369 『中日新聞』『東京新聞』、12月5日号社説で、憲法改定を論じ、ベ平連運動の鶴見俊輔さんに言及。(04/12/07掲載)
『中日新聞』(『東京新聞』も)の12月5日号は、「憲法論のホログラム――週のはじめに考える」と題する社説を掲載、自民党の改憲論を批判的に論じているが、その最後で、「『ベトナムに平和を!市民連合』などの平和運動で活躍した哲学者、鶴見俊輔さん」の意見を紹介している。
ここでは、鶴見さんとベ平連に言及した最後の部分だけをご紹介する。全文は、『中日新聞』のサイトの中の社説 back number
(以下のアドレス:http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20041205/col_____sha_____000.shtml )で読めます。
……自民党の改憲論のもう一つの特徴は、日本人としての誇り、心のよりどころを示そうとしていることです。改憲大綱原案には、日本人としてのアイデンティティー(自己認識、一体感)や歴史、伝統の尊重、愛国心、郷土愛などが並んでおり、個人の精神世界にまで踏み込んでいます。家庭が「公共の基本」だとも言っています。
これには、国家による特定の価値観押しつけは許されない、という法律論を離れても疑問があります。
「ベトナムに平和を!市民連合」などの平和運動で活躍した哲学者、鶴見俊輔さんは、幼いころ自分を殴ってしつけようとする母親に強く反発しました。長じてから政敵を大量粛清した旧ソ連の独裁者スターリンを知り、母のイメージを重ねました。二人に道徳を暴力で押し付ける共通性を感じたというのです。
イラクの民主化、治安安定のためと称し、千人以上ともされる民間人犠牲者を出した、米軍のファルージャ攻撃を連想させます。軍事力で国際貢献できるよう九条を改正するのは、平和や民主主義を武力で説く矛盾に陥りかねません。
小学校卒業直後に米国に渡った鶴見さんは、日米開戦から間もない一九四二年六月、自分の意思で帰国船に乗りました。二十歳になる直前でした。「日本は必ず負ける」と考えましたが、「負ける時は負ける側にいたい」と思ったのだそうです。
鶴見さんは八十二歳になった今も「愛国心」という言葉を決して口にはしません。でも、「負けるにしても負ける側にいたい」という気持ちは、国家と正面から向き合ったことのない政治家、特に平和な日本の恵まれた家庭でぬくぬくと育った世襲議員たちが安易に持ち出す愛国心や「日本人としての一体感」より、多くの人の心を打つでしょう。
国民にあれこれおせっかいを焼いて価値の押し売りをする憲法に変えるのか、今まで通り権力抑制が主な役割で統治者に使い勝手が悪いと思わせる憲法を持ち続けるか。近代的憲法観が転機を迎えています。……