国際通貨取引税(CTT)条約草案[仮訳]

 

Heikki Patomäki/Lieven A Denys

20021

NIGD (グローバル民主化のためのネットワーク研究所)


 


はしがき

 

  通貨取引税(CTT)は単なるキャンペーン・ツールから、世界的な政治的アジェンダに関わる重要な問題へと発展してきた。この条約草案は、この過程を更に一歩進めることを目的としている。

  CTT(「トービン税」)が自由と解放につながる可能性は、それが実現される過程によって決まる。この税の主要目的は以下の3つである。

 

@為替市場と国際的な短期資本移動を抑制する。そのことによってこの税は金融市場を安定化させ、国家の経済政策上の自立性を強化する。

A予防や補償のメカニズムのための、さらには、より一般的にグローバルな公共福利のための世界基金を創出する。

B国際金融市場と、それによって解き放たれ、強化された社会的諸力に対する一定の民主的規制を可能にする。

 

  CTTについての多くの構想は、この税の1つの目的にのみ焦点を当てており、他のことに関心を示していない。ジェームズ・トービンの1972年の最初の提案は、@の安定化と国家の自立性についてのみ取り上げ、Aはどうでもよい副次的効果として脇に置かれた。トービンはBについてはほとんど何も語らなかった。一部のエコノミストは、この点についてトービンを踏襲している。その後の多くの提案は、Aの世界基金の創出にのみ関心を寄せ、為替取引の量と機能にほとんど影響を及ぼさない低い税率を示唆した。また、最近ではEUによる独立的なCTTの確立について多くの提案がなされているが、それはこの3つの基本的な目標を達成しないだろう。それには世界基金も金融市場の世界的な民主的管理も存在しないだろう。発展途上国が欧州中央銀行による管理を受け入れることを条件にCTT体制への参加を許されるのであれば、CTT体制は(新)植民地的な金融構造の再生産に近いものとなるだろう。

  もう1つの問題は、CTT機構が学習能力を備えていて、自己変革できなければならないということだ。CTT機構は種々の考え方に開かれていて、予想外の変化に迅速に対応でき、必要に応じて新しい役割を引き受ける権限が与えられていなければならない。さらに、基金の配分に関する決定のための公正で、透明で、責任が明確なプロセスが存在しなければならない。実効性があり、開放的な民主的機構のみが、そのような要件を満たすことができる。積極的な言い方をすれば、CTT機構は民主的な機構とイニシァチブの見本を示すことによって、世界経済のガバナンス(統治)における新たな民主的参加とアカウンタビリティ(責任)の形態の発展を促進することもできる。

  この条約草案はCTTの全ての主要目的を組み込んでいる。課税ベースは可能な限り包括的に定義されている。この提案では、税率はやや高く(例、0.1%)設定されている。税率そのものは変動する。よく知られているスパーン・モデルに従って税率は2段階で設定され、為替レートが大きく変動する時には高い税率を課すことにより、大規模な投機による法外な利益を没収する。税は各国ごとに徴収され、各国は歳入の一部を留保する。しかしOECD諸国の歳入の大部分は、自動的に、世界基金に回されるだろう。

  CTT機構は税を監督し、世界基金を管理する。それは評議会、常設事務局、民主的総会によって構成される。3つのタイプのアクター(行為主体)、すなわち政府、国会、世界市民社会のアクター(NGOだけでなく、労働組合等を含む)が当事者として認められる。全会一致以外の意思決定においては、政府および国会の議決権はそれぞれの国の人口によって決められる。市民社会のアクターは民主的総会における意思決定に参加する。

  最初の段階においては、この体制は全ての国が公平な条件で参加できるように開かれていなければならないが、トービン税の必要性についての満場一致での合意は必要ではない。条約は、@30カ国が批准し、かつA条約批准国が世界通貨市場の20%以上を占めることを準備グループが確認した時点で発効する。つまり、一定数の諸国が批准すればいつでもこのシステムを導入できるということである。CTTの確立のための国際会議を招集する国と、それに参加することに関心を持つ十分な数の国があれば十分である。

  CTTに関する説明的・規範的議論、および条約草案の基本的な考え方の多くは、H. Pätomaki(2001): Democratising Globalisation. The Leverage of the Tobin Tax, Zed: London & New Yorkでさらに詳しく検討されている。PätomakiPhoebe Moore の協力を得て、条約草案の最初のアウトラインを準備した。Lieven A. Denys はこのアウトラインに体系的な法律上の形式を与えただけではなく、多くの基本的な考えを修正し、彼自身によるいくうかの提案を付け加えた。結果としてできた草案は、具体的かつ詳細な議論のための叩き台である。しかしながら、基本的には、最初の30カ国が条約に署名・批准し、CTT機構を設立するための準備は全て整った。

 

  私たちは現在、世界市民社会、政府代表や国会議員、その他のあらゆる関係者からの意見を求めている。重要なのは、条約草案が公式な交渉の出発点となる前に、それを公開の民主的討論に付すことである。議論のためのフォーラムを下記に設けている。

http://www.attac.kaapeli.fi/lib/own/tobin/DraftTreaty/index_html

 

  以下の文書は2つの部分に分かれている。第1部は要約的なメモランダムで、基本的な考えを平易な言葉で解説している。第2部が条約草案の本体である。


 

 

通貨取引税条約の概要

 


 


1.課税ベース

 全ての国際的な外国為替取引は、店頭売りスポット、先物取引、デリバティブを含めて、同率で課税される。「卸売り」(ディーラー間取引)か「小売」(銀行の顧客との取引)に関わらず、売り手と買い手との双方が税を支払う。課税ベースを定義する法律上の枠組みの大部分はECの付加価値税に関する第6指令を基にしている。この指令は現在までに、中欧・東欧諸国、ロシア、中国、および他の多くの諸国にもモデルを提供してきた。

 外国為替取引の代替となる取引が行われる場合、各国はそのような代替的取引にもCTTを適用する。しかし、最終的にはCTT機構は、必要であれば外国為替関連取引の包括的なリストを作成し、登録された主体による排他的なシステムを導入することを選択することもできる。

 各国は金融中心地の内外にタックスヘイブン(租税回避地)を設けたり、保護してはならず、租税回避の可能性がある場合には、抜け穴を塞ぎ、規制者として行動することに同意する。各国は全ての問題についてCTT機構との間で全ての情報を交換し、それらの問題についての集団的解決を追求する。

 

2.2段階システムにおける税率

 CTTは、通貨を投機的な攻撃から防衛するために、スパーンモデルで提唱されている2段階システムに従って適用される。CTT機構は許容される変動幅を決定し、その範囲内では、通常の低税率が適用される。通貨の変動幅がその範囲を超えた場合、自動的に、高率の追加税が発動される。

 基本税率は0.1%(または合意された率)に固定され、変動幅が許容範囲内にある期間における通貨取引に適用される。

 実効為替レートが合意された許容範囲を超えたとき、80%(または合意された率)の高率の追加税が発動される。この境界は、その国で最も取引量が多い4つの外国通貨の加重平均から成る通貨バスケットに対する通貨の移動平均に基づいたクローリングペグ(通貨変動を小刻みに調整する方式)によって決定される。

 2段階システムは、為替レートが大きく変動する時には高い税率を課すことにより、大規模な投機による法外な利益を没収することを目的とする。

 

3.基本CTTの各国ごとの徴収

 各国の徴税機関は、中央銀行と協力し、CLS銀行(決済銀行)などの機関の情報を参照しながら、その国におけるCTTの徴収を実施する。CTTは専門の仲介業者によって支払われるものとする。そのような仲介業者が介在しない場合(たとえば企業グループ内での取引の場合)、課税対象者自身が支払いを行う。

 国家は、その国をベースとする銀行や他の金融機関による全ての取引に課されるCTTを、その取引がどこで行われ、どこで決済されたかに関わりなく徴収する。これは全ての関連企業、たとえばオフショアのタックスヘイブンをベースとする企業による取引を含むものとする。彼らがCTT適用地域外の金融機関と取引している場合、彼らは全ての税額を納付しなければならない。納税の責任は、取引や決済がどこでどのように行われたかとは無関係に、金融機関自身が負うものとする。

 したがって、CTTは、この条約に参加していない国をベースとする金融機関に対しても、その金融機関がCTT適用対象地域内の取引所で取引を行ったり、CTT適用対象地域に属す国および通貨同盟の通貨に関連する取引を行う場合には、そのような金融機関から徴収される。

 CTT機構は、包括的な徴税システムを保証するために、各国の徴税機関がCTTに関連する会計処理手順や外国為替取引(全てのOTC[外国為替証拠金取引]を含む)に関する規則・原則の変更を実施するのを支援する。

 この条約に規定する目的を実現するために、各国はその外国為替市場の活動と課税に関する情報の共有と透明化をはかることに同意する。

 

4.世界基金と国家の自由裁量

 CTTによる税収のうち先進国は80%、途上国は30%をCTT機構に拠出し、残りの(それぞれ)20%または70%は国内における支出に充てられる。各国政府は国内支出分をどのように利用するかを自由に決定することができる。

 このように、CTT機構に参加する政府は、税の徴収を通じて、また、税収の国内支出分を自由に利用できることを通じて、経済政策における自立性を獲得することによって、自由裁量の余地と、国家的な独立性を確保し、発展させる。各国はまた、CTT機構における民主的な意志決定--グローバルな公共福利のために基金に配分するための--に参加することを通じて自立性を獲得する。

 世界基金の一部は(評議会および総会による決定に基づき)「世界規模の通貨介入のための基金」に充当される。この基金は、取引が停止された通貨や急激に減価している通貨を、市場価格で大量に購入することによって支援する。

 

5.CTT機構の構成

@評議会

 評議会はCTT機構の主要な意志決定機関である。評議会はCTT機構加盟諸国によって構成され、多数決によって行動するが、その際、議決権は各国に人口に応じて加重的に、1票から3票が配分され、議決は条約において規定されるガイドラインに従って行われる。重要な問題についての決定は加盟諸国の3分の2の賛成によってなされる。その他の問題に関する決定は、出席し、議決に参加した加盟国の単純多数の賛成によってなされる。

 評議会は定期的に開催される。例外的な状況により迅速な行動が必要とされる場合には、議長は緊急会議を招集することができる。

A常設事務局

 CTT機構の常設事務局は、CTTの導入の最初の段階で設立される。事務局に関わる費用は、当初においては、加盟各国によって国連分担金に比例して(または別途に合意された方法で)支払われる。

 常設事務局の責任には下記が含まれる。

a)国際的な手続きと必要な会議の計画と連絡調整。

b)CTT機構の会合の準備。

c)世界基金の管理と記録。

d)評議会および総会の決定の実施。

e)市場の動向と各国における監視方法を追跡調査し、全ての関連する事態の発展を評議会と総会に即座に周知させる。

f)関係諸国と協議しながら、発展途上国や小国の経済を組織する代替的な方法(オフショア・タックスヘイブン等に代わる方法)についての調査を実施する。[注:下線は原文(英語)にはないが、訳者が文脈から判断して補った]

g)本条約の実行から派生する上記の他のあらゆる業務。

 事務局は評議会に対して責任を負う。事務局が2年ごとに提出する報告書は、総会で承認されなければならない。総会で承認されなかった場合、事務局の3人の最高責任者の交替等の措置が取られることもある。

B民主的総会

 総会は独立的な権限を有し、評議会は総会に対して責任を負う。総会はCTTまたは世界基金の利用に関連する一切の問題について決議する完全な権限を与えられる。総会は評議会によって準備されたCTT機構の予算についての決定を行う。総会によって承認された場合、評議会は総会から委託された問題に関して、総会によって設定された枠組に沿って決定を行わなければならない。

 総会は、政府と、民主的に選出された国会と、市民社会の代表(一定の選考手続きと抽選によって選出される)の各代表によって構成される。各国政府は1人の代表権を持つ。民主的に選出された国会は、人口数に応じて15人の代表権を持つ。市民社会の代表の代表権の数は、それぞれの国の政府代表と国会代表の合計の代表権数の4分の3に相当する数とする。

 総会は、たとえば年に2回、評議会の直前および評議会開催中に開催される。

 

6.実施の各段階について

通貨取引税の実施は、いくつかの段階に沿って進められる。

段階的に進めることを通じて、諸国家の集まりがCTTを管理する能力を有し、タックスヘイブンに対してさらに強力な措置を取ることができる集団的機構を設立し、また、他のイニシアチブにも同様に参加するすることが可能になる。

 

移行段階

1段階への移行の段階においては、準備グループ(または条約に署名した諸国)によってCTT機構に関する議論が行われ、CTT機構が組織され、手続きが明確にされる。

 

発効

最初の国際会議においては、政府のどの閣僚が自国を代表してもよい。政府代表に、(たとえば)国会の代表が随行しなければならない。最初の国際会議には、世界の市民社会の代表が参加できる。

この条約は@30カ国以上が批准し、かつA条約批准国が世界通貨市場の20%以上(自国をベースとする通貨取引の合計額を基準とする)を占めるようになった時点で発効する。

この条約のいかなる規定も、条約上の義務に拘束されることに同意する限りにおいていかなる国家のCCT機構への加盟も妨げるものではない。逆に、世界の全ての国家に、CCT機構への加盟が呼びかけられる。

 

1段階

 CCT機構の第1段階における活動は、下記の実現に向けられる。

@)CTT機構とその常設事務局を設立する。そのための当初の費用は、加盟各国によって国連分担金に比例して(または別途に合意された方法で)支払われる。

A)CTT機構の本部の場所を決定する。一定期間内に合意に至らない場合、その場所は必要に応じて適切な手順によって決定される。

B)CTT機構は、各国の徴税機関が徴税と世界基金への支払いの一律のシステムを確立するのを支援する。CTT機構は参加国の通貨間でのクローリングペグ・システムを確立し、それによって2段階方式のCTTの基盤を形成する。

C)CTT機構内部に世界基金を設立し、各国の徴税機関が税収のうちの合意された割合をこの基金に支払う。

D)CTT機構は最初のモニターおよび監査業務を実施する。

E)第1段階においては、CTT機構は一切の既存の地域および国際機関から独立している。

 

2段階

 CTTを積極的に導入している諸国が外国為替市場における取引の90%以上を占めるようになり、全ての主要金融センターと、その他の国の大部分が第1段階のシステムに参加した時点で、CTT機構は第2段階へ移行する。

 この段階でCTT機構は、この体制の将来の展望について理解するために、その存在理由を深く検討する。

 この段階で各国は集団的な作業によって、機構整備と加盟国拡大のためのさらなる行動を決定する。加盟国は、既存の国際機関(国連、世界銀行など)とのより緊密なパートナーシップを追求するかどうか、また、それらの機関を国際的な税収の使途に関する議論の場として活用するかどうかを検討する。また、加盟国は、別の選択肢として、CTT機構が国連の正式構成要素となる--たとえばグローバル・ガバナンス委員会が提唱している「経済社会安保理」という形で、あるいはその管轄の下の機関として--ことを追求するかどうかを決定できる。

 

紛争

 この条約の解釈または適用をめぐって2つ以上の締結国間での係争があり、交渉によって3カ月以内に解決されない場合、その係争は評議会に付託される。評議会は、評議会自身が解決のために尽力するか、または他の紛争解決手段を提案することができる(民主的総会への付託、国際司法裁判所の規則に基づく同裁判所への付託など)。

 

修正

 この条約の発効から7年を経過したのち、締結国はこの条約の修正を提案できる。民主的総会は、そのような提案が通知されてから3カ月後以降に開催される次回会合において、出席・議決参加者の多数決によってその提案を取り上げるかどうかを決定する。民主的総会は、提案を総会において直接に処理するか、または、問題の重要性に応じて検討会議を招集する。民主的総会の会合または検討会議において、全会一致に至らなかった修正案の採択は、締結国の3分の2の賛成を必要とする。

 

脱退

 締結国は国連事務総長宛てに書面で通知することによってこの条約から脱退できる。脱退は、通知書の中で2年以上後の日付が指定されていない限り、通知が受理された日付から2年後に発効する。


 

 

国際通貨取引税に関する条約

 

 


前文

 

本条約の締結国は、

通貨危機、またはその他の金融危機もたらす甚大な悪影響を想起し、

短期的な国際資本移動の過度の影響を抑制することを目指し、

各国の経済状態の違いの結果として、各国が、多国間経済協定の効果を損なうことなく、自国の経済政策の運営において一定の自立性を保持することを必要としていることに留意し、

世界的視点で決定されるべき発展およびその他の社会・経済的目的のために活用できる税収を創出することを目指している。

よって、締結国は、

国際通貨取引税の導入を決定し、

種々のオフショア・タックスヘイブンへの適切な統制と規制を含めて、重大化している租税回避の問題に対処することを決定し、

世界規模の経済ガバナンス(統治)のための多国間システムの発展における新たな、より民主的な段階を画することを決議し、

民主主義と法による支配の原則を遵守し、それが国家間および国際的関係にも適用されるべきであることを確認し、

通貨取引税を確立し、通貨取引税機構を設立することを決定し、

この条約を締結することを決定し、その目的のために、その全権大使として任命し、

各全権大使は、相互にその権限が適切かつ正式に承認されたものであることを確認し、

下記に合意した。

 

第1篇  総則

第1条

本条約により、締結国は締結国間で通貨取引税機関(以下「CTT機構」と言う)を設立し、通貨取引税(以下「CTT」と言う)を導入することに同意する。

 

本条約の目的

第2条

本条約は以下の目的を有する。

1.世界経済における金融の不安定を抑制する。

2.グローバルな公共福利のために活用される財源を創出する。

3.国際通貨取引税の適用を監視し、ガイダンスを提供する。

4.世界規模の経済ガバナンスにおける民主的な参加と責任の新たな形態の模範となる機構とイニシアティブを示すことを通じて、その発展を促進する。

5.CTT機構内での議論と意思決定を通して、CTT機構のメカニズムの効果を保証するという目的で、本条約によって導入された政策と協力の形態がどの程度修正を必要としているかを検討するという観点から、本条約を補強する。

 

第2篇  通貨取引税

第3条

§1  締結国は、本条約の第4条から第16条に規定する原則に従って、通貨取引税を導入するものとする。

§2  CTTの税収

1.  締結国のうちメキシコおよび大韓民国を除くOECD加盟国は、定期的に、CTTによる税収の80%[または同意された率]を、第17条に基づいて設立される世界基金に支払うもとのする。

2.  他の諸国(メキシコおよび大韓民国を含む)は、この税収の30%[または同意された率]を世界基金に支払うものとする。

§3  24条§1に規定する検討会議が開催されるまでの間、非加盟国に対する国内通貨の貸付に対しては、第18条に従って設立される評議会によって決定される付加税が課されるものとし、この税率は2%[または同意された率]とする。税の徴収は、第4条から第16条に規定する原則に従って行われるものとする。

§4  評議会は、第19条に従って設立される民主的総会の動議に基づいて、本条約の効果的な施行を何らかの形で脅かす非協力的タックスヘイブンとの間における資本の出入に対して25%の税率を設定する。評議会が民主的総会の要請に基づいて6カ月以内にそのような措置を講じなかった場合、民主的総会はこの問題について独自に行動する完全なる権限を持つ。

 

第1章  序章

第4条

締結国は、通貨取引税のシステムが可能な限り早期に、第27条に従って発効できるように、必要な法律、規則、行政的手続きを導入するものとする。

 

第2章  範囲

第5条

その国の領土内で課税対象者によって行なわれたいかなる通貨取引も、直接的か間接的か、現金か先物か、振り替えによるものか否かに関わらず、全てCTT の対象となる。

 

第3章  適用地域

第6条

本条約において、「その国の領土」とは、附則1で規定される締結国の領域とし、EEC条約に基づいて設立された欧州経済通貨同盟の締結国については、その同盟の適用対象地域とする。

 

第4章  課税対象者

第7条

§1  「課税対象者」とは、課税対象となる取引を行なう全ての者を意味し、一時的にのみそのような取引を行なう者も含むものとする。

§2  脱税、租税回避または不正を防止する目的で、締結国は、法律上は独立していても、金融、経済、組織の面で課税対象者と密接な関係にある者を、実際にその国で登録されているか否かに関わりなく、その国の領土内において登録されている1人の課税対象者として扱うことができる。

 

第5章  課税対象取引

第8条

§1  「通貨取引」とは、ある国の通貨の所有者として、その通貨を他の国の通貨に交換することを言う。締結国は、交換取引に関与する両側の課税対象者が1つの取引を構成しているとみなすことができる。

§2  本条項の適用にあたって、欧州経済通貨同盟の加盟国、または単一の通貨を有する国家は1つの国家と見なされる。

§3  「国家の通貨」とは、一国において法定通貨として使用される通貨(紙幣および硬貨)を言う。ただし収集品は除かれる。「収集品」とは金、銀またはその他の金属貨幣または紙幣で、通常は貨幣としての価値を持つ法定通貨として使用されないものを言う。

§4  「通貨取引」とは、契約に基づく手数料の支払いを伴う通貨の交換を言う。通貨取引において、自分の名前で他の者の代理として行動する者が介在する場合、その者はそれらの通貨を受け取り、提供したとみなされる。

§5 「通貨取引」は、通貨の交換と同等の効果を有する金融証券またはその派生商品(デリバティブ)の取引も意味する。それらの取引には、通貨価値の変動によるリスクを伴う証券の取引や、法定通貨の交換の代替として相互の資産を交換する取引が含まれる。

 

第6章  課税対象となる取引の発生地

第9条

§1  課税対象となる取引の発生地は下記の通りとする。

(1)通貨の譲渡人が事業を設立している場所、または、取引が配賦される固定的な事業所を有している場所、もしくはそのような事業の場所や固定的な事業所が存在しない場合、譲渡人が定住しているか通常居住している場所。

(2)譲渡人がいずれかの締結国の領土の外に事業を設立していて、譲受人が締結国の領域内で事業を設立している場合、通貨の譲受人が事業を設立している場所、または、取引が配賦される固定的な事業所を有している場所、もしくはそのような事業の場所や固定的な事業所が存在しない場合、譲受人が定住しているか通常居住している場所。

(3)譲渡人と譲受人の両方がいずれかの締結国内に事業を設立しておらず、固定的な事業の場所を有しておらず、仲介者がそのような事業または事業の場所を有している場合、仲介者が事業を設立している場所、または、取引が配賦される固定的な事業所を有している場所。

(4)取引の場所が締結国の領土内の上記§(1)から(3)に規定する場所にない場合、支払いまたは決済が行なわれた場所、交渉または成約が行なわれた場所、もしくは取引が記帳されている場所が締結国の領土内にある場合は、そのような場所(ここに記述する順に優先される)。

(5)通貨が第8条§3に規定する意味において取引通貨である締結国の中。

§2  二重課税を防ぐため、締結国は、課税対象取引の場所が第9条§1の()によって規定されている領域の外である場合、他の国においてCTTまたはCTTと同様の税が実効的に課せられている取引を課税対象から除外するものとする。

 

第7章  徴税可能な事象と徴税可能性

10

§1  「徴税可能な事象」とは、その事象によって税が徴収可能となるための法律上の要件が満たされるような事象を言う。

§2  徴税機関が特定の時点において、法律の下で、納税義務を負う者に税を請求する権限を付与されたとき、実際の交換または決済の時期が遅れた場合でも、税は「徴収可能」になる。

§3  支払いが受け取られた時、または取引の決済が行なわれた時に、徴税可能な事象が発生したとみなされ、税が徴収可能となる。

 

第8章  課税対象金額

11

§1  課税対象金額は、譲渡人が譲受人または第三者から受領した、または受領する対価を構成する全ての金額とする。

§2  課税対象金額は、粗取引金額と派生的費用を含むものとする。別途の契約によって規定されている費用は派生的費用とみなされる。

§3  取引が取り消された場合や、取引の全額または一部の支払いが拒否された、または取引が成立した後で価格が減価した場合、課税対象金額はそれに従って、締結国によって設定されている条件の下で削減される。ただし、取引の全額または一部の不払いについて、締結国はこの規則の適用を制限することができる。

 

第9章  税率

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§1  標準税率は、課税対象金額に対する一定の割合に固定されるものとし、[0.025%または0.1%、もしくはその他の合意された税率]とする。

締結国が第8条§12番目の文に規定されているオプションを採用した場合、税率は2倍となる。

§2  §3によって規定されている一定の変動幅を超えた為替レートで取引が行なわれている場合、その取引には最大80%の高い税率が適用される。

§3  [評議会は]各締結国の、最も取引量が多い4つの外国通貨の加重平均から成る通貨バスケットに対する通貨の移動平均に基づいたクローリングペグを基に、(許容される)変動幅を設定する。

§4  課税対象取引に適用される税率は、徴税可能な事象が発生した時点において適用されていた税率とする。

§5  税率が変更される場合、締結国は下記の措置を実施することができる。

    −§1で規定されているケースについて、交換の時点で適用されていた税率を考慮して、調整を行なう。

    −全ての適切な移行措置を採用する。

§6  課税対象者に対する税率が通常の税率から特別の税率へ、またはその逆に移行する場合、締結国は課税対象者がそれによって不当な利益を得たり、不当な損失を被ることがないよう保証するために必要な全ての手段を講じるものとする。

 

10  納税義務者

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§1  課税対象となる取引を行う課税対象者は、締結国の徴税機関に税を納付する義務を有するものとする。締結国はまた、課税対象者でない者に対して、その取引が締結国の通貨の取引を含む場合に、共同で、および個別に税の納税義務を負わせるような規定を設けることができる。

§2  課税対象となる取引が外国に居住する課税対象者によって行われれた場合、締結国は外国に居住する課税対象者以外の第三者によって税が納付されるようにする規定を設けることができる。特に、課税対象取引が納税代理人または他の者のために行われた場合、そのような者をそのような第三者に指名することができる。

§3  課税対象者の少なくとも一方が、交換取引のために金融仲介人に業務を依頼し、その金融仲介人が締結国の所管官庁によって認可されている場合、上記§1および§2は適用されず、税は金融仲介人によって支払われるものとする。この官庁は認可の条件として金融仲介人に支払い能力の証明を要求することもできる。

 

11  「卸売り」市場のレベルでの課税のための特別制度

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締結国において、課税対象者の活動や組織構造のために、課税対象者に通常の徴税方式を適用することが困難である場合、締結国は独自に設定した条件と制限の下で、評議会の承認を条件に、税の引き下げをもたらさない限りにおいて、「卸売り」市場のレベルで課税および徴税する一律課税方式のような単純化された手続きを適用することを選択できるものとする。

 

12  正確な納税申告と不正防止のための措置

15

§1  13条および本条に従って採用される規定に抵触することなく、締結国は正確な課税および徴税を行うために、また、徴税の回避および不正を防止するために必要とみなされるあらゆる措置を導入し、あらゆる義務を課す。これには行政上の罰金および刑事告発が含まれる。

§2  締結国は他の締結国、CTT機構およびその他の機関や関係者と全面的に協力して、税の適切な適用と執行を行なう。

締結国は、1988年1月25日にストラスブルグで締結された「租税の問題における行政的協力に関する条約」に含まれる諸規則を本条約の不可欠な要素とみなし、これらの規則をCTTにのみ適用される必要な変更を加えて適用する。

締結国は、CTTの適用に関する監視と評価と調査のために評議会の提案に基づいて民主的総会によって設立される諸機関と協力することに同意する。

§3  CTT機構は、徴税の遵守、管理、および執行に関する協力のために、諸機関およびその他の関係者との協定を結ぶことができる。

§4  税の納税義務がある全ての者は、各締結国によって決定される期間内に申告書を提出するものとする。締結国は1年を超過しない限りにおいて、独自の期限を設定できる。申告書は、徴税可能となった税額を算出するため、および課税基盤を推定するために必要であると考えられる範囲で、取引の総額を算出するために必要とされる全ての情報を記述しなければならない。

§5  税の納税義務がある全ての者は、申告書を提出する際に税を納付するものとする。ただし、締結国は異なる納付期限を設定したり、仮納入を求めることができる。

§6  締結国は、他の国で事業を設立している課税対象者の代理として納税義務を負っているとみなされる者、または共同で、および個別に納税義務を負っておる者が、申告と納付に関する上記の義務に従うことを保証するために必要な手段を取るものとする。

§7  締結国は課税対象者に対して下記を免除することができる。

      −義務の一部

      −少額の納税

      締結国は、年間の課税対象額が、本条約の発効日時点での交換レートで1万ユーロ以下である課税対象者に対して、税を免除するものとする。

 

13  CTT諮問委員会

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1.  CTT諮問委員会(以下、「委員会」と言う)をここに設立する。

2.  委員会はCTT機構事務局によって任命された18名の専門家によって構成され、うち12名は締結国の代表によって指名され、6名は市民社会の代表によって指名されるものとする。委員会の委員長はCTT機構の代表とする。委員会の事務的業務はCTT機構によって行なわれる。

3.  委員会は、自身の手続き上の規則を採択するものとする。

4.  委員会は、CTTに関する条約の規定の適用に関して、委員長が自身の発議で、または1つの締結国もしくは委員会の委員の5分の1の要請によって提起した問題について検討する。

 

第3篇   世界基金および「世界規模の通貨介入のための基金」

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§1  本条約の目的を追求するため、締結国は評議会の管理の下に世界基金を設立する。

§2  世界基金の基金は、評議会の提案に基づいて民主的総会によって決定されたグローバルな公共福利の提供のための資金として活用されるものとする。

§3  世界基金は、CTT機構の世界的税収の一部を、評議会の決定に従って、投機的圧力に対して通貨交換レートを支持するために「世界規模の通貨介入のための基金」に蓄積するものとする。通貨介入は、締結国の(外貨)準備高が評議会によって設定される水準まで下がった時、または介入を行なわなければ貿易が停止される、もしくは通貨の減価の速度が評議会によって決定される速度に達した時に自動的に開始される。

 

第4編   CTT機構の組織体制

第1章  評議会

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§1  締結国の代表から成る評議会が設立されるものとする。

§2  評議会は本条約の目的と施行を促進する。その目的で、下記を行なうものとする。

(a)本条約の下で評議会に委任されている役割を実行する。

(b)締結国の要請に応じて、本条約の解釈または適用方法を明確化する。

(c)本条約の実施に影響を与える可能性があるあらゆる問題について検討する。

(d)上記のほかに、評議会の役割を実行するために必要と見なされる活動を実行する。

(e)CTT機構の予算を立案する。

§3  §2に規定する役割を実行するにあたって、評議会は政府および非政府団体および関係者と協議することができる。

§4  評議会は議長を選出する。議長は個人としての資格において任務を遂行する。会議は評議会によって決定された間隔で開催される。評議会は自身の規則と手続きを確立するものとする。

§5  §6を条件として、評議会の決定は全会一致によるものとする。そのような決定には、特定の問題または問題の種類について異なる投票規則を採用するという決定も含まれる。締結国は、全会一致を妨げることなく、棄権したり異なる意見を表明することができる。各締結国の議決権は、人口が1000万人未満の場合1票、1000万人以上1億人未満の場合2票、1億人以上の場合3票とする。

§6  ただし、全会一致が得られない場合、下記を適用する。

(a)重要な問題についての決定は、締結国の議決権の3分の2以上の賛成によって行なわれる。

(b)その他の問題についての決定は、出席し、議決に参加した締結国の議決権の単純多数の賛成によって行なわれる。

§7  評議会は事務局によって支援される。

 

第2章  民主的総会

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§1  本条約に基づく民主的総会が設立される。

§2  各国は、民主的選挙に基づいて構成された国会[この基準は評議会が判断する]によって、1人の国家代表と若干名の代議員を指名するものとする。この国会によって指名される代議員の数は、人口が1000万人未満の場合1人、1000万人以上1億人未満の場合3人、1億人以上の場合5人とする。

代議員は代理および顧問を随伴することができる。

本協定に調印したが批准していない国は、民主的総会のオブザーバーとなることができる。

§3  民主的総会は「CTT機構における非政府団体連合」の議長および副議長によって提出された名簿から市民社会の代表を選出するものとし、その人数は§2で規定する代議員の数の75[または別途に合意された数]とする。

CTT機構における非政府団体連合」が設立され、市民社会を代表する。

この連合の議長および2名の副議長は、§4の下で設立される事務局によって、事務局が組織する選挙をもとに指名される。

§4  民主的総会は下記を行なうものとする。

(a)CTT機構の全世界からの税収のグローバルな公共福利への配分を決定する。

(b)CTT機構の予算を検討し決定する。

(c)第26条の下に設立される準備グループの勧告を検討し、(必要に応じて)採択する。

(d)評議会および事務局の報告および活動を検討し、それに関連する適切な措置を取る。

(e)第15条および第21条に従って、協力と紛争に関連する問題を検討する。

(f)上記のほかの、本条約に沿った機能を遂行する。

§5

(a)民主的総会は、民主的総会により3年の任期で選出された1名の議長、2名の副議長および[……名の]事務局員により構成される事務局を置くものとする。

(b)事務局は、特に地域バランスと、国家と市民社会代表の適切なバランスに留意して、全体を代表できる性格を有するものとする。

(c)事務局は必要な限り頻繁に、但し年に1回以上会合を開くものとする。事務局は民主的総会の任務の遂行を支援するものとする。

§6  民主的総会は、その有効性と経済効率を向上させるために、必要に応じて、CTT機構および締結国によって導入されたCTTの適用について監査、評価および調査するための独立的な監視メカニズムなどの補助機関を設立することができる。

§7  評議会の議長またはその代理は、必要に応じて、民主的総会および事務局の会合に参加することができる。

§8  民主的総会はCTT機構の所在地またはジュネーヴの国連施設において毎年1回開催され、必要に応じて特別会合が開催される。本条約において別途に規定される場合を除き、特別会合は事務局の独自の発議によって、または締結国の3分の1の要求によって招集される。

§9  各代議員は1票を持つ。民主的総会および事務局においては、全会一致よる決定に到達するためにあらゆる努力がなされるものとする。全会一致が得られない場合、決定は出席し議決に参加した代議員の単純多数決によってなされるものとする。

§10  CTT機構の費用に対する分担金が未納になっている締結国は、未納額が直前の2年分に及ぶ場合、民主的総会と事務局における議決権を失うものとする。ただし、民主的総会は未納がその締結国のコントロールを超えた条件によるものであると認められる場合、そのような締結国が民主的総会と事務局において議決権を保持することを認めるものとする。

§11  民主的総会は、自身の手続き上の規則を採択するものとする。

§12  民主的総会の公式言語および使用言語は、国連総会の公式言語および使用言語とする。

 

第3章  資金に関する規則

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§1  別途に特別の規定がない限り、評議会と補助機関および民主的総会と事務局の会合に関わる全ての資金上の問題は、本条約と、民主的総会によって採択される「資金に関する規則」によって管理される。

§2  評議会と補助機関および民主的総会と事務局に関わる費用は、CTT機構の基金から支払われる。

§3  評議会と補助機関および民主的総会と事務局を含むCTT機構の費用は、民主的総会によって決定された予算によって規定され、下記の財源から充当される。

(a)第24条§1に基づく検討会議が開催されるまでの期間は、締結国に割り当てられた分担金。

(b)世界基金からの拠出金。

§4  締結国の分担金は、国連がその通常予算のために採用している基準に基き締結国によって合意された基準に従って割り当てられ、この基準の基礎となっている原則に従って調整されるものとする。

§5  §3に抵触することなく、CTT機構は追加的基金として、民主的総会によって採択される基準に従って、政府、国際機関、個人、法人およびその他の法律上の実体からの自発的な献金を受け取り、活用するものとする。

 

第5編  終章

21  紛争の解決

本条約の解釈または適用をめぐって2つ以上の締結国間での係争があり、交渉によって3カ月以内に解決されない場合、その係争は評議会に付託される。評議会は、評議会自身が解決のために尽力するか、または他の紛争解決手段、すなわち民主的総会への付託、国際司法裁判所の規則に基づく同裁判所への付託等をを提案することができる。

 

22  保留

本条約に関して、いかなる保留も認められない。

[本条約のいかなる規定も、1957325日にローマで調印されたヨーロッパ共同体条約に基づく締結国の義務を制限するものと解釈されてはならない。]

 

23  修正

§1  条約の発効から7年を経過したのち、締結国は本条約の修正を提案できる。提案されている修正の文案は全て国連事務総長に提出され、事務総長は速やかにそれを全ての締結国に配布するものとする。

§2  民主的総会は、そのような提案が通知されてから3カ月後以降に開催される次回会合において、出席・議決参加者の多数決によってその提案を取り上げるかどうかを決定する。民主的総会は、提案を総会において直接に処理するか、または、問題の重要性に応じて検討会議を招集する。

§3  民主的総会の会合または検討会議において、全会一致に至らなかった修正案の採択は、締結国の3分の2の賛成を必要とする。

§4  §5で規定する場合を除き、修正は、締結国の8分の7が批准文書または受諾文書を国連事務総長に提出した時点から1年後に、全締結国に対して発効される。

§5  本条約の条項に対するあらゆる修正は、その修正を受諾した締結国に対して、その締結国が批准文書または受諾文書を提出した時点から1年後に発効される。

§6  §4の規定に従って修正が締結国の8分の7によって受諾された場合、修正を受諾しない締結国は、第28条§1の規定にも関わらず、第28条§2に従って、国連事務総長に対して2年間の再考期間を設けた脱退通知を提出することによって、本条約から即時脱退することができる。

§7  国連事務総長は全ての締結国に対し、民主的総会または検討会議の会合において採択された全ての修正を配布するものとする。

§8  本条約の規定に対するもっぱら制度上の問題に関する修正は、§1にも関わらず、締結国により随時提出することができる[訳注:英語の原文は"...notwithstanding article by any Contracting State"となっていましたが、”article 23 §1”の間違いと思われます]提案されている修正の文案は全て国連事務総長または民主的総会によって指名された者に提出され、全ての締結国とその他の民主的総会参加者に速やかに配布されるものとする。

§9  §8に基づく修正で、全会一致に至らなかったものの採択は、民主的総会または検討会議において締結国の3分の2の賛成を必要とする。そのような修正は、民主的総会または、場合によっては検討会議によって採択されてから6カ月後に、全ての締結国に対して発効されるものとする。

 

24  条約の再検討

§1  評議会の調査の結果、締結国が国際通貨市場の[90%]以上を占めるようになった時点で、事務局は本条約に関するあらゆる修正を検討するための検討会議を招集するものとする。検討会議は民主的総会の参加者に対して開かれ、民主的総会と同じ条件の下で開催されるものとする。

§2  その後、随時、締結国の要求に基づき、§1に規定する目的のために、国連事務総長は締結国の過半数の同意の下で検討会議を招集するものとする。

§3  23条の規定は、検討会議で検討される条約修正の採択および発効にも適用される。

 

25  署名、批准、受諾、承認、加盟

  全ての国家は、ニューヨークの国連本部において本条約に署名することができる。

§1  本条約は、署名を行なった諸国による批准、受諾または承認を必要とする。批准、受諾または承認の文書は国連事務総長に提出されるものとする。

§2  全ての国家は本条約に加盟することができる。加盟文書は国連事務総長に提出されるものとする。

 

26  準備グループ

§1  条約が発効するまでの期間、条約の調印国によって構成される準備グループが置かれる。

§2  準備グループは下記を行なうものとする。

(a)条約発効に向けた準備。

(b)CTT機構と、評議会、事務局、民主的総会、「CTT機構における非政府団体連合」の設立の準備。

(c)準備グループは議長を選出する。議長は個人としての資格において任務を遂行する。

§3  準備グループは、自身の規則と手続とを確立する。会合の間隔は準備グループによって決定される。

§4  準備グループは政府、国際機関、個人、法人、他の法律上の実体からの自発的献金を受け取り、活用することができる。準備グループは、年次報告書において基金の受け取りと活用についての情報を公開するものとする。

 

27   発効

§1  本条約は30カ国以上の批准、受諾、承認または加盟文書が国連事務総長に提出され、かつ条約批准国が世界通貨市場の20%以上を占めるようになったことを準備グループが確認した日から60日を経過した後の月の第1日目をもって発効するものとする。

§2  30番目の批准、受諾、承認、または加盟文書が提出された後に本条約の批准、受諾、承認または加盟を行なった各国に対しては、そのような国が批准、受諾、承認または加盟の文書を提出した日から60日を経過した後の月の第1日目をもって発効するものとする。

 

28  脱退

§1  締結国は国連事務総長宛てに書面で通知することによってこの条約から脱退できる。脱退は、通知書の中で2年以上後の日付が指定されていない限り、通知が受理された日付から2年後に発効する。

§2  締結国は本条約から脱退したことを理由に、その国が条約締結国であった期間に本条約に基づいて発生した資金上の義務等の義務を免除されることはないものとする。締結国の脱退は、脱退する国が脱退の発効以前に協力する義務を負っていて、協力を約束していたCTT機構による調査および手続きとの関連におけるCTT機構との協力には影響を及ぼさず、また、脱退の発効以前にすでにCTT機構によって検討されていた問題に関する継続的な検討をいかなる形でも妨げないものとする。

 

29  条約の正文

本条約の原本は、そのアラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、およびスペイン語版がすべて同等に正文として扱われ、国連事務総長に提出され、国連事務総長はその認証入りの副本を全ての国に送付するものとする。

上記の証として、下記の者は、それぞれの政府によって正式に権限を付与されており、本条約に署名した。

 

署名  __________

日付   ________

 


 

[翻訳:ATTAC京都トービン税部会、ATTAC関西グループ]

 

この翻訳は11月のトービン税講演会に間に合わせるための「仮訳」です。原文(英語)にいくつか不明な点があること、翻訳者が金融政策に関連する専門的用語に習熟していないことによる不備を補って早期に正式訳を完成する予定です。誤訳・不適訳等のコメントを歓迎します