ATTACニュースレター日本版2002年第44号
Sand in
the wheels
Weekly newsletter - n°153 –
Wednesday 20 November 2002.
WTOが町にやってきた(シドニー)
THE WTO IS IN TOWN (SYDNEY)
「サンドインザホイール」(週刊)
2002年11月20日号(通巻153)号
WTO非公式閣僚会議に抗議(11/14-15シドニー)
ホームへ
1- 洪水の前に(Before the Deluge)
ヨーロッパ社会フォーラムの参加者が、希望に満ちた雰囲気についての印象と、別のところで立てられている不快な戦争計画についての予感を語る(700語)
2- 体制変革は国内から(Regime Change Begins at Home – Make it Happen)
10月26日土曜日、米国でベトナム戦争以来最大のデモが行われた:ワシントンDCで15万人、サンフランシスコで4万5千人、他の多くの都市で数万人が集まった(3616語)
3- (近未来のお話)大企業が何もかも奪ってしまった時・・・(When Big Biz Has Taken Over Everything)
・・・結局、「企業のアメリカ」は、私たちにとって何がいいことで、何が信頼に足るのかを知っているし、法律や倫理や道徳を守ってきたではないか。「企業のアメリカ」は一貫性と誠実さを備えている-それに匹敵する一貫性と誠実さを備えているのは、自分たちが買収した政治家だけだ。その熱心なリーダーの多くが強欲で、利己主義で、反道徳的だというのは、醜悪な噂をもとにした偏見にすぎない。企業に完全な自由を与える以上にすばらしいことがほかにあるだろうか?(1291語)
4- シドニーでWTOミニ閣僚会議に抗議(WTO in Sidney – Australian Protests)
今週、WTOはシドニーで、25カ国による「非公式」閣僚会議を開催する。この会議は、反グローバリゼーション・デモの歓迎を受けるだろう(1108語)
5- 気候変動と漁業(Fishing in Troubled Waters)
10月25日にニューデリーで開催される国連気候変動会議と平行して、インド
Climate Justiceフォーラム(ICJF) は、10月26日から28日に、ワークショップ、パネル、デモを計画している。この集まりは、国連の会議の重大な欠陥に光を当て、気候変動の影響を被っている世界中の地域社会の声を聞く場を提供するために計画された。このレポートでは、南インドの漁村の人々が、開発による生活や労働への有害な影響について語っている(1493語)
洪水の前に
Before the Deluge
By Dave Renton
[筆者はジャーナリスト、歴史研究家、組合活動家]
その若い女性の隣にいたジャーナリストが、「これは敗北だと思いませんか?」と尋ねた。
「どういう意味かわかりませんが・・・」
「あなた方はこの大規模な会議を組織したけれども、米国では、国連安保理事会が1票の棄権もなしに米国を支持した。戦争が始まろうとしている」
その女性は答えた、「確かにそうだけれど、戦争を止めるためには、街頭で大衆的なデモを行うしか方法はない」。別のデモ参加者(英国の Stop the War 連合の活動家)が口を挟んだ。「国連の表決が示しているのは、社会を分裂させている主要な要因が国家ではなく階級であるということだ」。
ヨーロッパ社会フォーラムは、全ヨーロッパから約6万人の活動家を結集し、反戦デモには百万人近くの人々が参加した。誰かが意識的に計画したわけではないが、左翼は19世紀の古典的な社会民主主義の戦術を再発明した。未来を構想するために巨大な国際会議を開いたのである。当時との唯一の違いは、まだ何も決定されていないということだ。
デモの途中で、ある友人が「左翼がついに復活したのだろうか?」と私に尋ねた。土曜日の巨大なデモを見る限り、そのように思えた。ジョゼ・ボベ氏も参加していて、フィアットの組合リーダーを彼のトラクターに同乗させていた。フランスや北アフリカのATTAC、イタリアの多くの労組など、30カ国以上から人々が集まった。
デモ隊が住宅地に入るとバルコ二ーから手が振られ、中には窓から小さな白い花を投げる女性もいた(私たちのデモが、ファシストからの解放の日を思い出させたのだろう)。会議は活力があり、大部分においてセクト主義に陥ることなく論議が行われた。しかし、この一時的な国際的反資本主義の連合に、参加しなかった人たちもいた。NGOの活動家が私の予想よりも少なかった。アナーキストたちは文化イベントには参加したが、会議にはあまり熱心でなかった。
市長は社会フォーラムの開催を歓迎し、地元美術館の入場料15%引きで迎えた。
イラクに対する米国の戦争を阻止するため、イタリア左翼は人権監視団の派遣を提案した。また全ヨーロッパ一斉デモも提案された。
体制変革は国内から
Regime Change Begins
at Home – Make it Happen
by Felix Kolb
[筆者はATTACドイツの会員、ベルリン大学教授]
10月26日土曜日、米国でベトナム戦争以来最大のデモが行われた:ワシントンDCで15万人、サンフランシスコで4万5千人、他の多くの都市で数万人が集まった
今回のデモの意義は第一に、湾岸戦争時に比して、戦争がはじまる前から組織されたこと。第二に、マスコミがブッシュの戦争政策への批判に大方沈黙するなかにあって成功したこと。最後に、ヨーロッパと異なりアメリカにおいては昨年の9・11から一年以上たった今においても、戦争反対を唱える者は「非国民」や反アメリカのレッテルを貼られる状況が広範に存在するなかで、アメリカの左翼は、最終的にこうした麻痺状態を克服したことがあげられよう。
フロリダ選挙疑惑を経てブッシュが当選した後、京都議定書の無視などアメリカ一国主義に対する懸念が高まったのは周知の通り。今年5月発行のドイツ‘Der Spiegel’誌の国民世論調査によると、93年との比較で、「米国は他国の問題に干渉し過ぎる」=68%→76% 「米国は世界政治の平和と安全の管轄者ではない」=37%→50%「米国の紛争介入は自国利益のため」58%→65%といずれも対米批判が強まった。
英『ガーディアン』紙はまたジョージ・ブッシュ、ディック・チェイ二−、ドナルド・ラムズフィールドが言ったことを鵜呑みにする米国民の体質をヨーロッパ人は見過ごす傾向にることを明らかにしている。
以下は、今回のデモで掲げられた主なスローガンである:
‘WAR WON'T MAKE US SAFER’(戦争で安全は得られない)
‘NO BLOOD FOR OIL’(石油のために血を流すのはやめよう)
‘U.S. EMPIRE: NOT MY AMERICAN
DREAM’(「アメリカ帝国」は私のアメリカンドリームではない)
‘START SEEING IRAQI CHILDREN’(イラクの子供たちに目を向けよう)
‘PEACE IS PATRIOTIC’(平和こそ愛国)
‘WAR BREEDS TERROR’(戦争はテロを育む)
‘REGIME CHANGE BEGINS AT HOME
– VOTE’(体制変革は国内から - 投票しよう)
他方、中間選挙を受け、共和党が議会とホワイトハウスを手中に収めたことは恐怖である。この結果、ブッシュは巨大企業の減税、企業犯罪の延命、環境保護への反動、連邦裁判所の超保守的判事の任命などを打ち出して来るだろう。
ブッシュは民主党一部幹部と手をつなぎ、選挙結果を先制攻撃によるイラク戦争に対する国民投票が支持されたことにすり替えるだろう。
イラク戦争に対する米国民の支持は明らかな嘘の宣伝に基づくもので、実際多くのアメリカ人は、イラクが米本土へのミサイル攻撃を準備し、大型破壊兵器で武装し、間もなく核兵器を所有すると信じ込まされ、さらにはアメリカ人の実に71%がサダム・フセイン本人が9・11事件に直接関与していると思い込んでいる。
ユタ大学での講演に際して、ブッシュ政権の政治戦略家であるKarl Rove 氏は、戦争で無実のイラク民衆20万人が殺される懸念を問われ、「私にとっては9・11にアメリカで死んだ3千人の方が大事だ」と答えた。
メディアに真実と嘘を区分けする自浄作用がない時、アメリカの民主主義は大変な危機にある。
こうした状況で、私たちがまず第一にしなければならないのは、虚像の世界をつくり出すヘゲモニーを壊すことである。
民主党は、戦争反対で現政権に真っ向から反対を掲げられないだけでなく、コンセンサス作りでブッシュに歩み寄り、国家の安全保障から経済問題に至るまで共和党と異なる政策を提案できず、完全な敗北を見た。したがって進歩派は棄権投票か、緑の党への支持に回ったのでる。
実際、大型破壊兵器と全く関係のない機密情報を盗むため国連核査察管をスパイに仕立て、直後に攻撃を開始したのはほかでもない民主党のクリントン政権だったのである。
したがって平和運動は、米国内のタカ派を追い詰め、民主党が戦争を支持できない状況をつくっていくことである。
米国民の世論動向には、単独での対イラク戦争反対が多数を占め、こうした傾向に依拠して運動をつくるべきだ。それがゆえに米国は、国連の決議を必要としたのだ。
国連決議が、米国単独の戦争に反対してきたフランス、ロシア、中国との妥協の結果であると見るのは単純すぎる解釈である。イラクが決議に違反した場合の米国による戦争発動の「自動性」は、非常に曖昧に定義されており、それが戦争へ道を開いていることは明白である。
一方、元国連核査察官のリッター氏は、米国は核査察を妨害し、「対立を誘発するためあらゆることを行う。米国には戦争を欲している人々のグループが存在する」と述べている。
今回の国連決議が支持された背景として考えられるのは1990年、南イエメンは米国主導の決議に反対。米外交官は「これまでの反対票の中で最も高くつくはずだ」と言明したその後、7千万ドルの同国向け援助計画が取りやめられたのである。
ブッシュ政権は、ロシアのチェチェン戦争、中国のチベットおよび台湾問題に口をはさむのを止め常任理事国にも工作をほどこした。
世界第二の石油埋蔵が見積もられるイラクとの間に、フランスやロシアは石油事業契約があるか、戦争後の親米政権は引き続きこの契約を尊重することが保障されたのだ。
米国通商代表部のボブ・ズーリック氏は10月、メキシコの会議で戦争と自由貿易の緊密な関係に言及。オーストラリアの対イラク戦争支持と米国オーストラリア自由貿易協定(FTA)に触れ、「オーストラリアは20世紀、米国のすべての戦争をともにたたかった。我々の強力な支持者であり、ひるがえって貿易代表としての私の仕事(FTA)を支持するものだ」と述べている。
私たちはイラク戦争が、その後、「悪の枢軸」に名指しされた対イラン戦争の引き金をなり得ることを強く懸念している。
その理由として第一にアフガニスタンでの軍事拠点づくりが、イラン戦への準備である証拠も出ている。
第二に英国訪問時に『タイムズ』に答えたイスラエルのシャーロン首相は、バグダッドへの攻撃が終わった後は、「テロのセンター」であるテヘランへの圧力をかける必要があると述べている。
私たちは大変な困難に直面している。米国の対イラク戦争を止めるのは、国でも国連でもなく、すなわち平和運動にすべてがかかっている。戦争を止められる可能性は決して高くないが、そのためあらゆる努力をしなければならない。
米国での平和運動は、戦争がテロから米国民を守ることにはならないと米国民を説得することが第一義となる。そのためタカ派のイデオロギーを孤立化させ、第二に虚構の世界を描くブッシュのヘゲモニーを壊すことである。
今後、私たちは今後、数週間と数ヶ月の間に多くの恐怖と直面するかもしれない。しかしベルトルト・ブレヒトがこう書いているのを思い起こそうと思う。「闘う者は敗れるかもしれない。しかし闘わない者はすでに負けているのだ」
(近未来のお話)
大企業が何もかも奪ってしまった時・・・
When Big Biz Has
Taken Over Everything
by Jerre
Skog
[筆者はスウェーデン人の記者・音楽家・ドイツ在住の評論家]
GATS(サービス貿易一般協定)の新たな悪夢
警察署--「5分前に財布と腕時計を盗まれました」「犯人を捕らえるためクレジット・カードを見せていただけなければ、デポジット200ドルをお収め下さい」。
図書館‐‐「収益性の見込めない『戦争と平和』や『シェイクスピア全集』はもう置いていません。預け入れ額の残りが少なくなっているため『ジョージ・ブッシュの知恵』や『ドナルド・ラムズフィールドの民衆を爆撃して友人を得る方法』をおすすめします」。
川を渡る‐‐「この古い安い橋は横浜に輸出されます。13マイル上流のワールドコムの橋を歩行者2ドルでご利用ください」。
「モンサント・ウルトラ・ファースト・フード店」--「普通の1ドルの水とハイテク使用の中性子・炭化水素を加えた当社の3ドルの水のどちらになさいますか。幼虫の遺伝子を操作したハンバーガーはもうすぐ来ます」。
家の前にレーザージャケットの髭の男二人--「『死の天使』集金会社ですが、私たちのクライアントに対するあなたの未払金29,36ドルを精算するか、足を壊されるか、可愛いお子さんに何か起こるかどうしますか。集金代250ドルをお忘れなく」。
米大統領のテレビ演説--「ウクライナ防衛を私営化することで320億ドルの財政余剰が生まれ、その分を170億ドルを祖国防衛のため、さらに190億ドル以上を最高所得者の減税に回すことができる。アメリカと民主主義のためであり、歳出の水増しという批判は当たらない」。
「ニューアンダーセン監査法人」取締役会‐‐「ザンビア、ドバイ、ベネズエラ、サンマリノの向こう2年間の統治権買収に成功しました。史上ない会計操作が可能になります」。
米国連邦裁判所--「被告・アーサー・グリーンピースが、ガロン当たり平均15マイルを超えて運転した罪を問う。被告を収容し厳しく愛国的な行為を教育するようエクソン・モーバイル裁判所サービスの名において判決を下す」。
ホテルのロビー--「巨大企業のため売り切れだって言うのかい。私と前の彼女がいい時を過ごした時に、『セックス・コープ』の知的所有権を犯すのに5ドルもかからなかったはずだ。分割払いででもできるはずだ」。
家庭は金の成る木--「お母さん。水道の蛇口からコカ・コーラが出てきた」「黙って飲みなさい。一週間に5ガロン飲まなければ、水が買えないのよ。契約はまだ2年間残ってるのよ」。
病院--「あなたは保険もお金も定住所もないのに、私たちは慈悲深い病院で、あまたの背中にささったナイフを抜き、出血を止めてくれるとでも思ってるの。カーペットを血で汚してもお金は請求しないから大丈夫です」。
テレビのニュース--「次期4年間の地方判事の入札は、ブッシュ帝国インクに所属するキャセー・ザ・グレート・ブッシュさん5才が落札しました。スポークスマンによるとキャセーの政策は、キャンディーが食べられない時にかんしゃくを起こす一種の反テロ闘争であると説明しました」。
ジョンへの手紙--「あなたのDNA(遺伝子)コードは、J.D.#672391/974QDとして『ヒューマン・ラボ・カンパニー』の知的所有権が課せられました。今後は、当社コードの精子による出産をお控えいただくか、子供につき1850ドルをお支払いください」
ピッツバーグの郊外--空気代の請求に対して。「あまりに汚いので、呼吸無料区域と勘違いしてました」「コールバーナーズ空気供給会社に代金を納めずどうやって生きていこうと思ってるんですか。ただ自由な国だから呼吸を止めることにも規制はありません」。
地下鉄の中でPA(原子放射性物資)の宣伝に絶叫--「ウワー!。WTO、IMF、世銀が何と言おうとかまうものか。アメリカ合州帝国の生活は悪夢になってしまった」「言葉に気をつけろ。CIAだ」「自国でもスパイをするのかい」「我々は最近、個人管理機関となっているから振る舞いに気をつけないなら死んでもらう」。
そして最後に--『かんおけレンタル会社』は第二四半期の売上37%増を発表。これは故人を再加工してドッグフードにするリサイクル計画導入を受けたものでブランド名は「おじさんとおばさんのペットビスケット」と言う。
・・・結局、「企業のアメリカ」は、私たちにとって何がいいことで、何が信頼に足るのかを知っているし、法律や倫理や道徳を守ってきたではないか。「企業のアメリカ」は一貫性と誠実さを備えている-それに匹敵する一貫性と誠実さを備えているのは、自分たちが買収した政治家だけだ。その熱心なリーダーの多くが強欲で、利己主義で、反道徳的だというのは、醜悪な噂をもとにした偏見にすぎない。企業に完全な自由を与える以上にすばらしいことがほかにあるだろうか?
シドニーでWTOミニ閣僚会議に抗議
WTO in Sidney –
Australian Protests
By James Arvanitakis
[オーストラリアの研究者。NGO AID/WATCH の理事]
バリ島での悲劇、米国のイラク開戦が危ぶまれるなか、25カ国で構成されるWTOの非公式・ミニ閣僚会議がシドニーにやって来た。
ジョン・ハワード首相、ピーター・コステロ財務大臣、保守メディアは抗議する人々に「ラッダイト主義者」、「扇動されている幼稚な者たち」、「グローバル金融システムへの無知」というレッテルを貼った。世銀のジェームズ・ウォルフェンソン総裁は1年前にオーストラリアに来て抗議のデモに歓迎された時、自分もかつては外国からの直接投資に反対していたが、今では「大人になった」と述べた。
私は、かつては経済を研究し、また、金融に携わっていたが、今では人権活動家、反グローバリゼーションの活動家となっている。私はハワードやコステロたちに対して、次のように答えたい。経済学のテキスト第一章をまずは読み直す時であるということ。第一章によると、私たちはすべて合理的な経済的存在で、希望する価格で商品を購入することにより、効用(喜び)を最大限に高める。ここで経済学者が言う「均衡」が成立する。もし世界が多くの小さな企業で構成されていて、それぞれが利潤を最大化するために消費者を獲得しようとすれば、「完全な競争」が成り立つ。このような世界では、見えざる手により、すべての需要が満たされることになる。さらに「比較優位」に基づいて各国の生産が決められる世界が想定されている。そこでは、「水滴効果」によって、富める者はそれだけ金を使うため、富は貧困な国へも流れ落ちるはずである。
しかし第2章で私たちは、市場の失敗と不完全な競争を経験させられる。実際の社会で我々は、恐れ、欲望、衝動によって行動をなし、好きなシャツを買うことすら、エコノミストが想定する「合理的」なものとは言えないのだ。
金融業界を離れ、幾千の人たちの抗議の列に加わった私の決断をどう「合理的」に説明するのだ。
金融機関で成功したある年、私はバックパッカーとして南米を旅する休みを取ったが、美しい大陸が抱える矛盾を払拭しけれずにいた。無数の貧困な人々の上に一握りの富が居座る国は、17世紀以来、さほど進歩のない金鉱の原料生産に特化する経済運営をエコノミストの助言に従って続けた。労働環境は劣悪で、呼吸困難から金鉱労働者の多くは30を前に命を落とし、ここで言う「水滴効果」は、鉱山の底まで走り、ダイナマイトに火をつけ爆発の寸前に逃げて来る12歳の子供に旅行者がチップを与えることだ。
こうした光景を山の陰から目撃した時、私は人生の転機に直面した。通貨と金利の投機家に対して、1日を必死の思いで生きる幾百万の人々の生活が無関係でないことに気づいたのだ。金利上昇に私が喜ぶ背景には、住宅ローンを返済できなくなる者が現れ、私の車の本当のコストはこれら金鉱の犠牲者によって支払われ、同時に途上国が貿易で売れるものは、環境と低賃金労働の二つしかないことが、私には明らかとなってきたのだ。
同時に、テロリストによる爆撃か、「合法的」な戦争によろうと、人の死に変わりがないことに気づいたのだ。
WTOに抗議する人々は、様々な階層をなす人々であり、健康と教育に対する予算以上の額が債務返済に課せられるため、最貧困では日に2万人が死んでいく(避けられるはずなのに)ことを批判する人たちであり、貿易反対ではないが、最低限の人権と環境の基準を守ることを主張し、市場は、人々に奉仕すべきであり、人間性を管理するものでないと願う人たちである。
どんな合理的な人物であろうと市場の「見えざる手」を信じる者は、もはや私の理解を超えている。私はあの山陰に座って以来、「見えざる手」を信じることを止めたのだ。ウォルフェンソン氏には「成長するとはお金以上に貴重なものがあることを理解することだ」と答えよう。ハワード氏とコステロ氏には、私が掲げた経済学のテキスト第二章を読んでもらいたい。
気候変動と漁業
Fishing in Troubled
Waters
By Lalitha
Sridhar
南インド、タミールナドゥ州の漁村 Uroor Olcott
kuppam は10月に気温が上がり、「第二の夏」になる。・・・
この村では近年、漁獲高は減少し、漁猟用ボートを持つ者もたちも、月30ドルの警備の仕事に変えざるを得ない。隣町は集合住宅に高級車が乗り入れる一方、漁村の住民は「魚はいなくなりおじいさんの時代とは違う。政府は金持ちのため海岸の美化に札束をまくが、私たちの村には道路も電気もない」と指摘した。
それでも漁猟を行うには、11月の波高く危険な時に船を出さなくてはならない。インドで最も熟練した猟師は、Kanyakumari地方出身で、深海のサメ漁などで有名だが、彼らも気候変動に壊滅的打撃を受けた。
1998年の国連統計によると、インド洋に面した地方は1平方キロ当たり135人と世界で最も人口密度が高く、漁猟に生活の糧を頼らざるを得ない。
地元のチェンナイ市の・Anna大学の研究者によると、温室ガス排出によるオゾン層破壊のため、この10年間に紫外線量が7%増えた。さらにオランダ、自由大学・環境研究機関は98年2〜6月の間にインド洋海面温度は4〜6度の上昇を見たと公表した。地球温暖化を受けたエルニーニョ現象の南方振動は世界的にも魚食品の生産1千万トンを喪失し、サバ・タラなどの品種は数を失いつつある。
エルニーニョは、インド洋においてもサンゴ礁の白化をもたらし、サンゴ礁近くの漁猟や海草に依存する伝統的漁村の90%に打撃を与えた。
その結果、漁村の漁獲量と質が減少し、住民の健康状態を悪化させ、所得低下はほかの栄養源に対する購買力の喪失をもたらし、飢餓の危機を招いている。
こうした打撃を最も強く受けるのが女性であるが、インドで唯一、Tamil Nadu州は、漁業への女性の参加を保護するフィッシャーウーマン・エクステンション・サービスを79年以来始め、4500人のフィッシャーウーマンにより36の関連女性団体が組織されている。
オランダ自由大学のCesar博士は、この20年間の環境への影響を受けて、伝統的漁村の損失額は2億6千万ドルを下らないとする調査結果を明らかにしている。
Mannar湾岸には42種の植物性プランクトンが生息しインド全国平均を上回る漁業生産を維持したが、サンゴ礁の商業搾取とマングローブ帯の破壊が、漁猟高を減少させている。
Anna大学のNagendran 博士は、沿岸地域統合管理(ICAM) は共通の資源に対する異なるユーザー需要のバランスを取ることが求められ、ほかに生計手段を持たない貧困層による漁獲の問題を含め、小規模な伝統的漁猟の問題を考慮しなくてはならない、と指摘した。
活動家のMani氏は、「気候変動は沿岸漁民の生活に致命的な打撃を与えた。漁民は、地球温暖化や温室効果ガスの排出に理解はないが、世紀に渡り微調整されてきた海洋に対する伝統的な知識は、問題解決のカギを提供するものだ。しかし熟練漁民は、開発プロセスの参加者ではなく犠牲者とされた」と言明した。
■付録
[WTO非公式閣僚会議反対:「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」からの署名よびかけ]
NGO は第5回WTO閣僚会議に向けた排他的ミニ閣僚会議(「グリーンルーム・ミーティング」)反対を呼びかける
11月14-16日、オーストラリアで開催されるミニ閣僚会議はWTOを誤った方向へ導く一歩だ <要約>
全世界の市民社会グループは、WTOに加盟している145カ国とその通商担当閣僚に、透明で最大限の参加が可能な手続きに従い、カンクンでのWTO第5回閣僚会議の準備期間における「非公式」の排他的なミニ閣僚会議や、カンクンにおけるグリーンルーム・ミーティングのような方式を採用するのを拒否するよう訴える。
こうしたミニ閣僚会議やグリーンルーム・ミーティングへの参加は招請された国に限定され、約25カ国がそれに含まれるにすぎないが、これらの代表がすべての加盟国に影響を及ぼすWTOの重要事項を協議するのである。・・・そのような方法は非民主的であり、1国1票というWTOの合意形成システムに反している。
これらの会議は、下記の理由で、根本的な欠陥がある
1)招請される国を選別する基準が不明である
2)議事録がない
3)全加盟国に影響を及ぼす決定が、大半の国が参加していないにもかかわらず、行われる
4)実質的に(不当に)WTOの指導権を握っている特定のグループが重要なWTOの交渉について「コンセンサス」を形成しようとする
・・・
WTOの歴史を見ると、シンガポール(1996)、シアトル(1999)、ドーハ(2001) の閣僚会議の前に、主要先進国の目標を押し通すためにミニ閣僚会議が開催されている。同じことがカンクン閣僚会議に向けて行われようとしている。・・・
今年5月には、15の発展途上国がWTOの手続きの透明化について提案を行ったが、この提案はまだ検討されていない。
ドーハは剥き出しのパワーポリティックスを表現し、不透明かつ排他的な合意形成プロセスが行われた。2回のミニ閣僚会議が、ドーハでのグリーンルーム・ミーティングに継続され、わずか23カ国程度がこれに参加した。・・・多くの諸国は最終文書
に変更を加える機会も与えられなかった。とくに、発展途上国にとって、グリーンルーム・ミーティングですでに決定されていた見解に反対する見解を保持することはほとんど不可能だった。・・・
しかも、中立な「国際官僚」であるはずのWTO書記局スタッフが、しばしば大国の立場を代弁した。たとえば「新イシュー」の導入においてである。最近、危険な前例が導入された - 香港の前WTO大使であったスチュアート・ハービンソンが、「WTO事務局長のChef de Cabinet」として書記局に入ったにもかかわらず、依然として農業交渉の議長に留まっている。これは中立の原則に反している。ハービンソンはドーハ閣僚会議の前には一般評議会の議長として、発展途上国の意見を反映しない宣言を起草した人物である。多くの代表が、彼が農業分野で彼の立場を利用して同じことをすることを憂慮している。
ドーハにおける不当なプロセスと、偏向した書記局の積極的な関与の結果、第5回閣僚会議で「新イシュー」(投資、競争、政府調達)をめぐる交渉が開始される可能性があり、このようなやり方でWTOの議題を拡大することは容認できない。しかし、
カンクン閣僚会議の準備において、同じ手段が使われようとしている。
WTOの協定は、各国の国内政策に大きな影響を及ぼす。・・・したがって、WTOの決定は各加盟国における公開の論争を反映した協議プロセスを通じて行われるべきである。市民社会は、非公式の、選別的なプロセスを非難する。現在、WTOを支配し、そ
の非公式のプロセスによって利益を得ている大国には、民主的意志決定のシステムを作り出す政治的意志がない。
私たちはすべての WTO 加盟国に下記のことをよびかける
1)排他的ミニ閣僚会議やグリーンルーム・ミーティングを拒否すること
2)透明で、最大限の参加が可能なメカニズムを考案すること
3)各委員会の議長が提案する交渉のタタキ台となる文書、および閣僚会議宣言の草
案に、すべての当事者のさまざまな意見を反映させるよう要求すること
4)先進国が発展途上国に対して、個別的に政治的・経済的圧力をかけること通じて
コンセンサスを強要するのをやめること
5)WTOの決定手続きに関するルールを文書化すること、とくに、
-すべての国が、すべての協議について通知され、参加できること
-委員会の議長選出手続きの民主化と議長権限の明確化
-書記局は、ドーハで合意された発展の課題について真剣に取り組むこと
-書記局は中立であることを求められる。書記局スタッフがWTO委員会の議長になる
ことは禁止されるべきである
-パワーポリティックスを監視し、排除するための実効的な民主的同意形成メカニズムを考案すること
シドニーのミニ閣僚会議に招請されている加盟国は以下の通り
ブラジル、カナダ、中国、コロンビア、エジプト、ヨーロッパ委員会、香港、インド、インドネシア、日本、ケニア、韓国、レソト、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ナイジェリア、セネガル、シンガポール、南アフリカ、スイス、タイ、米国 +カリブ海諸国から1カ国