ATTACニュースレター日本版2002年第29

Sand in the wheels

 

 Weekly newsletter - Wednesday 31/07/02

 

 企業の犯罪

CORPORATE CRIMES

 

「サンドインザホイール」(週刊)

2002731日号(通巻138)号

 

ジョゼ・ボベさん歓迎イベント(10/23~31)を全国で成功させよう

 

関西:8月19日()午後6時:「フランスの学生は今・・・」ニコラ・デュボアさんを招いて交流会

京都:824()午後7時「日本のODAとアジア」

目次

1- 労働運動と反グローバリゼーション運動の再組織化How Labor Can Rebuild the Anti-Globalization Movement

「レイバーノーツ」誌は月の各号で、世界規模の公正のための運動あるいは「反グローバリゼーション運動」と労働運動の提携がどのようにして可能かという問題をめぐる論争を掲載してきたhttp://www.labornotes.org/を参照)。米国では、1999年のシアトルにおけるWTO反対のデモ以降、この提携はうまくいっていないように見える。カナダでは、労働運動はもっと積極的に関わってきた。カナダ自動車労働組合の職員であるヘルマン・ローゼンフェルド氏がオンタリオにおける状況について報告する(990)

2- テーマ別社会フォーラム(アルゼンチンにて開催)への招請状(An Invitation to the Thematic Social Forum in Argentina

このイニシアチブは、ブラジル・ポルトアレグレで開催された過去2回の世界社会フォーラムの中で発展させられた精神を基礎にしており、「もう1つの世界は可能である」と主張する新自由主義的グローバリゼーション反対の地域的および国際的運動によって発展させられてきた経験の継続である(323)

3- 持続可能な発展に関する世界サミット:通商と金融のデッドロックWorld Summit on Sustainable Development : deadlock on trade and finance)

持続可能な発展に関する世界サミット(WSSD、「リオ+10」)の最後の準備委員会はデッドロックに終わった。それは1992年のリオ・サミットをめぐって行われた論争に戻った。10 年が経過して、「南」は当時と同じように「高原闘争」を続けているが、坂は一層険しくなっている。ヨハネスブルグ・サミットでは、環境保護と自然資源の持続可能な利用に関する技術的問題よりも、こうした目的を助けるため(あるいは妨げるため)の通商と金融のメカニズムに関心が集まるかも知れない(2432)

4- 資本主義の危機と企業犯罪Capitalist Crisis and Corporate Crime)

かつてはウォールストリートの寵児だった企業の名声の失墜が続いており、いつ終わるかもわからない。しかし、1つだけ確かなことは、グローバル資本主義の生産・流通・交換の支配的システムとしての威信は、すでにエンロンの倒産よりも前から危うくなっていたが、このシステムの中心地においてさえ、いっそう侵食されるだろうということである(1409)

5- 企業犯罪に立ち向かうHello Criminals)

テキサス、ナイジェリア、エクアドル、そしてインドの女性たちは私たちに基本的な真実を教えている。話したり書いたりすることはできるが、誰が聞いてくれるだろう? しかし、勇気を出して行動すれば、ものごとは動き始める。立ち上がろう! 外へ出よう! 押し戻そう!(843).


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労働運動と反グローバリゼーション運動の再組織化

How Labor Can Rebuild the Anti-Globalization Movement

by Herman Rosenfeld

(「レイバーノーツ」誌より)

 

北米の反グローバリゼーション運動は9月11日のテロ襲撃以降、大きく後退した。抗議運動の規模が小さくなったし、労働組合の参加はごくわずかになった。では、労働組合が運動から距離を置いてきたのは何故だろうか?

労働運動の活動家たちは常に、反グローバリゼーション運動の中のアナーキストの傾向と論争してきた。多数の勤労大衆を動員するためには暴力的行動はマイナスであるという観点からである。9・11によって、多くの労働組合リーダーたちは暴力を容認するような運動に参加することにますます消極的になった。また、9・11以降、人々は反テロリストの法律や警察の弾圧をいっそう恐れるようになった。

労働組合運動と反グローバリゼーション運動にはいくつかの違いがあった。コンセンサス(合意)による意思決定と多数決、貿易の問題に対する態度などである。

 

カナダの労働組合は反グローバリゼーション運動に一定の貢献をしてきた。特に、CAW(カナダ自動車労働組合)は2000年のOAS(米州機構)の会議や2001年のケベックでのFTAA(米州自由貿易地域)サミットに反対する国境を越えた運動の組織化にオルグを派遣した。そのような活動を通じて組合員の意識を変えていった。

労働組合と組合員たちはグローバリゼーションに関連する一連の攻撃を受けてきた。労働運動は反グローバリゼーション運動に新しい推進力を与える可能性を持っている。実際、6年前にもCAW, CUPE(公務員労組), CUPW (郵便労働者)がオンタリオ州で保守政府に対して、一連の一日ゼネストを牽引した。いくつかの労働組合は反グローバリゼーション運動の団体と共同でのプロジェクトを進めてきた。「チームスターと亀」の連合(組合活動家と環境運動、社会的公正のための運動が結集している)、「戦争に反対する労働組合員のネットワーク」、「移動ピケット」(闘争中の労働者や移住労働者、ホームレスの人々を支援している)、ウッドストックとウィンザーでの労働者のコミュニティー新聞の発行。こうした努力が、労働組合のリーダーに反グローバリゼーションの運動の新しい章を開くための運動の組織化を促すことを期待したい。



テーマ別社会フォーラム(アルゼンチンにて開催)への招請状

An Invitation to the Thematic Social Forum in Argentina

 

アルゼンチンの危機とグローバルな運動の課題

アルゼンチン世界社会フォーラムWSF)組織委員会は、8月22−25日、次のWSFの準備のための会議をブエノスアイレスで開催する。

このイニシアチブは、ブラジル・ポルトアレグレで開催された過去2回の世界社会フォーラムの中で発展させられた精神を基礎にしており、「もう1つの世界は可能である」と主張する新自由主義的グローバリゼーション反対の地域的および国際的運動によって発展させられてきた経験の継続である。

アルゼンチンのすべての草の根運動団体に参加を呼びかける。詳しい情報は http://forosocialargentino.netex.com.ar/(スペイン語)を参照されたい。




持続可能な発展に関する世界サミット:通商と金融のデッドロック

World Summit on Sustainable Development : deadlock on trade and finance

By Celine Tan

持続可能な発展に関する世界サミット(WSSD)は8月26日から9月4日まで、南アフリカ・ヨハネスブルグで開催される。この半年間、実施計画草案を準備するための会合がニューヨークとバリで開催された。

4回(最終)準備委員会の結果が示すことは、WSSD では従来からの環境問題のほかに、通商と金融の問題が重要な問題となっているということだ。ヨハネスブルグ・サミットでは、環境保護と自然資源の持続可能な利用に関する技術的問題よりも、こうした目的を助けるため(あるいは妨げるため)の通商と金融のメカニズムに関心が集まるかも知れない。

バリで行われた交渉が行き詰まったのは、現在のグローバリゼーションのパターンと、それが持続可能な発展に及ぼす影響に関わる問題についての不一致のためだった。米国を先頭とする Juscanz グループ (日、米、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)は、Japan, US, Canada, Australia and New Zealand)、グローバリゼーションと持続可能な発展の関係と、債務、資金の拠出、公正な貿易についての具体的行動について明記した項目を拒否した。

通商と金融に関わっているグループがWSSDのプロセスを監視することが決定的に重要になっている。WSSD の行動計画はWTOのような拘束力は持たないが、すべての国連加盟国の政治的意思と決意を表現するものである。

また、ヨハネスブルグ・サミットにおける「市場ベース」の、「民間セクターによる資金調達」の強調が、世銀やIMFの新自由主義政策の反映であることを注視する必要がある。「民間と政府のパートナーシップ」への重点の移動は、「先進国」側の責任放棄を示している。

こうして、ヨハネスブルグ・サミットは北側諸国の政治的意志をテストするものとなるだろう。

議長提案のうち、合意に達していない項目の大部分は第4章「グローバル化する世界における持続可能な発展」と第9章「実施手段」の中のパラグラフである。これらのパラグラフと交渉プロセスの報告を見れば、南北の対立点がわかる。・・・

77カ国グループ(G77)と中国が提出した提案は、国際的金融体制のシステム上の欠陥を取り上げている。G77は、これらの問題と環境問題の解決と切り離すべきでないと主張している。Juscanz グループはこの主張に強く反発している。G77は、モンテレー(「開発のための金融」会議)では重要な問題で簡単に妥協しすぎたと考えており、より進歩的で包括的な行動計画を求めている。ノルウェーは、債務問題とODAについてのG77の提案に最も同調的であり、EUG77との妥協を追求している。しかし、EUJuscanzグループの違いを過大評価してはならない。EU諸国はWTOのさまざまな問題をめぐって南の諸国と対立する立場を取ってきた。・・・

 

WSSDに対する企業の影響力

大企業は、「持続可能な発展のためのビジネス・アクション」(BASD)を通じて、リオ・サミットの際に「持続可能な発展のためのビジネス評議会」(BCSD)が果たした役割を再現しようとしている。彼らは、WSSD の公式の合意書に彼らの活動を規制するメカニズムを組み込むのを阻止しようとしているだけでなく、水、エネルギー、健康、農業、生物多様性などの重要な分野で自分たちを有力なパートナーとして押し出そうとしている。また、世界銀行は現在、民間部門および農村の開発戦略を準備中であり、これらの戦略は国家の役割を小さくし、民間の参加を促すことを目的としている。

「持続可能な発展」という課題が企業の利益によってハイジャックされる危険がある。こうした動きを監視することが重要である。

また、「先進国」が国際的な資金協力よりも2国間のODAを重視することも懸念される。

 

南北対立が再び前面に

バリで開催された準備委員会の過程と結果は、問題がリオ・サミットをめぐって行われた論争に戻ったことを示している。リオで、「発展途上国」は植民地主義によって負わされた歴史的負債と北側の工業化に伴う資源の収奪について訴えた。・・・10 年が経過して、「南」は当時と同じように「高原闘争」を続けているが、坂は一層険しくなっている。一部の「先進国」(とくに米国)は、リオからの後退を望んでいる。

貧困軽減、自然保護、環境の持続可能性、経済・社会的発展は、政府に委ねるべきことでもないし、企業のロビイストに委ねるべきことでもない。市民社会の諸グループが包括的な行動計画のために監視、提言、ロビー活動を行わなければなりません。

(第三世界ネットワークhttp://www.twnside.org.sg/



資本主義の危機と企業犯罪

Capitalist Crisis and Corporate Crime

By Walden Bello

 

かつてはウォールストリートの寵児だった企業の名声の失墜が続いており、いつ終わるかもわからない。しかし、1つだけ確かなことは、グローバル資本主義の生産・流通・交換の支配的システムとしての威信は、すでにエンロンの倒産よりも前から危うくなっていたが、このシステムの中心地においてさえ、いっそう侵食されるだろうということである。

株価の過大評価と企業の不正は「ニューエコノミー」の基本的な特徴だった。この背景には1980年代から90年代のグローバル資本主義の力学の2つの流れがあった:金融資本が主導したことと、実体経済における過剰生産・過剰設備の危機である。この時期における金融市場の規制緩和は、法外な投機活動の活発化をもたらした。伝統的な株式や債権の取引に加えて、先物、スワップ、オプションなどのデリバティブが登場した。これは資産の取引から利益を得るのでなく、当該の資産のリスク予想に対する投機から利益を得るということである。

投機セクターには豊富なキャッシュがある一方(その多くの部分は米国外から流入した)、産業セクターは資金を留保利益にではなく、ますます借入金と株式の売却に依存するようになった。これは国際的な投資ブームを呼び、すさまじい過剰生産能力をもたらした。米国のコンピューター産業の生産能力は年40%の割合で拡大し、需要の伸びを大幅に上回った。世界の自動車生産は年7010万台に達したが、販売できたのはその74%にすぎなかった。光ファーバーネットワークは容量のわずか2.5%しか利用されていない。

米国企業の収益の伸びは1997年で止った。それに伴って企業合併・買収の波が起こった。その動機はさまざまであり、競争をなくすため、あるいは「シナージー」(相乗効果)と呼ばれる不思議な効果による収益性の向上のため等だった。最も大規模なものとしては、ダイムラーベンツ・クライスラー・三菱の提携、ルノーによる日産の買収、モービルとエクソンの合併、航空におけるスターアライアンス、AOL・タイムワーナーの提携、ワールドコムによる長距離電話会社MCIの買収などの例があげられる。多くの合併はコストを整理したが、収益性は上がらなかった。業界再編が進まなかった分野では、競争の激化のため、巨大企業の倒産が起こった(小売行におけるKマートなど)。企業は生存のためにますます株式市場における資金調達に依存するようになり、そこでは投資と商業金融の両方を手がける銀行による支配が強まった。ハイテク産業を中心に、「将来の可能性」への「創造的な投資」がもてはやされた。実際の資産の裏づけなしに、幻想が売買された。その結果。ハイテク部門を中心に株価が途方もなく上昇した。たとえば、Amazon.Comは、まだ収益が出ていない段階で、株価が上がりつづけた。これはストック・オプション(株式購入権)を持つベンチャー企業の役員に「濡れ手で泡」の利益をもたらした。

しかし、幻想への投資の効果はそこまでだった。2000年にはバブルが崩壊し、4.6兆ドルが失われた(これは米国のGDPの半分であり、1987年の株価崩壊で失われた金額の4倍である)。 ハイテク株のブームで人為的に引き伸ばされた好況の後、米国経済は2001年に景気後退に入った。

結局、企業は貸借対照表で収益が費用を上回っていることが示されない限り、投資家を持続的に引きつけることはできないという鉄則を逃れることはできなかった。そこでエンロンやワールドコムのような不正経理が横行することとなった。そして、目先の利く企業家の仕事は、いつ手持ちの株を売って、逃げ出し、司法の追及を逃れるかを考えることだった。

エンロンの最高経営責任者(CEO)の Jeffrey Skilling は、倒産の数カ月前に辞任し、ストック・オプションの売却によって11200万ドルを手にした。これからもますます経営者の犯罪が明らかになるだろう。しかし、問題の中心は規制が撤廃され、金融セクターによって支配されているグローバル経済のシステムにあるのであり、「企業家の良心」や「コーポレート・ガバナンス(企業統治)」にあるのではない。

経済の構造的危機の深まりと、新自由主義的資本主義の正統性の危機は、将来の激動を約束している。



企業犯罪に立ち向かう

Hello Criminals

By Russell Mokhiber and Robert Weissman

 

ナイジェリアのエスクラボスで、600人の女性が、シェブロン・テキサコの環境破壊と住民無視への怒りを表すため、送油施設を占拠した。この行動に参加したフェリカ・イトセロさん(67歳)によると、シェブロンは石油の漏出が発生しても、清浄化や補償を行わない、シェブロンが使っている化学薬品によって住宅の屋根が破損している、川の水が汚染され、魚が死んでいる。

この女性たちの行動は、警察による弾圧に抗して続けられている。詳しくは http://www.moles.org/(英語、スペイン語)を参照されたい。

ウェストバージニア州で、石炭採掘企業が州議会で新しい法律を制定させるために画策している。これは石炭輸送トラックの積載量の制限をこれまでの8万ポンド(約3トン)から12万ポンド(約4.5トン)に引き上げるための法律である。これは道路の安全に関わる問題である。同州で発行されている「チャールストン・ガゼッタ」紙は、ナイジェリアでの抗議行動についての報道の中で「(ナイジェリアにおける)富の収奪のパターン、つまり植民地主義のエッセンスは、時代遅れの石炭採掘企業がウェストバージニア州の住民に対してやっている扱いを思い起こさせる」と指摘している。

 

先週、ジュリア・バタフライ・ヒルさんがエクアドルで逮捕され、国外追放された。ヒルさんは自然保護地区に石油パイプラインを建設するという計画に抗議していた。この計画には地元の先住民たちが強く反対している。詳しくはhttp://www.amazonwatch.org/を参照されたい。

 

ダイアン・ウィルソンさん(4世代にわたってエビ漁に従事している)はテキサス州シードリフトにあるユニオン・カーバイドの化学工場の前で、インド・ボパールの住民に連帯するハンストを行っている。

1999年にダウケミカル社がユニオン・カーバイド社を買収したが、ダウケミカルの工場はウィルソンさんの住む地域の最大の環境汚染源である。ウィルソンさんはボパールの事故のあとボパールを訪れ、ショックを受けた。彼女はダウケミカル社がユニオン・カーバイド社のCEOの刑事責任を問わないように圧力を行使したことや、15万人の犠牲者に対して支払われた補償額がわずか500ドルだったことに憤慨した。彼女はダウケミカル社による海の汚染に対して15年間にわたって闘いつづけている。会社側の報復は凄惨だった。彼女の飼い犬が殺された。家族が銃撃された。エビ漁のための舟が2度にわたって沈められた。しかし、彼女は闘いつづけている。詳しくは、http://www.bhopal.net/を参照されたい。

 

ウィルソンさんのハンストは、68日からニューデリーで2人の女性が始めたハンストに続くものだ。2人の女性、タラ・バイさん(35歳)とラシダ・バイさん(46歳)はボパールの事故の生存者である。彼女たちは、支援活動家のサティナタ・サランギさん(48)とともに、国会前で、政府がボパール事件の公正な裁判を保証することを要求してハンストを開始した。2人の女性はハンスト開始から18日後に、集会中に倒れて病院へ運ばれた。

 

テキサス、ナイジェリア、エクアドル、そしてインドの女性たちは私たちに基本的な真実を教えている。話したり書いたりすることはできるが、誰が聞いてくれるだろう? しかし、勇気を出して行動すれば、ものごとは動き始める。立ち上がろう! 外へ出よう! 押し戻そう!

[Russell Mokhiber はワシントンDCで発行されている「Corporate Crime Reporter(企業犯罪レポート)」の編集者、Robert Weissman はワシントンDCで発行されている「Multinational Monitor(多国籍企業モニター」、 http://www.multinationalmonitor.org/の編集者]