106 吉川勇一「ベトナムから何も学ばず」( 『朝日新聞』2005.05.04.)(2005/05/05搭載)


ベトナムから何一つ学ばず
                 元「べ平連」事務局長
                     吉川 勇一
               (東京都西東京市 74歳)
 この4月30日はベトナム戦争が終了してから満30年になる。日本で市民運動がベトナム反戦のデモを開始してからは満40年になる。
 私たちは、この反戦運動の中でさまざまなことを学んだ。国家の命に反してでも、守らねばならぬ人間としての生き方があるということも、アメリカの反戦脱走兵を援助する行動の中で実感したことだった。
 しかし、この戦争に最大の責任を持つアメリカの政府と軍部は、それから何一つ学ばなかったようだ。イラクの事態はそれを示している。また、アメリカのこの戦争を無条件に支持し続けた日本の為政者も、やはり必要な教訓を学ばなかったようだ。
 自民党政府は今、イラク戦争に際しても、アメリカの政策にひたすら寄り添い、今回は自衛隊まで派遣した。さらに、こうした海外派兵を国の常態にしようとして憲法9条の改変までもくろんでいる。
 中国や韓国から言われるまでもなく」歴史から日本が汲み取り静かさねばならぬことは、数多くあるはずだ。ベトナム終戦30周年に際して、それを強く思う。

( 『朝日新聞』東京本社版「声」欄 2005.05.04.) 

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