カンボジア市民フォーラム(PEFOC,J10周年記念シンポジウム 

地雷分科会の発表要旨「カンボジアから世界に広まった地雷廃絶運動」

03年1213日(土) (14 :10-16 :10

会場:上智大学四ツ谷キャンパス7号館 

「地雷」分科会意見のまとめ      
                                   20031214
                                  地雷分科会/JCBL                    

カンボジア政府・国際機関へ

● CMAA(カンボジア地雷対策・犠牲者支援機構)が作成し、20033月の東南アジア地域セミナー・プノンペン会合で発表した「カンボジア地雷対策の国家戦略」(National Mine Action Strategy, Draft version 4/CMAA/Dec.2002)に基づいて、地雷・不発弾対策を実施し、オタワ条約が定める埋設地雷の除去期限の2010年までに、カンボジア国民が地雷・不発弾の危険に妨害されずに社会活動・経済活動ができるようにすること。

● 上記「国家戦略」は時機をみて現実に即して修正すること。

● 20033月のプノンペン会合において、地雷犠牲者のトウン・チャンナレット氏が、犠牲者支援の資金は犠牲者に届いているか? 犠牲者は生きるための土地、食べ物、収入が欲しい、と発言したが、会議出席者の誰からも回答がなかった。地雷犠牲者に支援が届く地雷対策を実施すること。

● カンボジアの官民は、これまで蓄積された地雷対策、犠牲者支援の経験、ノーハウ、技術を、他の地雷被災諸国に役立てるよう努めること。

● ラオス、ベトナムなど近隣諸国に対し、オタワ条約加入の働きかけを行うこと。

● 地雷の事故は減少傾向にあるが、不発弾の事故は増加傾向にある。地雷回避教育は地域住民参加型の回避教育を展開すること

日本政府のODA

● カンボジア政府は「カンボジア地雷対策の国家戦略」実施の前提は、ドナー国の持続的な援助であるとしている。カンボジアに対するODAにアフガニスタン、イラク等の緊急援助のシワを寄せることなく、カンボジアの国家戦略に通暁した上で、これを実現できるよう持続的で適切な援助を実施すること。

● カンボジアの地雷・不発弾による新犠牲者の数は暫減傾向にあるが、既に傷害を負った人の数は毎年増加し、苦しみは一生涯続く。彼等に届く犠牲者支援を持続的に実施すること。

● 去る1128日ジュネーブのCCW締約国会議で92ヶ国により採択されたERW(爆発性戦争残存物)に関する第5議定書に速やかに署名、批准をすること。

● クラスター兵器ならびに対車両地雷に関して2004年のCCW政府専門家会に課せられた任務に積極的に参加し、200412月の締約国会議に適切な提案を提出するための主導的な立場をとること。

● さらに、モニタリングを強化し、援助が確実に地雷原や地雷被害者に届いていることを確認すること。

● 200411月に開催されるオタワ条約再検討会議に向けて、アジアのオタワ条約未締約国(18ケ国)に対し、一刻も早く条約に参加するよう、働きかけを積極的に行うこと。

日本のNGO・市民へ

● カンボジアの地雷対策は緊急援助の段階を終えて、カンボジア政府の社会・経済開発

長期戦略に基づいて地雷対策を行う段階に来ている。従って、NGOの援助といえども、日本国内で考える思いつき援助ではなく、カンボジア政府の長期戦略に沿った援助を行うこと。

● 地雷禁止キャンペーンは一時的な盛り上がりでなく、持続的な運動として続けることが必要である。特に、2004年はオタワ条約発効の5年目で、11月、ナイロビに於けるオタワ条約再検討会議を控えている。現在の条約で、対人地雷の定義など曖昧に残された部分の明確化を政府に要求することを含めて、2004年の運動を盛り上げること。

● オタワ条約を成立させた市民のノウ・ハウ、パワー、経験を、対人地雷以外の非人道的兵器にも適用させ、非人道的兵器の一切を無くすよう、NGO・市民の力を糾合すること。

カンボジア政府、日本、市民社会すべてに対し

● 地雷対策を貧困対策、復興開発の中に位置づけ、地雷・不発弾事故が貧困を生み、貧困が次の事故を生むという悪循環があることを認識して、被害者の多くが属する社会的弱者、貧困層に利する支援を模索すること。

また、禁止条約の普遍化交渉に、日本のODAをカードとして使うか否かについては、結論は出なかった。

カンボジア市民フォーラム(PEFOC,J10周年記念シンポジウム 

地雷分科会の発表要旨「カンボジアから世界に広まった地雷廃絶運動」

03年1213日(土)上智大学7号館12F5会議室(14 :10-16 :10

                          司会 長 有紀枝

1.市民フォーラムの「地雷分科会」からJCBLの誕生へ:北川泰弘

 「地雷分科会」は、カンボジア市民フォーラムが19949月に開催したカンボジア新政府発足一周年記念シンポの討議の題目として、地雷問題を初めて取り上げた。956NGOフォーラム・オン・カンボジアから同フォーラム非常勤理事の熊岡路矢あて、同年11月のCCWウイーン会議に向けて、対人地雷廃絶を日本政府に働きかけるよう、呼びかけがあった。同時にカンボジアの3人の元兵士(チャンナレット氏ほか2名)からの協力要請があり、日本で最初の地雷廃絶の署名運動を行い、集まった9,000人分の署名はカンボジアのNGO経由でウイーン会議に提出された。東京YMCA、日本赤十字社、難民を助ける会ほかのNGOも並行して地雷問題をそれぞれ個別に取り上げていた。「地雷分科会」はこれら諸団体に呼びかけ19977月にJCBL(地雷廃絶日本キャンペーン)を発足させた。

2.世界の地雷廃絶運動の始まりと発展:目加田説子

 カンボジアの地雷除去現場、オスロ、オタワなどの国際会議場、ネパール等の非国家主体、等との直接の接触をもとに世界の地雷廃絶運動の始まりから今後を語った。

3. 国内に対する啓発活動:山崎淑子

 JCBLは「地雷分科会」の後を受け、会員諸団体の力を総合して、更に充実したキャンペーン活動を行っている。JCBL発足以降の活動:会報の発行、青少年ポスター・コンクール、Go for All ハガキ・キャンペーン、写真展「地雷原に住む人々を撮る」等の成果を紹介した。

4. 条約の普遍化に向けて、JCBLのアジア諸国NGOに対する協力:前川昌代

 JCBLは、オタワ条約の普遍化に向けて、途上国のNGOが自分の国の政府に強力に働きかけることが出来るよう、小額ながら資金援助を始めた。その状況を紹介した。

5. カンボジアの地雷対策ノウ・ハウを世界に役立てる:北川泰弘

 カンボジア政府は、これまでに培った地雷対策のノウ・ハウを他の地雷被害国に役立てたいという意欲を表明している。世界の地雷対策に貢献しようという同国の意欲を紹介した。

発表者のプロフィール

目加田説子(めかた もとこ) JCBL運営委員

ジョージタウン大学大学院、コロンビア大学大学院を終了後、大阪大学国際公共政策博士課程修了(国際公共政策博士)。テレビ局、財団を経て現在、経済産業研究所研究員、JCBL運営委員。著書に『国境を超える市民ネットワーク――トランスナショナル・シビルソサエティ』(東洋経済新報社)、『地雷なき地球へ――夢を現実にした人びと』(岩波書店)、編著に『市民の道具箱』(岩波書店)、共著に『民意民力』(東洋経済新報社)等。

北川泰弘(きたがわ やすひろ)  JCBL代表

1954年〜72年、NTTNTT関連会社の電気通信技師として日本国内および発展途上国の電気通信設備計画の作成に携わった。最初の海外勤務地のカンボジアへの思いが深い。20年間の内戦で破壊されたカンボジア国の電気通信設備の再建に参加する筈だったが、1992年に地雷被害者への義肢援助活動を始めた。1997年にJVC、東京YMCA、日本赤十字社、難民を助ける会ほかのNGOと話し合ってJCBLを創立し、現在に至る。

山崎淑子(やまざき よしこ) JCBL運営委員

日本女子大学文学部英文学科卒業。在学時ユネスコクラブに所属し、バタヤ部落にて[虹の子子供会]の活動を手がける。15年間の学習塾経営を経て、5年前より[地雷廃絶日本キャンペーン]運営委員となる。チャリティーコンサートや写真展の開催、国際会議への出席、キャンペーン活動を業務とする。

前川昌代 (まえかわ まさよ) JCBL事務局長1980年、インドシナ難民救援のボランティアでJVCに参加したのがNGOに関わった最初。以降、JVCをはじめいくつかのNGOでスタッフを経験し、現在はJCBL事務局担当。カンボジアには1987年と1997年に訪問。

司会者のプロフィール

長 有紀枝 (おさ ゆきえ)元 ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)調整委員会 委員

元 難民を助ける会 専務理事・事務局長

91-0310月まで難民を助ける会勤務。この間、紛争下のボスニア支援など緊急人道支援やカンボジア、コソボ、アフガニスタン等の地雷対策事業を調整。98?03ICBL調整委員会メンバーとしてICBLの運営に参加。NGO東京地雷会議実行委員長。著書に「地雷問題ハンドブック」(97)、共著「地雷をなくそう」(00)、「人道危機と国際介入 平和回復の処方箋」(03)


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