新自由主義の帰結 ボルケシュタイン指令とは コリン@グローバル・ウォッチ/パリ・ATTACフランス 2005年4月28日 |
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2005年3月19日にブリュッセルの戦争と福祉切捨て に反対するユーロマーチに参加したヨーロッパのattac |
こんにちわ。コリン@グローバル・ウォッチ/パリ・ATTACフランスです。 ブラッセルでのデモに一緒に行ったケランが報告したようなので、少し補足させて下さい。 現在、フランスでは、EU憲法を批准するかどうかで、大きな運動をATTACフランスは各地で展開しています。 先週始め,反対派56%,賛成44%だったのが、週末、賛成派が少し盛り返して52%対48%になりましたが、その後、この比率で動いていません。予断は許しませんが、メディアで取り上げられる比率が賛成派73%に対し,反対派27%でしかないにもかかわらず、反対派は非常に頑張っています。 シラクは批准を留保しているのではなく、議会か,国民投票かで、後者を選択したわけです。 ボルケスタイン要綱は、EU憲法とは直接関係ありません。この要綱設定はもう3年前から進められていたもので、WTOで決められたGATSの方向性のある意味での当然の帰結な訳です。あらゆるサーヴィスを自由化し、どこの国でも自由に提供できる、しかもこの要綱の特徴は、サーヴィスを提供する国の規則(提供国原則)に従えばよく、サーヴィスを受ける国の規則に従わなくてもいい、というものです。これはEUの新自由主義者たちが、アメリカ以上の競争力をEUにつけさせることをも目的としたものです。こうなると,一種のダンピングであり、社会保障や労働条件すらも、不問に 付されます。ここまで来るとデモクラシーではなく、資本独裁主義といえます。 しかし、ボルケスタイン要綱は、今までの討議で,ほとんど承認されて来たのにも関わらず、EU憲法批准問題と絡み合って、民衆から支持を取り付けることにとって非常にネガティヴな要素として働き始めたため、シラクや保守議員でさえ、この要綱の白紙見直しを迫っています。 |
ボルケスタイン指令に反対するキャンペーン |
日本ではボルケスタイン要綱(指令と訳すべきか?)についての報道がほとんどされていないので残念ですが、これが今の新自由主義の行き着く一つの帰結であることは間違いありません。ボルケスタイン要綱は、一時,再論議することとなっていますが、5/29のフランスの投票以降、再度現れるでしょう。 すでにドイツなどは、人件費の安いポーランドに工場を移しているところも多く、今後、工場や企業のデロカリゼーションの問題が大きくなってくるでしょう。 社会党や緑の党は,党としては賛成ですが、造反派が出て来ていて、左翼政党としての矛盾が現れています。というのは、社会党支持層のマジョリティーは批准に反対しているからです。緑の党は、党の規則として反対派の口封じをしました。しかし,それでもなお、内部の反対派は署名運動をしています。現実的に支持層と政党の指導者たちの認識の乖離が明らかになって来ており、そこに、現在の議会制民主主義の代表性(だれが何を代表するのか?)の根本的な矛盾が露呈して来ています。 EU憲法問題は、その性格が新自由主義的であるだけではなく、この憲法を承認したが最後、ほとんど改憲不可能なようなシステムになっていることが、非常に反民主主義的であり、また多くの決定プロセスが欧州委員会か、コンヴェンションとという任意の集団にまかされていて、欧州議会ではないことです。議会制民主主義の代理制さえ,尊重されないエリート主義に貫かれているところが問題でもあります。 フランス革命のときに宣言された人権宣言は17条からなっていましたが、EU憲法は448条もあり、憲法というより、内部規約的性格が強いものです。というのも、今までの条約内容を統合しているからです。恐らくヨーロッパ人の大半は、この条項すべてを読むこともなく、メクラ版を押すような形でウイかノンをいうことになる恐れ大なのです。また様々に規定されている義務や権利を保証すべき司法的権限を与えられている組織が定義されていません。 ギリシャは議会によって批准してしまいましたが、オランダがフランスと同じように反対派が増えているという情報です。 【2005年4月29日】 追伸をします。 フランス緑の党は、党としてEU憲法賛成で、反対派に対して箝口令をしいていましたが、今日の『ル・モンド』によると、緑の党も,社会党と同様、 70−75%が反対であることから、箝口令を止めて,自由に表現していいということになりました。5/29の国民投票で,ノンが勝つと、社会党も緑の党 も,指導部の責任が問われるでしょう。 |