35  大統領選挙のシナリオ (現地時間 2004年07月30日 10:29:50発 日本時間 31日 12:28:30受信)

 昨夜で、民主党党大会は終わりました。全部で4日間。3日間はテレビで見ました。ケリーの演説は、思ったよりよかった。何も新しいことはないけど。NancyによればBプラス。そんなものかな。民主党の大統領選挙にのぞむシナリオは、だいたい読めました。以下に、私が読んだシナリオ。

 ケリーは、東海岸のエリート・金持ち(ブッシュはテキサスの石油金持ち・政治家エリート)ではあるが、ベトナム戦争という国家の危機に海軍に志願する。(ブッシュは出頭せずに逃げ出す。)そしてベトナムはメコンデルタで船にのり、部下を指揮して戦い、自らも負傷しながらも、幾人もの部下の命を助ける。(その当時の部下がたくさん民主党大会に出てきた。みんな信念を持ってケリーを支持していたように見える。だから現場指揮官のケリーは、有能であったのかもしれない。)
 ケリーは、ベトナムの経験から、アメリカ政府は間違った戦争をやっているのではないか、と疑い、上院の公聴会に出席、政府のベトナム戦争政策を批判する。(当時のニクソン大統領は、青年ケリーに対して怒った。これは現在、大統領の電話テープで聞くことができる。マクナマラのインタビュービデオでそれを知った。)
 その後、ケリー青年は弁護士となり、政治家となる。上院議員となる。そしてリベラルとして、さまざまな活動をしてきた。
 さて現在、ブッシュ政権は、アメリカの人々を間違った方向に導き、戦争をしている。
 これはアメリカの利益ではない。世界の利益ではない。(ここでブッシュ政権批判。)
 ケリーのベトナムでの輝かしい戦歴から、戦争指揮官としてその能力にすぐれている。(でもあれは現場指揮官なので、総司令官ではないけど。)いま必要なのは、本当のアメリカ国軍総司令官である。それは、ケリーである。国内政治(健康保険政策、教育政策、環境政策)、あるいは国際政治(孤立主義ではなくて国際協調主義)でも、ブッシュがぶち壊したクリントン政治、民主党政治を復活する必要がある。それはケリーである。ということで、ただし重点は、国軍総司令官ということに置かれていたが、ともかくケリー万歳、ということ。
 このシナリオは、ケリーが書いたものではなくて、民主党の主要メンバーが、勝つために集まって議論して作ったものに違いない。民主党は、団結しているように見える。共和党は、この民主党が大統領選挙にのぞむシナリオに対抗しにくいのではないか。(これはPBSテレビで、ケリー演説のあとに東部ジャーナリストたちが、なんだかんだと話していたときも、話題になっていた。)今回の民主党党大会で感じたのは、ときどき、まるで共和党党大会で使われるような言葉が、飛び交ったこと。愛国心、家族の価値、バイブル、911など。もっとも、よく聞けば、それらのブッシュの使う単語は、ここ(民主党党大会)では再定義されて使われている。ケリーの演説を注意深く聞けば、また読めば、それが分かるだろう。書かれたシナリオの上で、ケリーは、だいたいうまく演じた。エネルギーもあった。
 ぼくは反ブッシュということで、ケリーを支持します。
 だけど、クリントンにくらべて、バーモントのディーン知事にくらべて、オーラがないね。カリスマ性はない。だいたいアッパークラスのリベラルなんて信用できるか。わが家は、伝統として大正時代から反封建主義リベラルだけど、貧乏で頑固だった。私は、大学に行くようになって、頑固でないリベラルを見て、あんなのは本当のリベラルではないと思った。ぼくは、本当のリベラルを知っていると思っていたから、全共闘のリベラル批判にも、私自身への批判にも、びくともしなかった。ケリーは、しつこいかもしれないけど、日本語でいう頑固さはあるか。
 ネーダーに関して。
 4年前の選挙のときに、息子のモーゼスとネーダーに関して議論をした。そのときのモーの説は、ゴアは当選する、ただゴアに対して少しでも批判票を入れたい、それでネーダーに投票する。彼(ネーダー)はいいことを言っている。というものだった。ぼくは、反対だった。ゴアは落選する可能性がある。ブッシュが大統領になったら、最悪の事態になる。ゴアに投票すべきだ。あれいらい、この問題についてモーゼスと議論したことはない。911が、あの議論の意味を明らかにしていると思う。
 今回またネーダーが立候補するということで驚いた。前回、ブッシュが当選した後、ネーダーはインタビューで、自分の立候補は間違っていなかったこと、私はブッシュにたいしてもゴアに対しても批判的である、と言っていた。私は、ネーダーは前回の選挙での、政治的な責任は明らかだと思う。今回また大統領選挙に立候補したのは、エゴ以外のなにものでもない、というのが私の考えです。かつてのペンタゴン・ペーバーのエルズバーグは、ケリー支持の演説で、私は、友人ネーダーの考えを支持する。彼が、「だから私は今回の大統領選に立候補する」、と言うまでは。と言っているが、私はネーダーの考えはともかく、そのスタイル、オールドファッション左翼のスタイルが好きになれない。あれは頑固とは違う。エゴイズムだ。
 モンデール元副大統領だったか、PBS テレビの現場スタジオに出てきて、当選するだけが重要なのではない、強い大統領になるのが重要なのだ、と言っていた。勝ち目がでてきたぞ、というのが彼ら、民主党の主だった人間の考えらしい。そう願いたい。

 追記。数ヶ月前に、ぼくは、友人の民主党とケリーを支持する寄付集めパーティに出席して(主催者のジムは民主党とはまったく関係ない、元アメリカ共産党党員を両親にもつ経済学の教授です。いわゆるレッド・ダイパー・ベービーです)、250ドルを寄付した。こんなことは、はじめてです。お金が必要なら、もっと寄付するかもしれない。あの時点で、彼(と奥さんのダイアン)はすでに4万ドル(440万)以上、集めていた。目標は10万ドル(1100万円)だと聞いた。それらは、ウェブサイト(ジムの寄付集めパーティのページが、民主党ウェブサイトの中に作られていた)を通して、民主党のアカウントへ直接払い込まれる。私はそこ(ジムのパーティのページ)に行って、クレジットカードの番号を入れるだけ。インターネットとクレジットカード寄付の時代なのです。
 あとで民主党から礼状が来た。ちゃんと封筒に入った紙の返事で、ケリーのサインがあった。
Kenji

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