86. 「福富節男さん八十の賀の集い」(99/11/01)
この欄の79.でお知らせした「福富節男さん八十の賀の集い」は、10月31日、福富さんの80歳の誕生日の日に、東京・渋谷のレストラン「アン・カフェ」で開催され、数学者仲間、旧べ平連のメンバー、市民の意見30の会・東京や反天皇制運動連絡会、婦人民主クラブなど市民運動の仲間たちなど、各方面から130人もの参加者があり、とてもいい雰囲気が生み出され、あふれていた。広島から駆けつけた秋葉忠利広島市長(トポロジーの専攻で福富さんの数学科の後輩)をはじめ、京都からは鶴見千代子さん、関谷滋さん、鹿野忠良さん、そして長野県から市川準さん(統計数学、市民運動家)、山梨県忍野村からは吉田和加子さんなど、この会のために遠くから参加された方がたも多かった。また、異色の参加者としては、もと赤坂警察署長で、べ平連のデモのたびに福富さんをはじめべ平連の面々の正面に立ちはだかった笠野孝さんの顔もあり、福富さんと肩を並べて写真を写されていた。
河邉岸三さん、宮本なおみさんが司会をし、小野山卓爾(元洗足学園魚津短大学長)、秋葉忠利広島市長、大倉八千代さん(平和憲法「前文・第九条」を世界に拡げる会)らからそれぞれ、心温まる祝辞がのべられた。お祝いの乾杯の音頭は、銀林美恵子さん(戦争への道を許さない下町女たちの会、数学者仲間の銀林浩氏夫人)によって行なわれた。
若い層を代表しては、かつての「べ平連少年少女団」のメンバーだった斉藤美加代さん(斎藤さんも数学専攻)と市民の意見30の会・東京事務局の古屋修さんの二人がお祝いの言葉をのべた。
祝辞は、すべて、福富さんの長年の市民運動への大きな貢献を称えるとともに、それが、人間を生きている存在として接してゆく福富さんの暖かい心に裏打ちされたものであることなどにふれ、敬愛の念のこもったものばかりだった。
しばらく、ワインやウィスキーを手に、参加者の歓談が続いたあと、市民の意見30の会・東京事務局の木村雅英さんがクラリネットでカザルスの「鳥の歌」を演奏し(木村さんは多摩市を本拠地とする市民オーケストラ、多摩管絃楽団の正式メンバー)、つづいて画家の戸井昌造さんから、福富さんの似顔絵の色紙と、開くと「祝 傘寿」という垂れ幕が出てくる唐傘、それに朗々たるテノールでの「乾杯の歌」が贈られた。また、かつて早稲田べ平連だった島田昭博師(島田さんは文京区で僧侶)からは、きれいに保存された1969年6・15行動などの大きなポスター一式が贈られた。 (下の3枚がそのポスター)
また、小田実さん(作家、元べ平連代表)、高木仁三郎さん(物理学者)、清水知久さん(アメリカ現代史、元大泉市民の集い)らからのメッセージも紹介された。
この集い参加者全員からの贈り物としては、すでに有名となっている大きな黒い「福富カバン」よりも安定性があるという肩掛けの皮製鞄が贈られた。(この鞄のなかには、吉川さんからの贈り物として、ブランディーRemmy Martin が2本入っていた。)
福富さんのご挨拶では、学生時代だった1930年代の戦前の空気と、現在の「戦前」の状況との対比からはじまり、市民運動、人間の権利を擁護する活動などを通じて得られた体験、生者と死者への思いなどが語られた。福富さんは、 あとで、「スピーチの最後に、国への忠誠ではなく、『国』が人民に忠誠を誓うべきだということと、武器の国際取引禁止条約を求めようと言って結ぶつもりだったのだが、言い忘れてしまった」と言われているので、ここでご紹介しておく。
最後は、市民の意見30の会・東京の梶川凉子さん(ジャーナリスト専門学校教授)から、やはり全員からの贈り物としての純和製の極上から傘(雨の音がとてもいいという)が贈られ、また、謡曲「高砂」のキリの「千秋楽」が、「千秋楽は民を撫で。萬歳楽には命を延ぶ。相生の松風颯々の聲ぞ楽しむ 颯々の聲ぞ楽しむ」と見事に謡われた。(上の写真は贈られた傘のもと、梶川さんと田守順子さんに挟まれた福富さん)
なお、今日の会のために、福富さんからは、前著『デモと自由と好奇心と』以後に書かれた文章をまとめた100ページ近いパンフレット『人がその地に生きること――領土と住民・戦争』が、参加者全員に贈られた。
「福富節男さんの八十の賀の集い」は、このように、実にカラフルな挨拶、演奏、贈り物が続いて、類をあまり見ないとてもいい集まりとなった。
なお、福富さんの『人がその地に生きること――領土と住民・戦争』(右の写真)は、ご希望のかたには、実費500円+送料でお頒けします。お申し込みは、福富さんのご自宅か、市民の意見30の会・東京事務局まで。
『人がその地に生きること――領土と住民・戦争』 A5版 84ページ
【内容】1. 領土と住民 2. 戦争死者の慰霊ということ 3. 「九人の乙女」の碑 4. 戦争死者と「玉砕」――戦争死に美しさなどない 5. 戦争の本 6. デモとは何だろうか――デモを実行したり、参加する立場から 7. ベト数コンのことを少し 8. 人権について、名誉回復、内ゲバ 9. 樺太、学生時代、終戦
申し込み先 167-0003 東京都杉並区清水1-37-17 福富節男 または 151-0051 渋谷区千駄ヶ谷4-29-12-305 市民の意見30の会・東京事務局 FAX:03-3423-0185 まで 頒価1部 ¥500+送料 ¥200