ATTACニュースレター日本版2002年第30号
Sand in
the wheels
Weekly newsletter - n°139 – Wednesday 07
August 2002.
抗議の声を
PROTESTS
「サンドインザホイール」(週刊)
2002年8月7日号(通巻139)号
目次
1- ATTACマドリードが「ナイキパーク」で宣伝活動(From Nikepark to Nikepork )
・・・そこで、私たちはトーナメントの最後の日である6月29日に平和的なデモンストレーションを行うことにした。アタックの活動家と「行動するエコロジスト」のメンバー約10人が、ナイキが集めた入場者に向けてナイキが行っている行動について批判する準備を整えた(737語)
2- 自由ジェノバ!:7・20、再びジェノバで15万人がデモ(Genova libera ! )
この週末に再びジェノバで15万人が平和的なデモを行った。これは単なる記念ではなく、記憶するため、そして未来のための行動だった。人々はG8に対する勝利--G8は今や活力を失い、消滅に向かっていると言えるかもしれない--を確実なものにするという共通の決意を再確認した(1126語)。
3- WTOをめぐる動き(WTO Tidbits )
(1)京都議定書:オーストラリアは調印しない意向、カナダは消極的/(2)2002年のUNCTAD報告書:極貧層が増加/(3)WTOのスパチャイ新事務局長、多国籍企業にルールを適用することを提案/(4)農業交渉は進展なし/(5)自然保護問題:インドネシアが木材輸出を禁止/(6)ノルウエーは捕鯨を再開。鯨が絶滅の危機にある生物種として分類されているにもかかわらず/(7)ジンバブエ、非GMO証明のない米国産トウモロコシの受け取りを拒否/(8)ヨーロッパ議会・環境委員会:より厳しいGMO規制を提案(799語)
4- オニール米財務長官の南米訪問:現実に目をそむけるエコノミストたち(Economists in Denial)
今週予定されているオニール米財務長官の南米訪問は、途上国の経済政策の失敗への不満の増加に対する米国政府の最も新しい対応である。経済政策に関するぶっきらぼうな発言を繰り返しているオニール長官は、この20年間にほとんどの低/中所得国で何が起こったのかを直視するべきだ(745語)。
ATTACマドリードが「ナイキパーク」で宣伝活動
From Nikepark to Nikepork
by ATTAC Madrid
6月後半にナイキの主催によって開催されたフットボール・トーナメントは、市議会の協力も取り付けていた。かつて食肉処理場があった場所の環状道路の外れに、ナイキは若者をひきつけるために、PR用の巨大な施設を建てた。観客のほとんどは未成年者で、親が同伴の人たちもいた。・・・この若者たちはスポーツシューズのために80ユーロを使うことができる--その生産コストは1ユーロ以下である。それは、まず食べていくことが差し迫った問題である世界の貧困地区の子供たちが供給する安い労働力によって可能になっている。
マドリードの貧困地区からも多くの若者たちが、ナイキのブランドが売ろうとしているイメージに引き寄せられてやってきた。私たちは、ナイキが売り込もうとしているイメージが不完全なものであり、あまり知られていない事実によって補足されなければならないと考えた。ATTACの学生グループ(ATTAC-UNIVERSITY)は、南の諸国に住み、労働者の権利も、組合に入る権利も認められず、児童労働が一般化している悲惨な状況にある自由貿易地区で、ナイキのために働いている子供たちに代って抗議の声を上げることを計画した。私たちはトーナメントの最後の日である6月29日に平和的なデモンストレーションを行うことにした。アタックの活動家と「行動するエコロジスト」のメンバー約10人が、ナイキが集めた入場者に向けてナイキが行っている行動について批判する準備を整えた。私たちは会場周辺に、このイベントのポスターをもじったポスターを貼った。
私たちは会場内に入った。1人が警備員に捕まり、荷物を検査され、ビラを取り上げられ、会場外へ出されたが、残った者たちは抗議行動を続行した。
フットボールの試合が開始された直後、5人の若い男女が競技場内へ入って試合を妨害し、ナイキの活動を非難するTシャツを披露した。観衆は驚き、(ナイキパークをもじった)「ナイキポーク」のリーフレットを受け取って当惑した。
この平和的抗議行動に参加した者は警備員によって連れ出され、不法に拘束されたが、数分後に釈放された。
自由ジェノバ!:7・20、再びジェノバで15万人がデモ
Genova libera !
By Laurent Jésover
2002年7月20日、ジェノバで再び15万人がデモに参加した。デモは昨年G8サミットの際には封鎖された「レッドゾーン」を通った。参加者たちは、昨年、警官隊によって白昼に射殺されたカルロスを追悼して、「カルロは生きている」と叫びながら行進した。集まった人々は、ジェノバを解放しただけでなく、各国政府に対して、ジェノバで流された血は無駄でなかったことを示した。イタリアの運動は再び団結した。「ジェノバ社会フォーラム」に集まった労働組合、市民団体、その他の諸組織が再結集したのである。
昨年、ミラノからジェノバにやってきたフランシスコは、今年はセリーナと並んで、エマちゃんを抱いて参加した。彼は昨年のデモで知り合ったセリーナと結ばれ、エマちゃんが生まれた。
昨年は、フランシスコがジェノバに到着した時にすでに警官隊によって隊列が分断され、激しい弾圧が行われていた。今年のデモは平和的で平穏だ。警察は疎らに配置されているだけだ。15万人の人々は流血と暴力と弾圧から解放された自由ジェノバを宣言した。
地方選挙(2002年5月)では、G8後における警察と軍の介入と弾圧に反対した市長・市議が圧倒的な支持で再選され、「ジェノバ社会フォーラム」の2人のメンバーも当選した。国会の調査チームが1年間をかけて行った調査では、イタリアの政治指導者たちによる暴力への関与が明らかになり、警官隊がメディア・センターに乱入した際の口実とされた火炎瓶等の武器が存在しなかった(警官隊が持ち込んだ!)ことが明らかになった。
G8は今年はカナダで再会した。カナダ政府は会場周辺の地域を封鎖し、警察は全ての道を封鎖した。今年のG8の会場は、人里離れた小さな町だった。8大国の首脳が集まったが、彼らは貧困はよくないことだと宣言しただけだった。
ジェノバにあらゆる世代が再結集した。数十の展示が行われ、数千枚の写真やビデオが紹介され、劇や音楽や討論、会議が行われ、1つの世代がその歴史を進み始めた。ファシズムや国家の暴力や自由のための闘争について、新聞か歴史の教科書でしか知らなかった世代が、町や通りを取り戻そうと闘い始めている。
WTOをめぐる動き
WTO Tidbits
By the Attac work group on international treaties, Marseilles
(1)京都議定書:オーストラリアは調印しない意向
理由は、条約が途上国と米国を除外しているということ。また、ハワード首相は、条約の批准が雇用のためのコストと企業負担を増やし、環境汚染を引き起こしている企業が途上国へ移転することになると述べている。
カナダは条約を批准していない数少ない主要工業国の1つだ。12月までその決定が行われるだろう。しかしカナダは最近、クリーンエネルギーの輸出をこの問題に関する第8回の国連会議の議題に上げることに成功した。これはカナダがもとの条約に関する交渉を再開させる意志を示すものと考えられる。ロシアはこの提案を支持した。条約を実施段階へ進めるためには、少なくともEU, 日本、ロシア、カナダまたはポーランドの批准が必要となる。
(2)2002年のUNCTAD報告書:過去30年間、後発発展途上国(LDC)で極貧が増加
このレポート(2002年6月に刊行)によると、1日1ドル以下で生活する人の数は2015年までに4億2000万人になる。現在、後発発展途上国でこの数は3億7,000万人であり、過去30年間で2倍になった。レポートは、これらの諸国の一次産品輸出への過度の依存と、過重な債務が最大の原因であるとしている。
(3)WTOのスパチャイ新事務局長、多国籍企業に新しい行動基準を要求
9月1日にマイク・ムーア氏に代ってWTOの事務局長に就任するスパチャイ氏は各国政府と多国籍企業に不意討ちを食らわせた。6月8日にロンドンで開催された「世界開発運動」(WDM)の年次総会で、スパチャイ氏は企業がロビー活動を通じて国際貿易に影響を与えるのを抑制するために、新しい行動基準を採択することを提案した。彼は「われわれは国家が従わなければならない協定やルールを作ろうとしているが、企業にたいするそのような協定やルールがない」と指摘した。多くの市民組織がこれを支持している。
(4)農業交渉は進展なし
多くの国が輸出競争に関連して、追加的なコミットメント(約束)を提示した。しかし、この分野に主要な影響力をもつEU、米国、オーストラリアは、もっと情報が必要だとして反対提案を示していない。現在の交渉は、通常の方法ではなく、文書による提案なしに、口頭で行われている。農業委員会の議長であるハービンソン氏がスパチャイ次期WTO事務局長の下での理事会議長に指名されたことから、後任の農業委員会議長が決まるまで委員会の作業がさらに停滞する可能性がある。
(5)インドネシアが木材輸出を禁止
2001年10月以来、一時的な木材輸出禁止が導入されたが、今回の禁止は永続的なものである。タイは1989年以来、木材輸出を禁止している。しかし、不法輸出がこの地域における大きな問題になっている。
(6)ノルウエーは捕鯨を再開
捕鯨再開は鯨が「絶滅の危機にある生物種の保護に関する条約」の対象となっているという事実を無視している。ノルウエー,日本、アイスランドは、この区分を受け入れていない。
(7)ジンバブエ、非GMO(遺伝子組換え作物)証明のない米国産トウモロコシの受け取りを拒否
ジンバブエは、8000 トンの受け取りを拒否した。この理由による受け取り拒否は2回目である。受け取り拒否されたトウモロコシはマラウィ、モザンビーク、ザンビアに送られる。このトウモロコシは、4月以降に発生した南部アフリカにおける「食糧危機」への緊急支援の一環である。この危機の中で、米国からのジンバブエに対する食糧支援は4万3,000トンに達している。
(8)ヨーロッパ議会・環境委員会、より厳しいGMO規制を提案
委員会は、GMOを含む食品および飼料を、非GMO食品・飼料と明確に区別する新しいルールを提案した。同委員会は、GMOによって飼育した動物の肉、卵、ミルクのラベル表示を拡大することを可決した。ヨーロッパ議会でのGMOラベル表示に関する採決は7月に行われる。
オニール米財務長官の南米訪問:現実に目をそむけるエコノミストたち
Economists in Denial
By Mark Weisbrot(Co-director of the Center for
Economic and Policy Research)
今週予定されているオニール米財務長官の南米訪問は、途上国の経済政策の失敗への不満の増加に対する米国政府の最も新しい対応である。経済政策に関するぶっきらぼうな発言を繰り返しているオニール長官は、この20年間にほとんどの低/中所得国で何が起こったのかを直視するべきだ。
ラテンアメリカの一人当たりの所得は1960年から1980年までの間に75%増えた。1980 年から2000年までは7%の増、つまりほとんど増えていない。アフリカはもっと酷く、過去20年間で一人当たりの所得は15%の減少であった。例外は中国だ。中国は過去20年間世界の歴史上最も急激な成長を遂げた。しかし、その中国を含めても、途上国全体では、この20年間の成長は、その前の20年間の成長の半分でしかない。
米国の政治指導者がこのような経済の大失敗を認める必要を感じなかったのは、単なる歴史的偶然だ。2年半前のシアトルのデモによって世界的に登場した運動は、別の問題に焦点を当てていた。デモ参加者とその組織は、WTOや世銀、IMFのような非民主的組織による政府の権力の侵害に焦点を当てた。このような機関や企業による無慈悲なグローバリゼーションがもたらす環境破壊に反対した。また、国内外での所得の分配の不公平さが増していることにも注意を向けた。
これらはすべて、重要な論点である。しかし、経済成長もまた1つの問題である。過去20年間に貧困が増加したり、貧困の緩和がスローダウンした国々を見てみると、その原因は所得と富の配分の変化ではなく、成長の鈍化だ。
この20年間、寿命、乳幼児死亡率、識字率、教育などの社会指標の改善が大幅にスローダウンしている。これは経済成長が急激に鈍化した時期に起きることだ。だから、ここで述べているのは無味乾燥な統計についてではなく、抑圧されてきた何億人もの人々の生命と健康の問題である。
もちろん、このような長期的で、広い範囲に及ぶ経済的失敗の原因を特定するのは難しいが、いくつかの主要な原因を指摘することはできる。高金利政策(多くの場合、IMFによって強制された)は、多くの途上国の成長をスローダウンさせた。この傾向が先進国の中央銀行によりさらに拍車をかけられ、世界的な成長鈍化を通じて途上国の経済成長をさらに鈍化させた。
1980年代より前は、低/中所得国では独自の発展戦略を持っていることが一般的だった。それが画一的な原則--国際貿易と金融のための市場開放、国有企業の民営化、その他の規制緩和--に取って代わられた。このような「ワシントン・コンセンサス」に基づく政策は実際にはうまくいかず、近年では多くの経済的災禍をもたらしている。1998年のアジア経済危機は、海外からの「ホットマネー」に対する市場開放という思慮に欠ける政策によってもたらされ、メキシコ、ロシア、ブラジル、アルゼンチンの経済危機も、グローバルな経済成長に打撃を与えた。
ワシントン・コンセンサスを推進してきた人々(世界銀行など)は、都合のいい事例を探して、中国とベトナムをグローバリゼーションの成功例として持ち上げている。しかし、中国の金融システムは基本的には国有であり、国内市場はかなりの程度保護されており、資本の流入は厳しく制限されている。ベトナムでも、大部分の投資は国家によって行われている。ワシントン・コンセンサスを称揚してきたエコノミストたちは、自分たちの新自由主義モデルは失敗したが、共産主義政権は大きな成果を上げているという議論の皮肉に気がついていないようだ。
オニールが率いる財務省は、ワシントン・コンセンサスのルールを強制してきた最も強力な機関(IMF、世界銀行)を支配している。米国政府はWTOでも最も大きな影響力を持っている。長期にわたる経済不振は、彼らの会議室のまん中にすわっている像である。そして彼らはそれから目を背けようとしている。しかし、経済の失敗の原因に関する誠実な議論が始められなければならない。