*  181 北見けんいち「北見研一のけんいちの昭和トラベラー 昭和44年 東京・新宿駅西口地下広場 (文のみを)(『ビッグコミック』2 2010年5月25日)(10/05/13掲載)

 漫画週刊雑誌『ビッグコミック』の2010年5月25日号に、「北見けんいちのけんいちの昭和トラベラー 昭和44年 東京・新宿駅西口地下広場」というイラストと文が載っています。以下は、その文だけの転載です。イラストについては、本サイトの「News」欄の「ビッグコミック」に「フォークゲリラ」のイラストに紹介してあります。

 ザワザワした時代。今この頃を振り返ってそう思います。場所は新宿駅西口広場。東京以外にお住まいの方のために少し説明すると、ここは新宿駅に現在もある地下道で、数種の交通機関の乗り換え口や百貨店地下入り口などを連結しています。地下とはいえ中央に巨大な吹き抜けがあって、昼間は日光も入るのです。この年の春から夏くらいまで、ここで「新宿フォークゲリラ」と呼ばれた人々が、土曜日の夕方になると集会を開いていました。岡林信康の作詞作曲による「友よ」という曲が定番でしたが、とにかくみんなで反体制フォークを合唱し、ビラが撒かれシュプレヒコールが叫ばれます。その中心メンバーは、市民団体「べ平連」の人たちでした。この前年には新宿駅がデモ隊に占拠されたり、翌年には70年安保闘争があったりと学生連動はこの頃がピークです。そして、その運動家の学生たちがシンボルにしたのが、赤塚先生のキャラクター・ニャヤロメでした。ニャロメは、「もーれつア太郎』という作品でよくいじめられる脇役なのに人気がありました。
 今だから白状すると、ポクはフォークは苦手で、音楽といえばジャズでしたし、ちょっと上の世代のポクの眼には、学生運動が「若いのが群れてる」ようにも映りました。でも、とにかく当時は社会の中に、混乱とエネルギーがあリました。今では大勢の逮捕者や怪我人が出るデモなど、日本では起こりそうにありません。今の若い人は、地上に出て社会と拮抗する「吹き抜け」を、どこで見つけるのでしょう?

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