2003年度活動報告(2003年7月〜2004年6月)

 2003年度は、200411月に開催されるオタワ条約再検討会議(通称ナイロビ・サミット)に向けて、活動の軸を考えてきた。特に、地雷の「定義」の見直しや普遍化の戦略、また、将来の姿勢が不明確な地雷関連支援などについて、日本政府との意見交換を適宜持った。とりわけ、ジュネーブの軍縮大使の交代や通常兵器室長の異動など政府側のキーパーソンの交代が相次ぐ中で、新しい担当者との関係つくり、意見交換に力を入れた。

 これと平行して、200311月以降、ゆるやかなネットワークとして活動が始まった、CMC(クラスター・ミュニション・コアリション)にも参加し、戦争の後に残る爆発性の残存物(ERW)の処理、規制に関する法的枠組みを考えていく試みに関わり始めた。この流れの中で、大量のERWをもたらすクラスター爆弾に関するシンポジウムも開催し、地雷問題から派生した新たなテーマへの関心喚起にも力を入れた。

普遍化推進活動

@『ランドマイン・モニター報告』
200399日『ランドマイン・モニター報告2003』が発行され、その内容について記者発表を行った。

『ランドマイン・モニター報告2004』の日本の章を北川泰弘代表が中心になり執筆。運営委員の長 有紀枝は中国の章を担当した。200453日〜5日、サラエボで開かれたランドマイン・モニターのリサーチャー会議に、北川、長が出席した。

A会議出席
「第5回オタワ条約締約国会議」
2003915日〜19日 タイ、バンコク市
ICBLはオブザーバーとして約250名が出席。JCBLからは清水俊弘、長 有紀枝が出席した。オタワ条約に消極的な態度を示すグループがある一方、各国の地雷対策が進んでいることを確認した。また、条約未加入国の中国、スリランカも代表団を送り、将来は地雷禁止を目標としたことが評価される。

2003年度ICBL総会」
2003921日、22日 タイ、バンコク市
清水俊弘が出席。2005年から2009年にかけてのICBLの活動、及び組織体制について検討された。

「人道目的の地雷/不発弾除去技術及び協力に関するワークショップ」 
2004426日〜28日  中国雲南省昆明市
長 有紀枝が出席。中国は世界の貯蔵地雷の半数を保有する国であるが、除去機材を地雷汚染国に提供するなど、除去には積極的姿勢を見せている。地雷の使用制限にも肯定的になってきている。

B政府との対話
オタワ条約の見直し会議となる20041129日から開かれる“ナイロビ・サミット”に向けて、日本政府関係者や対人地雷全面禁止議員連盟(議連)と情報交換を行っている。6月9日、11日には議連、外務省との勉強会を行なった。また、15日の議連総会では、ナイロビ・サミットへの議連からの参加を呼びかけた。

アジアキャンペーン支援事業

アジア太平洋地域にはオタワ条約に加入していない国がまだ17カ国あり、中東と並んで未加入国の多い地域となっている。それらの国々ではそれぞれ地雷廃絶のNGOが自国のオタワ条約への加入を働きかけをしたり、地雷被害者の支援や地雷対策活動を行っている。これまでもJCBLはそれらの活動を支援してきたが、一部のNGOに限られていたため、2003年度より「アジアキャンペーン支援事業」として広く広報し、さらに多くのアジア地域のNGOが支援金を申請できるようにした。被害者支援や地雷回避教育ばかりでなく、組織の立ち上げ資金や調査費、会議出席費など、他のドナーからは支援を受けにくいが重要な活動の支援を行っている。

@  タイ・ビルマ国境の地雷回避教育  
タイ・ビルマ国境は今も地雷が埋設され、人々は地雷原に囲まれて暮らしている。ノンバイオレンス・インターナショナル・タイでは、この国境沿いの小数民族の村や被難民のキャンプを巡回するバック・パック・ヘルスワーカーに地雷回避教育の研修を行い、彼らが住民に地雷回避教育を行うようにした。JCBLはヘルスワーカーへの研修費や交通費、教材費の一部を負担した。

A  バングラデシュ・キャンペーンの開設
1971年の独立戦争時および1993年以降のビルマ国境沿い村の地雷被害者調査を行うために、バングラデシュ・キャンペーンが新たに事務所を開設した。JCBLはその開設資金を支援した。

B アフガニスタンにおける地雷回避教育
アフガン・キャンペーンのOMARが行う35000人の帰還民の女性や子どもを対象にした地雷回避教育プログラムに、JCBLは教材費、管理費の一部を支援している。

爆発性残存物(ERW)に関する取り組み

@EWR署名キャンペーン(20035月〜10月)
第二の地雷といわれ、戦後も戦場に残されるERWExplosive Remnants of War)は地雷の定義に当てはまらず、規制の対象になっていない。その規制を求めて署名キャンペーンを行った。20035月から11月までに3504名の署名が集まり、1112日と13日のCMC(クラスター兵器連合 Cluster Munition Coalition)発足式に参加した長有紀枝が、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の第5回締約国会議英国NGOのランドマイン・アクションに手渡した。

Aパネル・ディスカッション「第二の地雷!?クラスター爆弾ってなあに?」
20041114日 国立オリンピック記念青少年総合センター
1127日、28日の特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の第5回締約国会議でクラスター爆弾の規制が取り上げられるため、一般の人々にもクラスター爆弾の問題について知ってもらおうと、外務省、防衛庁、軍事評論家、弁護士、NGOからそれぞれ専門家を招き、クラスター爆弾とは何か、地雷と同じように規制できるのかについて話し合った。

啓発活動
@ 語り部ボランティア養成講座
2004228日、29日 第2回目「語り部ボランティア養成講座」が日本赤十字社の視聴覚室で開かれ、地雷問題の基礎知識と語り部の実践方法について学んだ。29名の参加者があった。また、昨年の語り部講座参加者が中心になり、315日から21日までカンボジア・スタディーツアーを行い、プノンペン、シェムリアップを中心に被害者支援施設や地雷被害地域を訪問した。

A写真展 「気鋭写真家の平和への願い:地雷、クラスター爆弾の脅威」
2004610日〜16日 新宿のフォトギャラリー「シリウス」で開催。浅井寿樹、遠藤正雄、樫田秀樹、李 時雨、豊田直巳、高橋那典、野老康弘の各氏の作品63点を展示。日曜が休館だったが、281名の来場者があった。

B国際協力フェスティバル、メイデーへの参加
2003104日、5日 毎年日比谷公園で行われている国際協力フェスティバルにJCBLも参加。来訪者に地雷問題を説明し、廃絶運動への参加を呼びかけた。
2004429日 連合が主催するメイデーにブースを出展。ナイロビ・サミットについて広報を行った。

出版
『地雷と人間』(岩波ブックレット) 20037月発行
運営委員の北川泰弘、目加田説子、清水俊弘が執筆。地雷問題やオタワ条約、JCBLの活動について分かりやすく書かれている。

『ランドマイン・モニター報告2002』の日本語要約版を発行した。この翻訳には日本赤十字社の語学奉仕団が協力した。
会報の発行
27号「地雷なきアジアへ 」 28号「第二の地雷!? クラスター爆弾ってなあに?」
29号「新しい米国の地雷政策 ほか」 30号「タイ/ビルマ国境の地雷回避教育 ほか」

その他
20031213日、14日のカンボジア市民フォーラム10周年記念イベントで、地雷分科会を担当。今後の活動について討議し、カンボジア政府、日本政府、JCBL自身の活動に関する提言を発表した。

JCBL代表の北川泰弘が長年の地雷廃絶運動に果たした役割を評価され、2004213日、2003年度の朝日社会福祉賞を受賞した。

2005年に開催される愛知万博(愛・地球博)にJCBLが出展することが正式に決まり、20042月から準備に取り掛かった。JCBLの出展コンセプトは「地雷廃絶に立ち上がった市民運動のサクセスストーリー」で、アジアから4キャンペーンが参加することになっている。

200334日、5日に外務省通常兵器室の主催で行われた「地雷に関する東京セミナー」に北川泰弘、長 有紀枝がオブザーバーとして出席。

POSTナイロビの事業計画
 2004年11月29日?12月3日、ナイロビにて地雷禁止条約の第1回再検討会議(ナイロビ・サミット)が開催される。同条約発効(99年3月)後5年が経過し、一つの区切りを迎えることから、ナイロビ・サミットを機に、ICBLの運営体制や、ランドマインモニターのレポート内容、各NGO、各国キャンペーンの関り方など、様々な変更が予定されている。
 他方JCBLでは、条約発効後5年が経過しても、依然として対人地雷は各地で甚大な人道問題を引き起こしているとの認識を新たにし、これまで同様積極的な取り組みを行っていく。今年度の事業方針は以下のとおりであるが、具体的な事業計画については、ナイロビ・サミット終了後の12月4日、同じくナイロビにて開催されるICBL Campaign Meeting(議題:2009年に向けてのICBL行動計画)の結果を見て、再度、検討する予定である。

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