ハワイ先住民のお墓の上に
JAL出資の高級ゴルフリゾートが建設中

ハーモニクスライフセンター主宰 きくちゆみ

●お墓の上にゴルフ場?!

 もしもあなたの祖先のお墓がブルドーザーで壊され、その上に金持ちのための高級ゴルフクラブと高級分譲地が外国資本によって作られたら、どんな気持ちがするでしょうか。またその工事の結果、毎日魚介類や海草を取っていた海が土砂で埋まってしまい、先祖代々続けてきた伝統的な暮らしが続けられなくなってしまったら…。日々海の恵みを採取して家族で食べる当たり前の素朴な暮らしが永遠に奪われたら、あなたならどうしますか。
 私たちは普段鴨川の山中で自給的な暮らしをしていますが、この冬の農閑期休暇を利用して訪れたハワイで、まさにこんなことが起こっているのを目の当たりにました。しかも私もよく利用している日本航空(JAL)がその開発の主な投資家だったので大変ショックでした。このことを日本でも知らせなければ、と強く感じながら帰国した次第です。
 ハワイ島のコナを走る幹線道路脇で「ホクリア」という看板を初めて見たときは、ハワイの生んだ現代のヒーロー・星の航海士ナイノア・トンプソン(私の関わるJEANで彼を招いてイベントをしました)の船「ホクレア」と勘違いし、ここにホクレア号が泊めてあるのかと思いました。
 ところが「ホクレア」と「ホクリア」は一字違いですが全く無関係で、後者は 地元住民と環境団体とハワイ先住民団体が反対する高級ゴルフリゾート大開発の 名前でした。

●法律違反が発覚し「工事一時停止命令」下る

 たまたま訪れたハワイ島の友人の家で「ホクリア開発」に反対する地元住民に出会い、詳しい話を聞くことができました。この計画は1990年頃から日本航空と米国アリゾナ州の開発業者・レッドヒル1250(ライルアンダーソン社長)がパートナーとなっている「オーシャンサイド1250パートナーズ」という現地法人によって進められてきたものですが、当初は「ホクカノプロジェクト」と呼ばれていました。
 1994年頃、この計画がハワイ先住民の聖地を荒らすことと、海への環境破壊を理由に地元住民から訴訟を提起され、日本のゴルフ場問題グローバルネットワークや国際環境団体のGAG'M(ゴルフ反対グローバルムーブメント)なども支援していました。その結果計画はなかなか進みませんでしたが、開発側は工事にあたっては遺跡や環境の破壊は引き起こさないことを約束し、やっと1998年末認可が下りました。しかし実際工事が始まると、その約束は次々と破られていったのです。それまでは環境団体や地元住民だけが反対していたのが、先住民の祖先の遺骨が実際に掘り起こされ潰されていくのを現場で働いていた多くの先住民が目撃し、先住民と環境団体が合体して「ケオプカオハナ」という団体が生まれ、現在ではいくつかの訴訟を含む大きな反対運動になっています。
 1994年、1996年にもハワイから反対運動の代表者が来日し、この計画の中止を求めて記者会見を開いたり、JALに申し入れをしたりしましたが、その時はまだ着工前ですので反対派の主張は「懸念」に過ぎませんでした。それが実際工事が始まった今、現実となってしまったのです。すなわち、造成工事による海への土壌流出、それによる珊瑚礁へのダメージ、沿岸採取生活者の権利剥奪、先住民の墓や遺跡の破壊です。
 とくにハワイの先住民たちは、先祖の墓が壊され、遺骨がブルドーザーによって掘り起こされ、バラバラにされたり、運び去られたことに深い悲しみを感じています。彼らの考えでは、遺骨を元あった場所から動かしてしまうと、その祖先の魂は大自然(アイナ)に戻れなくなり、子孫たちにとってもその魂が失われてしまうことを意味するからです。
 重要遺跡や遺骨の度重なる破壊行為により、3月25日現在「ホクリア開発」に対して「工事一時停止命令(TRO)」がハワイ州の裁判所から出ています。

重要遺跡の破壊の他に環境破壊も

 また、開発が行われている土地の下にあるケアラケクア湾岸は世界有数の透明度を誇る「クラスAA」(最高のランキング)に分類される海域ですが、この工事が始まってから、大雨の度に他所から運び込まれた大量の土砂が流出するようになり、一時は視界が30センチまで落ちてしまいました。その後、土砂は海底に沈んで珊瑚礁を覆い、多くの珊瑚礁が既に死に始めているのを専門家が調査発表しています(土砂流出によるサンゴへの影響--公式調査報告ページ参照) 。
 日本を代表する航空会社が海外に出掛けていって、現地人のお墓の上にゴルフ場を作る感覚を私は理解できません。3月26日、JAL本社で2時間に渡り交渉をしたのですが、彼らの回答は終始「今後もより一層環境や遺跡を守る最大限の努力をしながら開発をしていく」というものでした。ハワイ先住民たちの「あなたたちが私たちの祖先の遺骨に対して行った冒涜行為は修復不能です。こんな破壊的な投資はもうやめて日本に引上げて下さい。私たちは日本人がハワイ人と同じように祖先を敬う心を持っていることを知っています。どうか絶滅寸前のハワイ先住民の伝統文化が継承できるよう助けて下さい」というメッセージは、伝わったのでしょうか。

JALはホクリア開発の抜本的見直しを

 もし、逆にアメリカの航空会社が日本で同じ事をやろうとしたら、当然国際問題に発展するし、そんな工事は許されないでしょう。また、環境との調和が希求されている今、美しい楽園に農薬や化学肥料を多用するゴルフ場を作る経営感覚は時代遅れです。ハワイ島にはすでにゴルフ場が20以上あり、倒産したり計画が途中放棄されているものも多数あります。先住民の埋葬地の上にあるゴルフ場と知りながら、楽しくゴルフをプレーする人が果たしているのでしょうか。人々は自然破壊をして作った人工空間より、本物の大自然を求めているのです。この開発を強行し続けることは、JALにとっても日本人にとっても、歴史に残る汚点 となることでしょう。

 JALは勇気を持ってこの開発を見直して欲しい。最大顧客である私たち日本人がJALに対して声を上げ、それがJALのトップに伝われば、可能かもしれません。日本資本によってこんなことがハワイで起きていることを、どうかお友達に伝えて下さい。現在JALの兼子勲社長にこの開発の見直しを要請する公開書簡を送っています。この書簡に賛同頂ける方は、その旨を下記へお知らせ下さい。
 私は今後も先住ハワイ人の声を日本に届け、彼らを支援する活動を継続していきます。

◆ファクトシート
開発計画の名前:ホクリア開発(Hokuli'a Development)
開発計画の場所:ハワイ島コナサイド(西側)、南コナ地域、ケアラケクア湾北の海岸線の土地1540エイカー
開発会社:OCEANSIDE1250 Partners(オーシャンサイド1250)
主な出資者:日本航空(JAL)100%出資の子会社PIC(Pacific Investment Corporation)、レッドヒル1250(ライルアンダーソン社長:この人物は米国アリゾナ州で現職州知事が逮捕される汚職事件に関わった「有名な」デベロパー)
開発計画概容:土地面積1540エイカー(1エイカーは1224坪)、ジャック・ニコラス設計のゴルフ場27ホール、約700の高級分譲住宅、約60の会員用ロッジ、クラブハウス、レストラン、スパ、プールなど。
工事着工:1998年末

補足:2001年3月26日現在、ホクリア開発は度重なる違反行為のため「工事一時停止命令」を州の裁判所から受けている。2001年2月14日、先住民団体、環境団体によるハワイ先住民の祖先の魂に対する謝罪と鎮魂の儀式が夜を徹して行われた。ハワイ島でこのような大規模な集会が行われるのは初めてのことという。
3月22―27日、4人の先住民代表団が来日。このときの映像、土砂の流出を海中と空から撮影した映像があるので、マスコミ(特にテレビ局)の知人がいる方は、紹介して欲しい。


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最終更新 2001/04/30