「博物館とまちづくり〜市民とともに」シンポジウム報告

7月31日(土)午後、県立中央博物館1階講堂において、市民、NPO、博物館関係者など約60名が参加して「博物館とまちづくり」シンポジウム(主催:ボーンセンター)が開催されました。
 全国で博物館を取り巻く環境が厳しさを増している中、ボーンセンター市民研究所が03年度県NPO活動提案募集事業として取り組んだ「博物館の新たな価値と評価尺度事業」の成果報告とともに講演、パネル討論を通じて、地域、市民と連携しその期待に応える博物館のあり方を考えようと、開催したものです。
 冒頭、大槻幸一郎副知事からのメッセージ(別掲参照)の紹介、「九十九里いわし博物館」事故で亡くなられた方に参加者一同黙祷を捧げた後、第1部「03年度県NPO活動提案募集事業」成果報告会、第2部講演、第3部パネル討論が行なわれました。
 第1部では報告書内容とともに事業の成果の一つである「利用者視点の博物館サービス調査票」を利用して当日午前中に実施した中央博物館の利用者評価ワークショップの結果も報告されました。
 第2部の元野田市郷土博物館館長補佐・学芸員で法政大学キャリアデザイン学部の金山喜昭助教授の講演では、地方公共団体が運営する公立の地域博物館は1951年に制定された博物館法の枠内にとどまるのではなく、住民の主体的な「まちづくり」に貢献する博物館を目指して住民に積極的に開放する必要があること、とりわけ“人の生き方”を開拓するキャリアデザインをはかることにより「まちづくり」を担う住民(自立した市民)の育成に寄与することが地域社会の再生のために重要になると指摘されました。
 第3部では、県教育庁文化財課の佐久間豊学芸振興室長、東葛地域自然文化研究所の新保國弘所長、県立関宿城博物館の瀬戸久夫学芸課長の3氏がパネラーとなり、金山氏をコメンテータに、ボーンセンターの栗原副代表の司会で「市民とともに歩む博物館」をテーマにパネル討論が行なわれました。
 その中で、佐久間氏は市民との協働を視野に入れ博物館が自ら大きく変わりつつある様子を、新保氏は市民・NPOの立場で「新撰組」を文化資源の一つに流山のまちづくりに取り組んでいる様子を、瀬戸氏は市民の情報や資料提供により地域の埋もれた文化資源の発掘に取り組んできたことなどを話されました。金山氏は指定管理者制度の導入など博物館を取り巻く状況を「危機」ととらえるのではなく、市民・NPOと歩む博物館となるチャンスととらえるべきだとコメントしました。
シンポジウムの詳細は今後報告書としてまとめますのでそちらを参照ください。(運営委員・川本幸立)
 
●大槻副知事からのメッセージ(抜粋)
「(前略) 博物館の新しい方向性や役割などについて、内部・外部の評価を行なうことによって、県民の方々が活用しやすい博物館への改善が望めるものと考えております。
 本日、報告されます『新世紀において千葉の博物館が生み出すべき価値の検討と評価尺度づくり』は、私も先日報告書の内容を拝見させていただきましたが、その検討にとって大いに参考になるものと考えております。
(後略)」 
成果報告会資料「新世紀において千葉の博物館が生み出すべき価値の検討と評価尺度づくり」報告書(全238頁)の残部を実費(2千円、
送料込み)でお分けします。希望される方はボーンセンター事務所までFAXまたはメールでお申し込みください。

(目次紹介)
 本編(92頁) 
     はじめに、序章「本事業の目的と方法」、
     第1章「博物館の価値・役割と評価尺度の考え方」
     第2章「入館者・利用者の立場からみた博物館サービスの実態」
     第3章「博物館が生み出すべき価値の洗う出し」
     第4章「博物館のサービス提供プロセスの現状調査」
     第5章「博物館の役割と評価尺度の試作」
     おわりに
 資料編(146頁)
     資料1「博物館訪問調査」
     資料2「各博物館ワークショップ」
     資料3「博物館ネットワーク ワークショップ」
     資料4「千葉県立中央博物館経営品質報告書」
     資料5「博物館の役割及び評価に係る資料」

(執筆)家永尚志、川本幸立、栗原裕治、鈴木優子、浜口 勤
 
特定非営利活動法人
千葉まちづくりサポートセンター(ボーンセンター)
E-mail: born@jca.apc.org

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