487. 小田実さんの葬儀
会葬者への玄順惠さんのご挨拶。(2007/08/07掲載
)
8月4日に行なわれた小田実さんの葬儀の際、会葬者のみなさんに玄順惠夫人の「御会葬御礼」が配られ増したが、その中には、ご挨拶とともに、小田さんの写真も入っていました。それらを以下にご紹介いたします。
私は、旅のしかたも分らないまま、「人生の同行者(フエロートラベラー)」小田実に連れられて多くの見知らぬ土地を旅してきました。その旅には、さまざまな異国の珍しい文物とともに、思いがけない人々との出会いがありました。
小田は「一期一会」という言葉を好みました。人生の出会いを大切にしたいという気持ちをいつも持っていたからです。そして今のこの一瞬一瞬はもう二度と帰ることがないのだという哀惜の思いが、常に誠心誠意、生きるという覚悟となり、自分自身を勇気づけていたように思います。
小田はまた、なによりも自由を愛しました。そして無類の猫好きでした。人間の命令に対して忠実な犬よりは、独立独歩で自由な魂の持ち主である猫のほうが性にあっていたのでしょう。
小田は私のことを、結婚の当初から「人生の同行者(フエロートラベラー)」と呼んできました。感動の共有が出来る人間同士という意味です。私たちは、性格も趣味もほぼ対極的と言えるほど違っていますが、「同行者(フエロートラベラー)」として、喜怒哀楽をともにし、人生のコラボレーションを行ってきました。
共有した時間はけっして短いものではありませんが、かと言って長すぎるものでもありませんでした。地上の生きものは誰であれ百年もともに過ごすことは出来ないのですから、これでよしとしなければなりません。しかし、私の「人生の同行者(フエロートラベラー)」との魂の旅は、この後永遠に続くものと思っています。
本日は、お忙しい中、またお暑い中、小田の告別式にお集まりいただきまして、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
二〇〇七年八月四日
玄 順 惠 |
写真の裏には、小田さんの言葉が印刷されていました。(下、右) また、写真の説明として「2007年4月2日 トロイ遺跡にて 撮影 玄 順惠」とありました。
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