49 オバマの医療改革とは(現地時間 2009年07月30日発 日本時間 07月31日受信)
みなさんへ。
数週間前にある朝、突然に脱腸(ヘルニア)になりました。十分も立っていると腫れて痛くなってくる。それに気持ちも悪い。医者にいったら、これを治すクスリはない、手術だけで、簡単なものです。とのことで手術をすることにしました。
手術をしたのが二週間とちょっと前で、まだ傷跡(7センチぐらいの大きさ)が痛いけど、よくなってきます。今日これから女房
とクルマでロサンジェルスまで行って、週末はそこに滞在します。そのぐらいは元気になった。
脱腸の手術は一時間以内、麻酔が数時間でさめるからその間は病院にいて、入院しないで自宅にもどれるはずでした。ところが麻酔の副作用で、偏頭痛がはじまり(子供の時からときどきこれがあります)、もの凄い頭痛と吐き気で、10時間ほど身動きできずに
吐くばかり、結局、一泊の入院になりました。それで昨日、病院から請求書がきました。これが本題。
請求書の総額は、36,946.54ドルです。約3万7千ドルですよ。日本円でいくらか計算してみてください。一時間の手術、それで偏頭痛の発作をおこして一泊。その病院代です。ここには医者の費用は入っていません。ということは、脱腸治療の総費用は、全部で4万ドル弱になると思う。事前に、一時間の手術の病院代は、医者の費用を含めないで、基本料金が1万8千ドルになることは知っていました。だから一泊したのだから、総額でこのぐらいだろうとは想像していましたけど。
病院は特別なところではなくて、歩いてすぐのアルタ・ベイツ病院。泊まった部屋はカーテンで仕切ってある二人部屋。食事だって
普通の病院食さ。さて請求書を見て数字の大きい項目は、Servicesが8000ドル(Servicesが何だか分からない)。麻酔が3000ドル。薬代が1500ドル。Recovery
Room(手術のあとに一時的に入れられる、カーテンで仕切った大部屋)が9500ドル(数時間だけだよ)。そして一泊の入院の部屋代が9500ドルです。あとは雑費、それで全部で約もっとも私は保険に入っている。毎月3万円ぐらい払っているので、このうち「たったの5000ドル」が私が支払わなくてはいけない分です。
アメリカ資本主義は、製薬会社、病院、そして保険会社、それに医者の団体が、医療をお金儲けの装置に作り上げたのです。これがオバマの医療改革の背景です。ところが共和党は大反対している。議会の民主党の一部も反対している。それらのところには、医療関係からの寄付が長年流れています。
私の知りあいの、ワーキングクラス出身の共和党支持者も、オバマの医療改革に大反対です。彼はこのところずっと失業中で、お金もなくて健康保険にも入っていないのですが、右肩のスジを違えてすでに一ヶ月、湿布したり手を布でつったりしています。しかし医者には行けない。保険もお金もないから。だけど彼はオバマの医療改革に反対です。あれは社会主義ではないか。とのことです。オバマは社会主義者だとのことです。イデオロギーは恐ろしい。オバマの支持率は少し下がったそうですが、これはオバマが医療改革にむかって走っているからです。
これがアメリカの現状です。日本にいたら分からないかもしれない。このせっぱ詰まっている感じとか、私たちがオバマを支持して
いる意味が。それにしても最初に18000ドルが基本料金だと電話で聞いたときには、耳を疑ったけど、すぐにそんなものだろうな、とも思いました。昨日、37000ドルの請求書を受けとったときには、こんなものだろうな、と思ったけど、やっぱり恐ろしくなった。正直な
ところ。そしていまも、恐ろしい。どうなるのかなあ。
(室謙二)