<ATTACニュースレター日本語版・準備第12号/転載歓迎>
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ATTACニュースレター「サンド・イン・ザ・ホイール」(週刊)
    2001年8月29日号(通巻第93号)
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        Sand in the wheel
 Weekly newsletter - n°93 - Wednesday 29 august 2001.
  FURTHER OUR RESISTANCES(抵抗を拡大しよう!)
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目次

1−ジンバブエ:「貧者の埋葬」に向かうのか?
(Zimbabwe's lurch towards a pauper's burial?)
 債務返済スケジュールと金利の横暴のためにムガベ大統領は債務の「トレッドミル」(走行するベルト上を逆方向に走る健康器具)から落とされそうになった。そして1999年前半に彼はそこから跳び降りた。IMF、世界銀行への支払いを拒否し、イエーメン、イラク、コンゴ共和国と同じように金融破産国の列に加わった(2965語)。

2−世界銀行による社会保障への攻撃
(The World Bank's Attack on Social Security)
世界銀行による社会保障への攻撃は直接・間接の両方の形を取っている。間接の攻撃は米国のような先進工業国には非常に重要である。世界銀行は、米国にあるような社会保障制度は持続不可能であるという考え方を精力的に宣伝してきた。これを非常に明白に示しているのが「旧時代の危機の回避」(Averting the Old Age Crisis)と題する世界銀行の報告書(1994年)である(862語)。

3−ジェノバのあとで − 暴力についてのいくつかの考察と運動の現在の状況
(After Genoa, a few thoughts on violence and the current state of the movement)
シアトル以降、新自由主義的グローバル化に反対する運動は大きく成長した。これは動員の頻度と規模の両方に反映され、とくに若者の間でのラディカル化をもたらしてきた。しかし、もっとも注目すべき点は、このような動員が世論の全般的な変化の先取りであるという点である。少なくとも先進資本主義国においてはそうである。
これらの運動は力量を拡大しているだけでなく、ますます多くの大衆の関心と共鳴し始めている(2365語)。

4− ロシアのジェノバ(Russian Genoa)
なによりも、ロシアとウクライナからの全参加者が安全に、元気に帰ってきたことに安堵している。1つのことは確実である:ショッキングな出来事のために、この種のデモに初めて参加した活動家たちはいくぶん当惑していたが、ロシアの中で反グローバル化の運動を拡大することを固く決意している(1344語)。

5− EUが反資本主義の運動に対するスパイ網を計画
(EU's secret network to spy on anti-capitalist protesters)
EUのリーダーたちは、最近の国際的会議に対する反資本主義デモの参加者による暴力的な抗議行動が先月のジェノバG8サミット(1人の青年が警察官によって射殺された)で頂点に達したとして、警察および情報機関に対して、反資本主義デモの参加者を特定し、追跡するために相互に協力よう指示した(565語)。

《 要 約 版 》
● ジンバブエ:「貧者の埋葬」に向かうのか?
Zimbabwe's lurch towards a pauper's burial?
 by Patrick Bond
(ジンバブエBvumba Mountainより、6月19日)
[筆者は昨年6月にジンバブエの東部高原地域で選挙監視活動に参加した。当時、かつてはリベラルな民族主義的リーダーだったムガベとZanuPF(ジンバブエ・アフリカ民族同盟-愛国戦線)の政権は腐敗し、暴力的な支配を強めていた。最近ジンバブエを再訪し、市民団体のセミナーに参加し、債務問題などを討論した]
 ジンバブエの対外債務は50億ドル、国内債務は15億ドルで、世界銀行の分類によれば中程度の債務国であるが、返済の負担は過酷である。たとえば、昨年の国家予算では保健・医療関連の予算が26%削減された。この国ではHIV/AIDSのために平均寿命が40歳を下回るようになった。
 昨年と今年の春に「ジンバブエ債務と発展に関する連合」
(Zimbabwe Coalition on Debt and Development 、Zimcodd)、「アフリカ債務と開発ネットワーク」(African Network on Debt and Development、Afrodad)などのNGOが世界銀行/IMFの会合に対する抗議行動を展開している。
 ZimcoddのMalungisa氏は「債務の脅威に対してジンバブエのすべての人々が団結できるし、団結しなければならない。そうでないと、貧者の埋葬に立ち会わなければならなくなる」と述べている。
 ジンバブエでは来年4月の大統領選挙でジンバブエ労働組合会議の労働者や、都市貧困大衆、若者に指示された民主的変革運動(MDC)が勝利する可能性がある。しかし、1つの問題は、MDCが昨年2月に、大資本家や白人地主、海外の支援者の参加を受け入れたことである。MDCが勝利した場合に、おそらく強力な新自由主義的政策が採用されるだろう。
 ジンバブエでは1991-5年に世界銀行によって計画された構造調整政策が導入され、1995年には世界銀行はムガベ政権の政策を「非常に満足できる」と評価していた。実際には、それまでよくバランスの取れていた経済が産業の解体に直面するようになり、債務が急膨張し、社会的不平等が一挙に広がった。1990-95年の間にGDPは85億
ドルから68億ドルに減り、対外債務は32億ドルから50億ドルに膨れ上がったのである。
 その結果、1996- 97年に、労働組合や公務員、農業労働者たちがムガベ政権を左から批判するようになった。一方、ムガベは1960-70年代の独立闘争の戦士たちの忠誠を確保するため、彼らに年金を支出した。この元戦士たちが準軍事組織となって労働者のストライキを弾圧した。彼らはまた、白人地主の農園を占拠した。これはムガベの愛国主義的宣伝に役立った。
 ジンバブエは数年にわたって債務返済のために年6.5億ドルを費やしてきたが、98年には債務返済額は9.8億ドルに達した。これは輸出収入25.7億ドルの38%にあたる。しかし、1994-98年にジンバブエが返済した債務は新規借款を9.1億ドル上回っているにもかかわらず、債務は45億ドルから47億ドルに増えている!
 債務返済スケジュールと金利の横暴のためにムガベ大統領は債務の「トレッドミル」(走行するベルト上を逆方向に走る健康器具)から落とされそうになった。そして1999年前半に彼はそこから跳び降りた。IMF、世界銀行への支払いを拒否し、イエーメン、イラク、コンゴ共和国と同じように金融破産国の列に加わった。ムガベはIMFの新規借款のための条件を拒否し、IMFは新規借款を中止した。
 ジンバブエはコンゴ共和国の内戦でカビラ政権を支援して派兵した。この戦費も保健医療、教育への支出を圧迫している。
 ムガベはIMFの返済要求を拒否して、タバコ等の輸出によって稼いだ外貨の一部を石油等の緊急輸入に充てた。それでも石油の不足は解消されず、6月中旬に一夜にして70%値上がりした。労働組合は石油価格の引き下げを要求して7月に2日間のゼネストを計画して
いる。
 政府は現在、?金利を15%に引き下げる(現在のインフレ率は60%)、?1ドル=55ジンバブエ・ドルに固定する(ブラックマーケットの相場より2倍以上高いレート)、?対外債務の返済を遅らせるという政策を取っている。
 このような政策が長期にわたって持続できるとは考えられないが、2002年にMDCが政権についたとすれば、この政権は新自由主義的政策を全面的に中止しなければならないだろう。債務の負担が過大であり、ここから脱出するためには債務の不履行を宣言するほかない。その上で、証券市場へ逃避している金融資本を産業への投資に向けさせ、一般の労働者の年金を保護し、貧困大衆をインフレから守るための措置(たとえば、必需品価格への補助)を導入するという課題に取り組まなければならない。
 ・・・夜遅く、私たちのセミナーの終わりに、Bvumbaの暖炉を囲んで、 Davie Malungisa、Eunice Mafundikwa、Masimba Manyanya(NGOのリーダー、いずれも30代の活動家)と他の人たちは、この土地のビールを飲みながら、「ジンバブエの最良の草の根の活動家と国際的な新自由主義反対の運動を結びつけるために先頭に立つ」ことを誓った。彼らは10月初めにワシントンで開催される世界銀行/IMFの年次総会に反対する行動に参加する。または「世界銀行債ボイコット」の運動( http://www.worldbankboycott.org)に参加している。

●世界銀行による社会保障への攻撃
The World Bank's Attack on Social Security
 By Dean Baker
 この10年間、世界銀行は全世界で社会保障システムの民営化の推進役となってきた。世界銀行による社会保障への攻撃は直接・間接の両方の形を取っている。間接の攻撃は米国のような先進工業国には非常に重要である。世界銀行は、米国にあるような社会保障制度は持続不可能であるという考え方を精力的に宣伝してきた。これを非常に明白に示しているのが「旧時代の危機の回避」(Averting the Old Age Crisis)と題する世界銀行の報告書(1994年)である しかし、この報告書の前提となっている考え方、すなわち高齢者人口の増加によって、将来の世代は親や祖父母の世代より高い生活水準が期待できなくなるという考え方は根拠がない。過去30-40年間に高齢者人口は大幅に増加したが、それによって子の世代の生活水準が下がったという事実はない(少なくとも先進工業諸国においては)。所得配分のあり方によって、大多数の人々の生活水準の低下が起こることは考えられる。世界銀行の報告書はこの側面について全く触れていない。
 世界銀行の報告書は、その前提が根拠のないものであるにもかかわらず、民営化を提唱する政治的グループには大いに役に立った。この報告書を書いた研究チームを率いたEstelle Jamesは現在、ブッシュ政権の社会保障の民営化のための委員会のメンバーになっている。
 世界銀行の発展途上国に対する影響は、より直接的である。世界銀行は社会保障システムを民営化した国に対して借款や技術上の支援を提供してきた。民営化された社会保障システムが公営のシステムより効率的であることが証明された例はない。英国やチリの民営化された社会保障システムの管理コストは、米国のシステムの15倍である。この余分の管理費(金融機関に入る手数料や委託料など)は、本来であれば退職者が受け取るはずの年金から埋め合わせられる。米国のメリルリンチなどの金融機関がチリをはじめとする発展途上国の社会保障の民営化から大きな利益を得ている。
 かつて世界銀行の主任エコノミストだったJoseph Stiglitzは「年金改革の再検討:社会保障制度についての10の神話」(RethinkingPension Reform: Ten Myths About Social Security Systems)の中で、社会保障制度の民営化を支持する多くの論点が根拠に基づかないものであることを指摘している。

●ジェノバのあとで - 暴力についてのいくつかの考察と運動の現在の状況
After Genoa, a few thoughts on violence and the current state of the movement .
 By Pierre Khalfa .
 ・・・暴力は中立的な技術的手段ではない。それはそれを行使する者や、それを促す社会に影響をもたらし、不可避的に他の社会的諸関係を支配する。暴力は支配階級に対してのみ行使されるべきであるという考え方は幻想であり、一方、「労働者の運動の中における非暴力」は歴史的には偽善的な願望以上のものではなかった。
 しかし、非暴力を掲げるだけでは問題の解決にはならない。自分が非暴力であると宣言しても、相手がそうであるとは限らない。
 過去における論争にふまえながら、この問題について新しい戦術的な観点を確立する必要がある。
<運動の現在の状況を出発点に>
 シアトル以降、新自由主義的グローバル化に反対する運動は大きく成長した。これは動員の頻度と規模の両方に反映され、とくに若者の間でのラディカル化をもたらしてきた。しかし、もっとも注目すべき点は、このような動員が世論の全般的な変化の先取りであるという点である。少なくとも先進資本主義国においてはそうである。
これらの運動は力量を拡大しているだけでなく、ますます多くの大衆の関心と共鳴し始めている。
 ジェノバ・サミットにおけるベルルスコーニの態度を、この文脈の中で理解する必要がある。イタリア政府はデモの全参加者を区別なく攻撃することを選んだ(これは「警察の失態」というレベルを超えていた)。それによって運動全体を犯罪扱いし、運動を周辺化し、参加者を分断し、もっとも穏健な部分を取り込もうとしたのである。ブラックブロックが警察の暴力を引き出したのではなく、警察が暴力を選んだのである。
 しかし、警察の挑発が明らかであり、弾圧の程度がひどかったため、イタリア政府の思惑とは正反対の結果となった。ジェノバの動員に参加しなかった団体すら政府を非難したし、運動は周辺化されるどころか一層広がった。
 この状況の中で私たちは次の4つの目標を同時に追求しなければならない。?世論との結びつきを維持し強化する、?運動の分裂を避ける、?ますますラディカル化する運動の性格に対応できること、?引き続き大規模なデモを組織することによって私たちの力を示すこと。
 そのためにいくつかの障害物を避けなければならない。第1に、行動形態の選択において極端を避けること。私たちは同時に、運動のますますラディカル化する部分に対して責任を負う必要がある。つまり、行動形態を選択する際に、シンボル的なラディカリズムを組み込むということである。非暴力は受動性を意味しないし、自動的
に法律に拘束されることを意味しない。
 この数年におけるラディカルな非暴力運動(フランスでは失業者による職安の占拠や、ホームレスの人たちによる空家の占拠など)は、と当該の人々の要求を強力に表現したし、その要求を人々に印象付け、世論の積極的なインパクトを与えた。
 私たちは、ブラックブロックとの関係をこの枠組みの中で位置付ける必要がある。私たちはブラックブロックの戦術に反対であることをはっきりと言わなければならない。しかし、この潮流を運動の敵対者あるいは挑発者集団であるとみなすのは誤りである。第一に、私たちがどのように表明しようとも、政府は私たちを彼らと同視するのをやめないだろう。第二に、この潮流が、システムによって痛めつけられていて、本当に変革を望んでいる人たちを引きつけるかも知れない。第三に、この潮流を強行に排除することがこの潮流を一層ラディカル化させる危険がある。第四に、この潮流の戦術も変化する可能性がある。私たちはこの潮流の戦術に反対であることをはっきりと表明しつつ、この潮流を拒絶するのでなく、対話を追求していくべきである。
<いくつかの提案>
 行動形態をめぐる論争(暴力をめぐる論争を含む)を通じて、この問題についての国際的な文書を作成し、さまざまな運動で共通に参照できるようにするべきではないか。
 この中でデモを防衛する方法、デモの権利を守る方法について討論するべきではないか。
 フランス選出のヨーロッパ議会議員のダニエル・コーンバンディ(緑の党)は、次の欧州サミットでの妥協案を提案した(「ルモンド」8月11日付)。欧州サミットではレッドゾーンを設けない代わりに、「非戦闘地域」を設けて「市民のリーダー」たちが平和的に警備するという提案である。しかし、政府が警察に守られないサミットを受け入れるのだろうか。むしろ「市民のリーダー」たちが警察の協力者となる危険があるのではないか。そもそもこの提案は、私たちが開催に反対している会議の警備について、私たちに責任を負わせるということではないのか。

● ロシアのジェノバ
Russian Genoa.
 Carine Clement (モスクワ、ATTACフランス国際グループ) 私はこれほど年齢も、政治的知識も、活動スタイルも異なるグループをまとめるのはむずかしいと思っていたが、私の予想は現実に乗り越えられてしまった。討論や口論、いつまでも終わらない会議があったが、いつも最後には合意が形成された。多くの活動家が団体や労働組合、政党の活動家が1台のバスに乗って、3日間をともに寝起きした。資金の問題もあった。しかし、ATTACフランスとイタリアの歓迎によって、私たちは非常に有意義な経験をすることができ
た。
活動家たちは反グローバラル化の運動に連帯し、プーチン政権に対する反対を表明するだけでなく、現実を見、学ぶことを期待した。多くの集会に参加し、大量の情報を収集し、あらゆる行動に参加し、こうした期待は完全に実現された。もう1つの成果は、ロシアからジェノバのデモに参加していることがメディアで報道され、ロシアのメディアでもこの運動が初めて注目されたことだ。この運動はロシアとウクライナにおける反グローバル化の運動の重要な第一歩となった。
・Elena Starostina (Omsk、シベリア労働連合)
 デモ参加者の数と多様性、組織についての柔軟なアプローチ、街頭デモの周到な準備が印象的だった。私は初めて催涙弾を経験した。
 多くの仲間はATTACが準備した行動に参加したが、私はもっとホットな戦闘場面を探した。私は、もっとラディカルな行動が必要だと思っている。
・Serguei Sytchev (モスクワ、, Zachtchita労働組合)
 私は外国に行くのが初めてだったが、多くの国から、年齢も、政治的な考え方も異なる人たちが同じ目的で集まっていることに驚いた。私たちもATTACのような組織を作らなければならない。ロシアでサミットが開かれる時は、よく目立つ行動を組織したい。
・Alexandre Nikolaev (ロシア労働者共産党)
 私は街頭での行動に直接には参加しなかった。私は50歳で、この手の行動にはちょっとした経験がある(私は1993年にエリティンが連邦議会を攻撃した時に連邦議会を防衛していた)。私は記者会見のためにデモに遅れたので、ロシアの代表団を追いかけたが追いついたときにはデモは終わりだった。私はデモがよく組織化されていたことに感銘を受けた。
 世界中の言葉でインターナショナルが歌われているのに感激した。
私は多くのことを学んだし、この経験はロシアでの運動に役立つだろう。
 G8やIMFを解体するためには、もっとラディカルな行動が必要だと思う。
 この闘争の中でロシアも役割を果たすべきだ。私たちはグローバル化の結果に苦しんでいる。

● EUが反資本主義の運動に対するスパイ網を計画
EU's secret network to spy on anti-capitalist protesters
 By Stephen Castle
 EUのリーダーたちは、最近の国際的会議に対する反資本主義デモの参加者による暴力的な抗議行動が先月のジェノバG8サミット(1人の青年が警察官によって射殺された)で頂点に達したとして、警察および情報機関に対して、反資本主義デモの参加者を特定し、追跡するために相互に協力よう指示した。
 新しい方針では、EU諸国間を移動するデモ参加者への監視が強化される。先月行われたヨーロッパ内務相会議における秘密の決定は、各国の警察・司法が連携して活動家を監視することを指示している。ハーグのヨーロッパ警察(組織犯罪と麻薬取引を取り締まるために設立された情報共有のための機関)が中心的な役割を担うことになる。
 この動きはジェノバの後、ドイツの内務相のOtto Schilyによって提唱された。ドイツは以前から、ヨーロッパ規模でFBIをモデルにした犯罪取り締まり機関を設立することを提案していた。