249. 「サンケイ」新聞に興味ある記事。小田実さんをめぐる米国の日本研究学者の評価。(02/10/17 掲載)

 10月14日付けの『産経新聞』のコラム、「ポトマック通信」に興味ある文章が載っていましたので、要旨をご紹介します。
 これは、在ワシントンの同紙記者、古森義久さんが書いた「日本研究学者の左傾化」という文で、最近開かれたワシントンのウッドローウィルソン国際研究センタ−が主催した「日本の民主主義」と題するセミナーでのやりとりを報じたものです。

 それによると、このセミナーで、パネリストの一人、ボストン・力レッジのフランジスカ・セラフィン教授が「小田実氏は日本の戦後の民主主義促進に大きく寄与した」と発言したので、古森記者はびっくりし、質疑応答の際に、日本での一般の小田氏評を伝え、「北朝鮮の思想を礼賛した人がなぜ民主主義なのか」と問うと、セラフィン教授は「小田氏は日本で市民運動を初めて広め、一般の民主主義意識を高めた」と前向きな評価を繰り返したそうです。

 古森記者はさらに次のように続けています。
 ……それどころか同じパネリストのマサチュ一セッツ工科大学のジョン・ダワー教授までが「小田氏は戦後の日本人に、戦
争では自分たちが被害者だけでなく加害者だったことを理解させるという大きな貢献をした。そのことを忘れてはならない」と
応じ、これまた小田氏礼賛だ。
 米国の日本研究学者の左傾化が取りざたされているが、なるほど、そのとおりという実感だった。……
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 言うまでもなく、ジョン・ダワー教授とは、あの『敗北を抱きしめて(上下)』(岩波)の著者です。
 また、古森義久さんは、1993年1月18日の『産経新聞』1面トップに、大見出しで、「ベ平連 KGBと秘密接触 資金援助を求める 脱走米兵の亡命工作」というワシントン発の記事を書いた記者です。

 このコラムには、彼が、セラフィン教授の発言に「びっくりした」理由として、「作家で左翼活動家の小田氏の日米安保反対、非武装中立主張、共産主義勢力への支援の軌跡からすれば、米国ふうの民主主義にはむしろ激しく反対したと、こちらは理解していたからだ」とあります。古森さんは、小田さんの民主主義論をまったく理解していなかったことが明瞭ですし、また、はからずも、アメリカの日本研究者のあいだでの、健全な日本評価の状況がわかった思いがするコラムでした。

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