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ナイロビ・サミット(地雷禁止条約第1回検討会議)報告

 サミットの概要                     長 有紀枝

対人地雷の禁止条約署名式(97年12月)から7年、発効から(99年3月)5年目を迎え、同条約のこれまでの運用状況や各国の遵守状況を検討し、地雷のない世界にむけての「行動計画」を議論する第1回検討会議が、11月29日〜12月3日ケニアの首都ナイロビで開かれた。「ナイロビ・サミット」と命名されたこの検討会議には、締約国144カ国、未締約国23カ国の首脳や高官、政府関係者のほか、条約成立に大きな役割を果たしたNGOの連合体、地雷禁止国際キャンペーン(ICBL):地雷の被害者50名を含む83カ国から350名が参加)、赤十字国際委員会、国際機関が正式なオブザーバーとして参加し活発な意見交換を行った。

実現不可能、「理想家たちの夢物語」といわれた対人地雷の使用・貯蔵・生産・移転を全面的に禁止し、埋設地雷の除去や貯蔵地雷の破壊、被害者の支援を義務付ける条約発効後5年の成果は目をみはるものがある。当初年間2万6千人といわれた被害者は1万5千〜2万人に減少した。条約発効後昨年までに4百万個以上の対人地雷、百万個近い対車両地雷やその他の危険物が取り除かれ、1100平方キロ以上の地雷原が安全な土地に生まれ変わった。条約締結後4年以内の廃棄が義務付けられている貯蔵地雷の破壊も確実に進んだ。日本を含む65カ国がその廃棄作業を完了し、廃棄され貯蔵地雷の総数は3千7百万個に及んだ。検討会議会期中に加入を表明したエチオピアを含め144カ国がこの条約を締結し、世界のほぼ75%がこの条約に参加したことになる。地雷の生産国は50カ国から15カ国に減少し、継続的に対人地雷を使用している国も4カ国のみとなった。条約未締約国も含め、世界大の地雷の移転が90年代半ば以降ほぼ停止し、対人地雷の禁止は世界的規範になりつつあるといえる。

こうした確実な進展が見られる一方で、残された課題も多い。米・中・露といった大国をはじめ42カ国がいまだこの条約に参加していない。埋設地雷の除去完了期限まであと5年となったが本当にあと5年で除去が完了するのか、世界に30万とも40万ともいわれる地雷被害者にどのような支援を継続的に提供していくのか、未締約国を中心に未だ2億個以上といわれる貯蔵地雷の破壊を如何に進めていくのか。条約そのものの課題も残されている。条約の根幹ともいえる1条の締約国の義務、2条の対人地雷の定義、3条の研究開発のための例外的に保有を認められた地雷の個数の上限などが、各国の解釈に委ねられ、過去5年の議論を収斂し共通理解を得るに至らなかった。より安全かつ迅速に地雷除去を進めるには新たな除去機械・機材の開発は重要だが、それらは地雷原の状況に適し、かつ安価で現地での維持が可能なものでなければならない。

こうした問題解決へ向けて向こう5年の指針となる「ナイロビ行動計画」が、この会議の成果物として採択された。参加者全てが賛同する完璧なプランではないが、そもそも地雷問題は現在進行中の課題である。引き続き、世界各国の官民が真に連携し、限りある貴重な人的・経済的資源をしかるべき部分に有効に投入し、問題解決を目指したい。

(聖教新聞 2004年12月16日に掲載






2004123日のナイロビ・サミット閉会式の写真

締約国政府の代表100名が署名した「ナイロビ宣言」の写しを市民代表に手渡し、条約の実施を約束するペトリッシュ議長

市民社会の良心を代表して「ナイロビ宣言」を受け取るのは、

前列左から:

カンボジアのトウン・チャンナレット氏

ソン・コサルさん

後列で見守るのは左から:

チラウ・アリ・アワクエ ケニア外務大臣

1997年ノーベル平和賞受賞者ジョディ・ウイリアムズ氏

前赤十字国際委員会総裁、

現ジュネーブ人道的地雷除去国際センター総裁のコルネリオ・ソマルガ氏