576. 開高健の世界』出版、中に、埴谷雄高氏あての脱走兵支援問題の困難の手紙が採録。 (2010/08/20掲載)

 今年6月12日から8月1日まで県立神奈川近代文学館で「生誕八〇年『開高健の世界』展」が開催されました。その際、『開高健の世界』という88ページの立派な写真集パンフレットが発行されました(左の写真)。この42ページには、ベ平連のジョーンズ・バエズとの集会の写真や、1967〜68年の米反戦脱走兵への援助問題の写真などが掲載されています(右の写真)が、その一番下には、埴谷雄高さんあての開高健さんの直筆の文書が載せられています。それには、「イントレピッドの4人」以後、日本からの脱出がかなり困難になっており、悩んでいるという思いが明らかにされています。これまで、この書簡は発表されていなかったと思いますので、その全文を以下にご紹介します。
 この書簡を活字で転写したものが次のものです。


お元気でいらっしゃいますか。
いつも御本をありがとうございます。筆不精をしていますがたのしく
拝読しています。《影絵の世界》にはしばしば哄笑させられ、愉快な文章でした。
さて過日、新潮社の小生の書下ろした立派なコメントを頂き、感動やらはずかしいやらです。さっそく沼田氏から記念に生原稿をもらってきました。大切に保存するつもりです。
またまたまたアメリカ兵が一人でなく脱出してきて、ヘルプ、ヘルプというのでどうしたものか。いまや、横浜は完封されるし、都内でもCI
Aは眼を光らすし、前回には某大国の大使館を脅迫してケツまくったので成功しましたがもうそれもきかず、こちらがヘルプ、ヘルプといいたいところです。パスポートの偽造屋はさがしあてましたが、悲しいことに、日本政府のは偽造できるが外国のはやったことがないとアタマを掻きます。思案投げ首、しどろもどろの細道です。(しばらくこのことは伏せておいてくださいますよう・・・)
久しぶりでお目にかかりたいのですけれど、そういうわけで、なかなか閑日が作れないでいますが、近日中にと思います。粗品お送りいたしました。御笑納くださいますよう。
いそいで書きました。
 

埴谷雄高様                     開高 健

 

  この『開高健の世界』は、編集:NPO法人開高健記念会/財団法人神奈川文学振興会、発行:NPO法人開高健記念会、発行日:2010年6月12日、連絡先:167-0021 東京都杉並区井草4-8-14 NPO法人開高健記念会 電話:03-5303-8621 FAX:03-6915-0721です。

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