550. 鶴見俊輔さん 新著発行『言い残しておくこと』(作品社)(2009/12/31掲載)
 

 鶴見俊輔さんの新著『言い残しておくこと』が刊行されました。作品社刊、2009年12月30日発行、2,400円+税です。この著書は、『すばる』2008年6月号から8月号まで連載した初出で、インタビューは2007年11月21日に京大会館で、続いて2008年1月29日に山の上ホテルで行なったものをもとにまとめたものです。インタビュー・構成は増子信一三、見返し写真撮影(右が3点のうちの一つ)は秋元孝夫さんですが、どちらも優れたものです。
 それぞれのインタビューには、「ミモラビリア」という、鶴見さんの著作、対談などから関連したものが多数引用されていて、各テーマごとに鶴見さんの索引のような役割を果たしてくれています。これは実に便利です。
 第二部の「『まちがい主義』のベ平連」や、「東大から小田実のような人間が出たのは奇跡だ」など、ベ平連についての話もかなり出てきます。
 目次は以下の通りです。また、本書には「付録」の冊子として、大江健三郎「そら、人間だ(エクセ・ホモ)」、竹内寛子「遠くからの謝辞」、山口文憲「俊輔さんの『懺悔』」の三篇(全16ページ)が入っています。山口文憲さんの文では、ベ平連や、脱走兵への米スパイの潜入問題などに触れています。

第一部 I AM WRONG″
  私にとって、おふくろはスターリンなんです
    メモラビリア@ 
    母について/宗教について/マルクス主義、共産主義/佐野碩について

  『共同研究 転向』は、私のおやじに対する答えなんだ
    メモラビリアA
    父について/転向研究について/不良少年だった/幼少年期の読書/優等生とは/留学のとき/永井道雄について/嶋中鵬二について/中井英夫について/宮沢喜一について/若槻礼次郎について
 
もう一つの物差し――後藤新平
    メモラビリアB
     後藤新平について
 
江戸と明治、二つの世を生きた「エリート」たち
    メモラビリアC
     境目としての一九〇五年
 
つくる人とつくられた人
    メモラビリアD
     逮捕されたとき/牢屋へ入れられて
 
張作霧、鬼熊、阿部定
    メモラビリアE
     張作霧について/鬼熊について/阿部定について/ジャワ時代/慰安所について/性について

第二部 まちがい主義の効用
 
「まちがい主義」のべ平連
    メモラビリアF
     まちがい主義/ベトナム戦争について/脱走兵をかくまう/吉野作造について
 
東大から小田実のような人間が出たのは奇跡だ
    メモラビリアG
      小田実について/声なき声の会
 
『世界文化』と『思想の科学』をつなぐ糸
    メモラビリアH
      鶴見和子について/『世界文化』/『土曜日』/久野収について/『思想の科学』
 
『死霊』をどう読むか
    メモラビリアI
      マチネ・ポエティク/埴谷雄高について/天皇および天皇制/石川三四郎について
 
花田清輝に叩かれて開眼する
    メモラビリアJ
      花田清輝について/小沢信男について
 
桑原武夫、あるいは勲章のこと
    メモラビリアK
      うつ病のとき/桑原武夫について/竹内好について/大学について
 
埴谷雄高の見事な所作と丸山眞男の思想史的つぶやき
    メモラビリアL
     高野長英について


第三部 原爆から始める戦後史
 
執拗低音としての敗戦のラジオ放送
    メモラビリアM
      胸部カリエスにかかる/飢えについて/八月十五日のこと/戦後思潮について/原民喜について

 
映画『二重被爆』が語る原爆の意味
    メモラビリアN
      原爆について

 
科学者はみなハイド氏になった
 
丸山眞男の被爆体験
    メモラビリアO
      丸山眞男について

 
「無教育の日本人」の知性の力
    メモラビリアP
      クワインについて

 
誤れる客観主義″からいかに逃れるか
    メモラビリアQ
      武谷三男について/羽仁五郎について/吉本隆明について

 
私は人を殺した。人を殺すことはよくない
    メモラビリアQ
     「殺す」ということ/憲法について

 あとがきにかえて
 メモラビリア初出一覧・人名索引
 

ニュース欄先頭へ ホームページ先頭へ