136小田実「(インタビュー)民主主義を殺さぬために――「ワイマール体制」崩壊の前夜から――」( 『世界』2007年8月)(2007/07/10記載)

 胃がんで入院中のインタビュー(5ページ)。そのなかの、ベトナム反戦運動に関連している部分を以下に転載する。(なお、ベ平連にふれてはいないが、『論座』8月号にも「死ぬ前に言っておきたいことがある」というインタビュー記事(6ページ)が掲載されている。

−−小田さんは、すでに一九六〇年代から日本軍の加害を取り上げています。なぜ加害責任の問題を考えられたのでしょうか。
 
私たち市民は小さな人間です。小さな人間が、戦争に巻き込まれたらどうなるか。人を殺せと命令されたらどうするか。戦争で市民は被害者にもなり、加害者にもなる。それは単に並立しているのではなく、小さな存在である市民は、殺される存在でもあるがゆえに、殺す存在でもありうるんです。
 ベトナム戦争の反対運動に取り組んでいくなかで、私はそういうことを考えたのです。ベトナム戦争にアメリカ兵は駆り出されるようにして連れて行かれた。その面では被害者だった。しかし、ベトナムの民衆にとってはどうだったか。やはり加害者だった。
 日中戦争の時の日本兵もまったく同じだったのではないか。そのことを私はベトナム戦争の反対運動のなかで痛感し、我々自身の加害者責任に思い至ったのです。……
 …… 日本の戦争体験者が、戦争を追体験したのが、ベトナム戦争だったと思う。私たちがベトナム反戦運動を始めたとき、日本のかつての軍人が、たくさん参加してきましたよ。彼らは言ったんです。「かつて我々の犯したような間違いを、アメリカが再び繰り返している」、これを止めなければいけない、我々の失敗をアメリカに引き継がせたくない、と言って、たくさん来ていましたよ。
 日本人だけではないかと思う。過去の戦争について、これだけたくさん語っているのは。記録をひもといてみればわかる。たくさんの元軍人たちが語っている。
 彼らはベトナム戦争のとき、アメリカに「同じ過ちを繰り返してはいけない」と言っていた。しかし、彼らの心配は、その通りになってしまった。イラクの現状を見ても、アメリカ合州国が同じことを繰り返していることがわかる。……

(『世界』2007年8月号より)

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