44 1月27日の反イラク戦争デモ(続き)(現地時間 2007年01月31日 09:51発 日本時間 2月1日 03:20受信) 2月2日に訂正を追加。


 
この通信は、カリフォルニアで書いたのですが、読み返す時間もなく、 昨日、東京に来ました。それでいまから読み返して、お送りします。
 ワシントンのデモに参加していないので、それはどんなものだったのかは分からないのですが(今朝、ワシントンのデモに参加した友人の一人から長文のメールが来ました。いずれ要約して報告しますが、どうやら私たちよりずっと楽観的な様子です)、サンフランシスコのデモに参加した私と  Nancy は、いささか元気をなくしました。状況の深刻さに比べて、参加人員の数が数千人というのは、サンフランシスコ湾地域としては少ないと思う。もっとも短期間のインターネットでの組織にしては、いいのかもしれない
 次にやはり若い人の参加が少なかったことです。とくに学生の世代は、 ほとんどいない。組合運動が積極的に人を集めて、そこには若い人もいましたが、ともかく彼ら彼女らの集会とデモのスタイルは、オールドファッションもはなはだしいのです。それはそれで感動的だとは言えなくもない。
 もうひとつ積極的に参加していたのは、パレスチナ運動のグループで、これはこの何年かサンフランシスコの集会とデモでは、いつも表面に出てきます。彼らはセクト的で、演説もスローガンも、すべてをパレスチナ問題と反イスラエルに還元してしまう。そして自由参加の人々を、利用の対象としか見ていないように思えます。
 このグループにも若い人はいました。しかしそれ以外の、つまり自由参加の人びとは、ベトナム世代の年寄りばかりなのです。と私には思えるのです。
 同じような感想は、イラク戦争が始まる前の抗議デモのときも感じたていましたが、あのときはもっと若い人の自由参加があった。子供をつれた若いカップル、赤ん坊をカートにのせて歩いている若いカップルがたくさんいたし、何か、新しいことが始まる雰囲気があったけど、今回はそれが後退しているかもしれない。これがサンフランシスコの地域的なことならいいのだけど。でもテレビを見ると、ワシントンのデモにはジェーン・フォンが壇上から演説しているし、ジェシー・ジャクソンがテレビインタビューに答えているし、みんな昔の人です。
 集会参加のあと、カファで Nancy と休んで話をしていて、彼女曰く「ちょっと元気のなくなる体験ね、時間とエネルギーの使い方として、こういう旧式な政治に参加するのではなくて、それを私たちの仕事についやした方が、社会に対するインパクトは大きいのではないかしら」とのこと。
 それに対して私は、私も元気を失ったことは同じだけど、デモクラシーを実現するためには、投票と議論だけではなく、直接行動が必要で、それが旧式であろうが、ともかく新しいスタイルが登場するのを待ちつつ、デモに参加し続けるより方法ない、とまるで公式的な意見を言うはめになりました。
 するとあなたもオールド・レフティなのね、と彼女は私の議論に不愉快なコメントを付け加えたが、しかしこれは訂正させましたよ。
 しかし Nancy の言うことも正しくて、私たちには、このデモ参加から得る知的刺激すくなく、あるのは義務感のようものので、一番興味深くて楽しかったのは、解散地のステージからちょっと離れたところで行なわれていたデモ参加者向けの音楽と踊りだとしたら、デモとストリート・フェスティバルとはどこが違うのでしょうか?
 彼女はインターネット上の政治が力を持つ可能性がある、現に力を持っていると言うけど、私はそれが直接行動と結びつかない限り、現実の政治の力にはなり得ないと、これまた公式的な意見を言うほかはないのです。
 それでその音楽と踊りのビデオのリンク。デジカメで撮り、Final Cut で切ってつないだ一分ぐらいもの。Youtube にアップロードしたものです。
 アップロードする前にNancyに見せると、Outragious! と言っていました。
http://www.youtube.com/watch?v=nVln1D0ZLso 

追伸。 友人のワシントン報告についていずれ、通信を書きます。彼によれば、ベトナム反戦時代の活動家ですが、デモは15万人規模であって、新聞のTens of thousandsという表現は当たらない、とのこと。

(室謙二)

訂正 (現地時間 2007年02月01日 17:44発 日本時間 2月2日 01:55受信)
 友人が返事をくれて、ビデオのリンクの説明のところ、 Outragious は Outrageous の間違いではないか、と書いてきた。そのとおりです。すみません。
 それと、どういう意味、と聞かれたけど、辞書には「著しく良識に反する」などと書いてあるけど、現代アメリカ語だと、ポジティブな意味もあるのです。Outrageous だと1960年代後半に言われ続けた世代にとっては、Outrageous で何が悪い、Outrageous はいいことだ、ということです。
 ただし肯定的に使っても、内に二面性を持つ言葉だと思う。

(室謙二)

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