52. . 『となりに脱走兵がいた時代』、月刊『みすず』掲載の読書アンケートで好評。(99/02/11)
みすず書房が発行している月刊の『みすず』は、その1月号で、各界の100人以上の人に、とくに興味を感じた書物を5点以内で挙げるよう依頼した1988年読書アンケートを掲載しているが、その中で、坂元良江、関谷滋編『となりに脱走兵のいた時代』を、石田雄、佐藤秀夫、松尾尊よし(「よし」の字は、htmlの上では使えないが、公の下にルのつく漢字) 、加納信雄氏ら4人もの人が挙げている。このうち、佐藤秀夫氏のものを以下に紹介する。 一九六〇年代後半から一九七〇年代前半にかけて、ウェトナム反戦運動の一環として展開されたジャテック(米軍脱走兵援助活動)に関して初めてまとめられた「一つの」記録である。大学闘争・三里塚闘争・七〇年安保とうち続いた激動の時代に、密やかにしかし「堂々」と日本国内で展開された国際連帯の平和運動、ジャテックについて、今まで公式に語られることはなかったといってよい。ヴォランタリズムを軸として「開かれた」「鉄の規律」の下に展開されたこの運動は、日本の社会運動史に全く新しいぺ−ジを刻んだと評価してよい。コミンテルン的な運動を「止揚」した日本国内の左翼運動が、三〇年前にこのような実績を持ち得ていた事実は、現在の日本の社会状況に「希望」の内在可能性を証立ててくれるのではないか。なお、このアンケートでは、デイヴ・デリンジャーの『「アメリカ」が知らないアメリカ』(藤原書店)を挙げた人も2人(石田雄、花崎皋平氏)いた。花崎氏の文は以下の通り。
これはすばらしい本だった。最良のアメリカ文化を継承し、発展させた稀な人物の自伝であった。最良のアメリカ文化の伝統とは、ソローやエマーソンやホイットマンたちである。吉川勇一の訳もみごと。丹念な年表、索引などもありがたい。