45 大イベントが始まろうとしている――オバマの就任式を前にして(現地時間 2009年01月15日 09:22発 日本時間 16日 03:21受信)
しばらく中断していた室謙二さんからの通信が久しぶりに送られてきました。以下に転載します。
日本の友人たちへ。久しぶりのアメリカ通信です。またときどき書 くかもしれません。
オバマの就任セレモニーは、次の火曜だけど、これは大イベントになります。この週末から有名音楽家が演奏するお祝いのフリーコンサートが始まり、さまざまなイベントが火曜の朝から(東海岸時間午前10時)の就任セレモニー行事に向かって開かれます。その日程表をウェブで見ましたが、何ページにもなります。これまでにはなかったことです。これらは、オバマへの期待と同時に、ブッシュの終わりの、両方への喜びです。
オバマがどれだけアメリカ大統領として仕事ができるか、まだ分かりません。しかしオバマがいまのアメリカの最良の部分であることは事実です。ブッシュの最悪の8年のあと、マケインとペイリンが共和党から出てきたのですが、この組み合わせが大統領と副大統領になったらどうなるかと、震え上がりました。マケインは、実際にアメリカ経済がどうしようもないところまで来ているのに、経
済のファンダメンタルは悪くはないと言い張るほどの無知と政治的な不誠実さをもっていたし、ペイリンは進化論に反対、中絶反対、
避妊性教育反対の右翼キリスト教で、これは私にとっては、日本でいったら万世一系天皇万歳の赤尾敏が、権力の中枢に座るようなも
のです。
だから多くの人がそうだったように、11月4日の投票日の夜、ABCニュース特別番組を見ていて、東部時間の午後11時(西海岸時間午後8時)に司会のチャーリー・ギブソンが、ただいま東部時間の11時になりました。西海岸時間の8時で西海岸における投票が終わりました。ここでABCニュースはオバマ候補の当選確実をアナウンスします。と言ったときに、私も女房もそこに集まっていた友人たちみんな泣き出しました。ABC
はそのあと10分以上も、シカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコその他のさまざまな場所に集まっていた群衆の爆発的なよろこびの表現、そして多くのひとが抱き合って泣いたり、座り込んで泣いていましたが、それをただ撮していました。シカゴ集会の10万人の群衆のなかにいたテレビ司会者のオプラも、人によりかかるように泣いていましたし、ジャシー・ジャクソン師はボロボロと涙を落としながら、それを拭きもしない。
それらの表現は、よしこれでブッシュの8年は終わるぞ、マケイン・ペイリンは阻止した、アメリカの最悪の時代は変わっていくかもしれない、ということです。最後の最後まで、2000年の時のように共和党がインチキをして、オバマ当選が阻止されるのではないか、オバマが殺されるのではないか、という不安を多くの人が持っていたのです。ともかく不安とオバマに対する期待が、その数ヶ月間渦巻いていたのです。それが第一部ですね。
そしてこれから就任式セレモニーの第二部がはじまります。さっきテレビニュースで就任式セレモニーの予行演習を見ました。ブッシュがヘリコプターで会場を去っていく予行演習のあと、リポーターは「これでブッシュ時代の終わりです」と真面目に言っていました。実際にブッシュがヘリコプターで飛び去ったかのように。同じニュースで、予行演習が終わったあと、軍の女性士官が、われ
われの新しい軍最高司令官(コマンダー・インチ・チーフ)をむかえる準備は終わりました。と短く言っていました。そこにあったの
は彼女の気分ではなくて、軍の仕組みです。しかし同時に彼女の中で、新しことへの準備がおわったことも感じられたのです。
もうひとつその予行演習ニュースで感じたのは、マーチング・バンドがいずれもよくスイングして、いい音を鳴らしていたこと。
室 謙二