博物館提言活動
第1章 千葉県立博物館構想に関する県民提言
千葉県は昨年9月、行財政改革の一環として11館ある県立博物館の統廃合、市町村への移管、民間委託、入場料の有料化などを検討課題として打ち出した。
こうした博物館見直しの動きに対し、昨年11月、博物館が今日まで果たしてきた役割や課題を踏まえて、これからの県立博物館のあり方を考えるシンポジウムを県民、NPO、行政の共同で開催した。このシンポジウムでの議論および関連のアンケート(事前アンケート(回収数500)、会場アンケート(回収数40)、各博物館へのアンケート)に基づき、これからの県立博物館のあり方について、千葉県及び関係機関が今後取り組むべき内容として、次のとおり提言する。
【提言T】 |
県立博物館は地域の課題解決に取り組み、次の6つの期待に応える公共施設として、主体的に運営を行う。 |
○ 市民とのネットワーク・協働によって、市民と響きあう博物館 |
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具体的には、館長や博物館協議委員の一部の公募・公選、博物館協議委員会の公開、研究テーマの公募、特別展の公募、市民との共同研究やその成果の発表の場の提供、計画的なマーケティング・リサーチの実施、市民展示室の開設、市民研究家のサポートや育成、市民に開かれた研究拠点の創出、博物館活動に協力するボランティアの育成などを、市民参加と対話のもとに進めること。 |
○地域の文化・科学情報の発信基地となり、地域の文化や自然といった環境と共生し、人も環境も共に育つまちづくりの拠点としての博物館
○今日とこれからの視点を大切に市民とともに地域の新しい価値やライフスタイルを創造する社会教育機関としての博物館
専門性を今に生かし、市民ニーズを反映した積極的な研究活動、展示、アドバイス、啓発活動を行うこと。
○ 地域資源を発掘・保全し、これを有効に活用し、そして地域の課題を解決する支援体制が整備された博物館 |
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博物館の将来のチャート(航海図)を描くこと。その中で、博物館を人々の感性を高め知性・社会性をも向上させる自然体験や文化体験の場及び仕組みづくりの場として位置づけること。そのことは地域の新たな資源として、地域振興にもつながる可能性をも持つ。
中央博物館では施設としての本館の他に、フィールドミュージアムとしての「生態園」、現地の博物館としての「海の博物館」と展開されてきたが、今後、現地での情報と環境に触れることができるフィールドミュジーアムの広がり、「山の博物館」や「千葉県自然保護基礎研究所」の創設など、故沼田眞中央博物館名誉館長の構想の実現を是非とも期待したい。 |
○子どもの健全な育成を支援する博物館
学校と連携し、子どもの関心を呼び起こす展示、解説、実体験などの教育活動に工夫を凝らし、子供に文化や自然科学への興味を喚起できること。
○具体的な評価の方法を示し、評価を受け、自ら主体的に質を上げることができる博物館
博物館の信頼性を高め、多数の市民の理解と支持を得るためには不可欠である。
【提言U】 |
今日の県財政逼迫は博物館の運営に起因するものではなく、支出削減を理由にした博物館統廃合計画には反対する。県の博物館施策は博物館の役割を確認しかつ評価システムを構築することを前提に次の視点で進めていくことを求める。 |
提言Tの博物館への6つの期待に応える博物館施策の充実
○ 施策決定プロセスの徹底した情報公開と当事者である県民や博物館の参画(千葉デモクラシーの実現)
【提言V】 |
各博物館は、当面の課題として可能な部分から県民やNPOとの協働を積極的に進めるとともに、そのための体制(基本方針、制度、環境など)を整備し、行政と市民による新しい公共性を構築する一翼を担う。 |
千葉が抱える課題に関係する要望、あるいはシンポジウムの開催会場となった県立中央博物館への要望が多く出されたのでその特徴的なものを以下に示す。これらのうち、実施の可否を検討し新しい協働のテーマとしてすぐに取り組める項目から実施することが望まれる。
@三番瀬や盤洲など、干潟の保全への関心の高まりを受けとめ、干潟の特別展の開催や、干潟の保全など具体的な課題の解決に向けた市民との共同研究を実施する。
A三番瀬や盤洲干潟をフィールド・ミュージアムとして登録し、環境教育に活用していく。
B博物館研究費の増額や専門研究員の欠員補充を図るほか、地域との協働を博物館の本務の 1つと位置づけた上で組織運営をする。
C移入種が流入する通路となっている成田空港に分館を設置するなど、移入種に関する展示・呼びかけが行われる場所や機会を設ける。
D全国的にも遅れている千葉県の野生生物行政の打開のためにも、山の博物館、自然保護基礎研究所を設置する。
E博物館が中心になって房総の生物の聖域を定めた上で、市民と協働で調査・管理するとともに情報発信を行う。
F各種のアセスメントにおいて博物館の専門的な立場から意見を反映させる。
G多くの市民提案を実現するために必要な博物館予算の増額を図る。
Hこれからの博物館について、県内各地の博物館で地元の人と議論する会を開催する。
I博物館の管理・運営に関する検討委員会をガラス張りにし、一般市民への説明責任を果たす。
J博物館の今後の方向性及び施策の決定は、市民に開かれた場で行う。
K今後の観光立県推進において、博物館を大きな拠点として活かす。
L博物館の活動内容や特徴、目的が誰にでもわかるように博物館の名称を検討する。
本提言の詳細については、策定するにあたって考慮した状況(博物館設置の経緯、施策、シンポジウムの内容、アンケート意見など)を第2章から第4章に、市民が博物館に期待する役割や姿について第5章に記す。
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