22 10/25サンフランシスコの反戦デモ (現地時間 2003年10月26日 16:20:42発 日本時間 27日 22:26:50受信)

 10月25日(土曜)にひさしぶりに大きな反戦デモがワシントンDCとサンフランシスコでありました。
 私の参加したサンフランシスコのデモは、三千人ぐらいかな、大きく見積もれば五千人ぐらいかな。テレビと新聞が数千人と報道しているのは正確だと思う。ただし、主催者発表は一万五千人。
 このところのアメリカの運動は、二手に分かれている。ひとつは、MoveOnがやっているように選挙運動です。来年の選挙でなんとかブッシュを引きずり落とそうとしている。ついこの間は、カリフォルニアのリコール選挙で、たくさんの電子メールがやってきた。積極的です。
 もうひとつは、「街へ」の方針ですが、こちらは今回のデモの主催者Answerなどがやっている。数ヶ月前にもサンフランシスコでデモがあったらしいのですが、ぼくは知らなかった。今回は、デモの数日前に、ブディスト・ピース・フェローシップからメールが来てはじめて知りました。
 主催者のAnswerは、以前にも書いたことがあると思いますが、パレスチナよりの、私の見方からすればオールドファッション左翼で、それが新しい「ノンポリ」を利用する、動員するような感じがつきまとう。前回、前々回に、この団体が主催した大きな集会とデモに参加して(またワシントンDCで集会をテレビで見たりして)、ステージの演説者の選択、演説の内容が、あまりにもパレスチナよりで、左翼アジ演説だったりして、へきへきしたことがあるのです。
 そのために、Answerの主催はあまり参加したくない、ボイコットする人もいます。最後の段階になってやっとブディスト・ピース・フェローシップがメンバーに参加を呼びかけたのも、このことと関係があるかもしれない。すくなくとも、ぼくのまわりの人は、だれもぼくにメールを転送してこなかったのです。友人たちから、メールがどんどんと転送されてきた、一年前のデモのときとは、違うのです。
 今回の統一スローガンは、全体のデモの最先頭の写真をみていただければ分かるように、Bring the Troops Home Now!で、サブスローガンは End Occupation from Iraq to Palestine です。もうひとつの主催者Answerの掲げる旗には、U.S. OUT! Palestine Will Be Free! と書いてあります。この次のデモの先頭には、パレスチナの旗がひるがえり、若いアメリカ人の女の子が、ハンドマイクで多分、パレスチナの言葉で短いシュプレヒコールのようなものを叫び、デモの参加者もそれに多分パレスチナの言葉で応える。それらのアメリカ人はいつもAnswerに参加している人びとのように思えます。その次のデモの先頭は、パレスチナ人がたくさんいて、アラビア文字のプラカードがある。
  以上のようなことが「悪い」ということではなないのです。
 しかしそこには、イスラエルのユダヤ教原理主義、アメリカのキリスト教右派原理主義への批判はあっても、イスラム原理主義への批判がなにも見えない。イスラエル軍のパレスチナ人への暴力への批判はあるけど、パレスチナからイスラエル民間人への自爆攻撃には、共感があるのではないか。そのことが、このデモを私にとって居心地の悪いものにします。「ラディカリズム」です。もちろん対抗暴力という考えには賛成でしょう。だけど、暴力の連鎖をどう切るのかという設問にについては、相手が悪い、私が正しい、という答えのように思える。少なくとも、数千人のデモの最初のいくつかのグループの先頭には、そういう政治思想が見えます。
 わたしは、「相手が悪い、私は正しい」という考えには、もうあきあきしているのです。
 だからといって、デモ全体がそういう感じで塗りつぶされているわけではありません。しかし全体として、一年前のようなストリートフェア、カーニバルの気分はありません。一つには現在のイラク占領が、その死傷者が、出費が、デモに参加している人びとに重くのしかかっているからです。同時に、デモの組織グループのセクト主義的なものが、全体の自由闊達な気分をそいでいるのかもしれない。
 もういちど、だからといって、私の身近な人たちがAnswerの主催デモには抵抗を感じるといって参加したがらないとしても、私はできるだけ参加します。
というようなことが、ひさしぶりの報告です。

10月26日(日曜)
 この数日、サンフランシスコ・ベイエリアは異常に暑い。山火事危険の気候です。乾燥しているし、風も吹いている。昨夜のテレビニュースによれば、サンディエゴでは、大きな山火事が起こっているらしい。ベイエリアの消防車も、昨夜から南に十時間走って、サンディエゴへ行ったようです。だけどこちらで火事が起こったら、どうするのかしら。
 室 謙二

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