくなっている (水深の増大 アオコの発生 堤防やアシ帯の整備によ る水際線の近寄りがたさ、単調化 ヘドロ) 水害が発生しやすくなっている(干拓による面積の減少 集中豪雨発生 流域の浸透性の減少) が深刻である。印旛沼再生を求める声に、千葉県は印旛沼流域水循環健全化緊急行動計画を策定した。この過程に県民の参画、協働なしに印旛沼の再生は実現しない。 印旛沼の再生に向けての目標はわかりやすく、 @遊び泳げる印旛沼・流域 A人が集い、人と共生する印旛沼・流域 Bふるさとの生き物はぐくむ印旛沼・流域 C大雨でも安心できる印旛沼・流域 である。改善への行動を実行できることからすぐに始め、評価、計画の見直しをしながら、最終的に目標を達成するやり方で、30年計画で再生しようとしている。(みためし計画)この過程に県民の参画・協働が欠かせない。 具体的な取り組みは、 雨水を地下に浸透させよう ( 雨水浸透枡の設置 浸透性のある道路 駐車場、植林) 家庭排水の汚れを減らそう (高度処理合併浄化槽の導入 無洗米 油ふき取り 洗剤は適量) 人や環境に優しい農業をすすめよう (土づくりで化学肥料の削減 千葉のエコ農産物を購入) ふるさとの自然を大切にしよう(山林、谷津田、湧水の保全 水生植物、沼や川の生き物の在来種の保全 ごみの不法投棄の監視 ゴミ清掃) 水害から町や交通を守ろう (調整池 水田の遊水機能を確保 浸透枡 道路や駐車場での透水性整備 低くなった印旛沼の堤防を高くする ) が挙げられる。 わいわい会議(印旛沼流域水循環健全化会議主催)への参加を拡げよう! 印旛沼再生緊急行動計画への理解、参加、提案を呼びかける、「わいわい会議」は当初、佐倉市で開催されたが、昨年から印旛沼に流入する河川の流域ごとに開催し、課題の地域性を考えながらの話し合いとなってきた。今年は、神崎川流域は船橋会場で、北印旛沼流域は成田会場での開催となった。当日は県や流域12市町村とともにNPO委員は全体会や分科会の運営に当る。 「わいわい会議」には、ボーンセンターの成岡さんがNPO支援課から、私は「下泉・森のサミット」からのNPO委員として関わってきた。 ここで、市民による印旛沼・鹿島川流域水源涵養林づくりの会「下泉・森のサミット」のゆかいな仲間について。1999年から印旛沼に注ぐ鹿島川の流域に植林した1000本の広葉樹の育成管理作業をしている。8年目、混み合ってきたので冬に1回目の間伐をした。活動は下草刈、周辺整備、堆肥作り、バンブーハウス作り、植林の呼びかけのためのイベント参加、苗木提供、県エコマインド・インターンの受け入れ、研修など。お楽しみは、果実ゴロゴロ園や山菜園、お弁当広場のヤマザクラの下での昼食時である。会員が奥様や孫を連れてきて、森づくりの様子を伝えられる場になってきた。植林後に生き物も仲間になった。ミミズが湧き、虫が鳴き、無数のカエルが飛び出し、ヘビや鳥やハチの巣、キジが卵を抱く姿、ノウサギ、雪の後にはタヌキの足跡も発見した。郷土の樹種で森づくりを始めると生物の多様性が育まれる実験みたいだ。雨が緑のダムから、地下に浸透して湧き水から印旛沼へ注ぐことをイメージすると希望が湧いてくる。 自然との調和以外に、人間が地球上で生き残る道はない。印旛沼も人間のためだけではなく、ふるさとの生き物が復活して、私達も美味しい、安全な水が飲めるようになりたいものだ。 いつの間にかバランスを失ってしまった千葉県での暮らし、その結果は印旛沼の環境の悪化であり、失われた生きものたちであるなら、印旛沼は流域の私たちの暮らし方を映す水鏡である。 |
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鈴木優子(ボーンセンター副代表) |