37  大統領選挙 (その2) ステューピッドであるということ (現地時間 2004年10月10日 12:29:21発 日本時間 11日 11:11:30受信)

 前のメールで、ブッシュがステューピッドである、と書きました。それでは、それが大統領選挙とどういう関係にあるのでしょうか。
 本屋に行くと、いかにブッシュ大統領がステューピッドであるか、という本が何冊もあります。その多くが、大統領の言葉の言い回しの間違いなどを、やりだまにあげています。

 数日前にテレビを見ていたら、どこかスイング・ステートのブッシュ支持の集会で、黒人の支持者、州議会議員か牧師だったと思う、がブッシュ大統領が少しぐらい言葉が滞って、言い間違いをしたりするのが、どこが悪いのだ。われわれだって、やはり間違った言い回しをしたり、言葉が滞ったりするではないか。と言って、拍手を浴びていました。

 たとえば今回のディベートでは、何回かやはり間違えたらしい。と言っても、ぼくには分からない。ぼく以外の三人はそれを笑ったりする。友人は、つまりブッシュはウォールストリート紙を読んでいない、ということだね。と言った。ケリーは読んでいて、ブッシュは読んでいないことが、ブッシュの言葉使いで明らかに分かったということでしょう。
 もう一回は、分かった。ブッシュはInternetsと複数形で言ってしまったのです。Internetsなど存在しません。あるのはInternetです。つまりブッシュはインターネットを使ったことがないのか(信じられる)、Internetsという単語をどこかで見たことがあるのか(信じられない)、Internetと書いたことがないのか(信じられる)、単数形と複数形を意識したことがないのか(信じられない)、ともかく間違いです。
 この程度の間違いでは、新聞が指摘したりはしない。もう当たり前だからね。

 それでこのディベートを見ていて、三人が笑ったとする、ぼくがその理由が分からなかったとする。それで、ぼくは別に馬鹿にされたとは思わない。しかし多くの人は、分からなかったので、分かった人に、馬鹿にされたと思う。それが、いまブッシュ支持者に起こっていることです。
 ブッシュはステューピッドです。だから支持される。

 昨日、ぼくのフライ釣り友達にして、白人ワーキングクラス出身にして、きわめて繊細な感受性を持ち、同時にまったく教育のない男が、ぼくのブッシュとケリーについての政治的な意見を聞きたがる。ぼくはケリーを支持していること、なぜブッシュを支持しないかを、丁寧に説明しました。彼もぼくの意見をまじめに聞いて、そのあと、でもKenji、ブッシュの方がケリーよりずっと頭がいいと思わないか、と言ったのです。ちょっと耳を疑った。しかし、これが現実なんだ。前回のメールで、バークレーはアメリカではない、と書きましたが、こういうような、立派なアメリカ人も住んでいるのです。ステューピッドだから、頭がいいと思われる。信用される。

 アメリカには、もともと、反知性主義というものがある。これは歴史的なものです。
 知識人なんて、信用できるか。知識のないやつらを、馬鹿にするやつらだ、神を馬鹿にするやつらだ。戦争を否定するやつだ。ということになる。
 ケリーは第二回目のディベートで、私はカソリックとして育てられた、いまでもカソリックである、ということを言った。
 ぼくは知らなかった。とこが1988年に離婚をしている。これもやっと明らかになった。ちょっとトリッキーだね、離婚の件があるから。彼が言わなくても再婚なのだから離婚したのは想像していたが、カソリックであることと、離婚はどういう関係か。

 カソリックであると言ったことが、有利かどうか。なにしろ、アメリカは反カソリックは強いから。
 離婚しているということが、これもどう働くかな。
 それともしケリーが大統領になったら、史上最高の金持ち大統領だそうだ。彼自身はそれほど金持ちの階級ではなかったが、株を買ってもうけたそうだし、今の 奥さんが金持ちだから。
 これもどう選挙にどう働くか。

 しかしケリーが大統領になっても、イラクで何をするのか、代案があると思えない。

 兵隊をもっと派遣しようにも、兵隊がいない。(志願制から徴兵制に切り替えるか。ブッシュは、私が大統領でいる間は、徴兵制などありえない、と言った。ケリーが徴兵制に踏み切るわけ?室海太郎よ、お前はどうする?とりあえず、日本に逃げる。)
 他国に派兵するように言っても、相手にされない。(小国とか日本のような国しか派兵をしない。それも殺し合いの現場には兵士を送りたがらない。ヨーロッパがすぐに動くとは思えない。中近東の国は絶対に動かない。)
 お金がなくなる。(ケリーは、増税はしない、と言っている。収支のバランスをとる、と言っているが、ブッシュが戦争で作り出した大赤字をどうやって?)

 ということ。
 状況は、絶望的ですよ。カオスです。
 ブッシュは、本当に馬鹿なのです。ディベートのさなかに、背中に受信機を隠し持って、アドバイザーから無線のアドバイスをうけながら、ディベートをする。ルール違反だよ。でも、ルールもへったくれも、ないのです。勝ったほうが、正しいのです。前回の、ゴアとの選挙のときもそうだった。
 なんとかして、ブッシュが負けないかなあ。
 だとしても、ケリーが大統領になっても、変わらない。
 つまり、絶望的。だけど、とりあえず、まずブッシュが負けないと、どうしようもない。
 という希望を持ち続けている。なにしろ、我が家も、すでにケリーに250ドルに50ドルと、300ドルの寄付をした。
 友人の中には数千ドルの寄付をした人もいる。ぼくたちも、300ドルでいいのだろうか。

 だけど、毎月の現金収支バランスもあるし。クレジットカードを使って、もっと寄付をするか。
 実際に、ケリーのウェブサイトに入って寄付をするときは、クレジットカードの番号を入れるだけ。
 あと1000ドルぐらい、寄付をするか。大金です。史上もっとも金持ちの大統領候補に、ぼくたちが寄付するわけ?
 ケリーは、私は中産階級のために、あなたがたのために、戦う、とテレビで連呼している。
 本当かね。信用できるかね。
 わしいところもある。
                    Kenji

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