193. 『Antiwar campaigners to donate documents to Vietnamese museum』―ジャパン・タイムズ(2月16日付け)が報道(02/02/22掲載)
2月16日の『ジャパン・タイムズ』紙が、日本のベトナム反戦市民運動が資料をベトナムに贈る運動を進めていることについて、以下のような報道を載せました。訳文を掲載します。
反戦運動の活動家たち、
ベトナムの博物館への資料寄贈を計画
平野恵嗣(共同ニュース)
日本のベトナム反戦グループのメンバーが今月末ホーチミン市を訪問し、同市の国立戦争証跡博物館に、60年代から70年代にかけての自分たちの活動を具体的に明らかにする資料類を寄贈することになった。
一行は、ベトナムに平和を!市民連合の元メンバーら約30名で、ベトナムの政治指導者や知識人らと、9・11事件以後の21世紀をどう考えるかなどについての意見交換も予定しているという。
「ベ平連」という名で知られるこのグループは、1965年から74年まで、日本政府がベトナム戦争に加担したことに抗議して積極的に活動し、米脱走兵の逃走を援助したりした。
ジャン=ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーボアール、ジョーン・バエズ、ノーム・チョムスキーといった世界でも有力な反戦活動家も、このグループを支援した。
昨年夏、このグループに対して、ベトナムで日本語を教える大学講師と、日本の旅行業者とから、同博物館が近く増設を計画しているので、日本の反戦運動の歴史を示す資料類を博物館に寄贈したらどうか、という連絡があった。
博物館には、各国の反戦運動資料を展示する部門があるが、日本のグループからの資料はほとんどないということだった。
著名なノンフィクション作家で、ベ平連のメンバーだった吉岡忍さん(53歳)は、「ベ平連の資料を寄贈することが適切だと思ったので、その収集を始めたのです」と語る。
このグループによると、戦争証跡博物館には、年間約35万の訪問客があり、うち8万人が日本からの観光客だという。
これまでに集まった資料の中には、ベトナム反戦のスローガンのバッジやポスター、在日米軍基地内で米軍の反戦兵士が発行した機関紙類も含まれている。
「アメリカはベトナムから手を引け、と書いた抗議のゼッケンも見つかりました。これはある会社員が8年もの間、通勤の際につけ続けていたものです」と吉岡さんは語る。
ベ平連は、形式的な会員制をもたず、参加するものはだれでもベ平連のメンバーだとされた。この運動の支持者は、日本各地の学校、職場、地域などで、少なくとも381のベ平連グループを形成した。
一行は、博物館に寄贈するため、上映時間50分のDVDも作成した。これは、日本がいかにこの戦争に加担したか、また、ベ平連がそれにどう反対したかを描いたもの。
吉岡さんによれば、このDVDディスクには、同博物館を訪れる人の便宜のために、ベトナム語、日本語、英語の三ヵ国語のナレーションが入れられるという。
DVDのナレーションは、彼らが、20名の米脱走兵を援助し、中には、パスポートを偽造したケースまであったと語っている。また、ナレーションは、日本の市民運動が市民的不服従を身につけたのは、自分たちの活動を通じてだ、とも語る。
吉岡さんは、今回のベトナム旅行が日本の活動家の同窓会のようなものかもしれないが、しかし、参加者とベトナム側の双方にとって、現在の世界の状況を検討する上で役立つものになればと望んでいる、と語っている。
吉岡さんは言う。「最近のアフガニスタンの事態のように、ごく普通の民衆が軍事行動によって無差別に殺戮されているという事実に、私たちは無感覚になっていると思う。私としては、あの戦争中、困苦に耐えてきたベトナムの民衆と語り合い、私たちの感受性を研ぎ澄ますことが出来るようにと希望している。」(『ジャパン・タイムズ』2002/02/16日
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