ユン沙美
長崎に生まれ、5歳の時にニュージーランドに家族と移住したユン沙美と申します。今はメルボルンに住んでいて、モナッシュ大学で翻訳・通訳の勉強をしています。Socialist Alternative<www.sa.org.au>という社会主義の団体に参加しています。去年はオーストラリア史上最大労働者デモに参加しました。通常労働闘争が余りないメルボルンにハーワド政府に反対する50万人以上の労働者が集まり、怒り声を上げました。
日本に帰るのは三年ぶりでした。ちなみに夫のマックニール・ドゥーガルと一緒に日本に行くは初めてのことでした。日本はオーストラリアの一番の輸出国なので、こっちのメディアは日本の社会問題や経済問題に対して他のアジア国よりもっと敏感です。郵政民営化、自衛隊、靖国参拝、教科書問題、少子化、捕鯨、ニートなどのさまざまな問題がちょくちょくメディアで流れています。
オーストラリアのメディアでは日本の様々な問題はいつも書かれていますが、このような問題にどのように日本労働者が対抗しているかはめったに書かれていません。Australia Aisa Workers Linkのマンリコさんを通じて、Asian Pacific Workers Solidarity Links の高幣さんに連絡しました。
12月17日(土)、神奈川シティユニオン(KCU)を訪問しました。神奈川には行ったことはなく、労働者の町だと高幣さんから聞きました。事務所に入った時には雷が外でおちても気付かない様な激しい討論がおこっていました。各活動家の進展を報告する会でした。みんなの熱心さと情熱がするどく伝わってきました。組合の自己紹介を聞いて驚いたのはみんなの国籍がバラバラという事。なかには韓国人、日系ブラジル人、日系ペルー人、そしてもちろん日本人もいました。ここで初めて日本政府が現在外国人労働者をどのように利用しているかを知りました。
会の後はみんなで昼ごはん。運良く、いや、これも一種のマジックだったかもしれないが、マジシャンと同じテーブルに座りました。彼はたくさんのトリックで私とドゥーガルを驚かせました。このような多種文化的なユニオンはマジック等を利用して、言葉が通じなくても、心が通じるように努力しているのを感じました。
お昼の後はユニオンの概要を村山委員長から受けました。最初に感じたのは日本の労働組合の構成とオーストラリア(AUS)・ニュージーランド(NZ)の労働組合の構成が全く違うことです。主に、KCUが言わば「外国人組合」と言う観念を持つことを不思議に思いました。向こうでは外国人労働者が歴史的に必要であったから、外国人だけの組合を作る事ははまずない。もちろん、外国人専用の委員会はあるとしても、これは組合の一部となっているのが普通。この数年、KCUの会員数が増加したのも変化してゆく日本社会の需要に正しく応じているからにちがいありません。
ハイライトは交渉を直接見ることでした。私とドゥーガルの初めての交渉体験でした。村山委員長、恐るべし。会社側を圧倒的に押さえ、KCU側勝利。
19日(月)は女性ユニオン東京訪問。女性だけのユニオンとは一体どんな組織であろうかと疑問に思っていました。急進的フェミニズムの傾向なのか?女性といっても職、階級、などで、状況が違うがどんな『女性』達を組織化するのか?女性・男性が一緒に働く職場ではどのようにして組織にするかなど、次々に疑問がありました。向こうでは、外国人専用の組合がないように、女性専用の組合もあまり聞きません。
谷さんとお茶を飲みながら、一つ一つの疑問が解けました。一番印象に残ったのは日本の女性解放運動ではDV・セキハラなどが最初に取り上げられ、そしてその後男女同一賃金が取りあげられると言われた事でした。AUS・NZのウーマンリブは少し違う形で展開しました。なぜこのように歴史が展開したかと聞かれると、すぐには答えられません。でも、AUS・NZの場合、労働組合が男女同一賃金の戦いを進めた事実は明らかです。この事実があるからこそ女性ユニオン、そして、KCUの『外国人ユニオン』のように別の組織が作られている事を不思議に思えたのかもしれません。
午後からは重松さんとの話し合い。KCUのみなさんと同じような闘争をやっている感じがしました。日本社会はますます移住労働者に頼るようになっていますが、それに応じる移住労働者の権利はありません。闘争にがんばってください。ファイト!
12月23日、郵政ユニオンの中島さんの誘いで小林さんのライブを聞きに行く。ウーマンリブ以来、歌い続けたブルースの歌手はどんなんだろう?
♪朝起きたら、男の態度が変わっていた
印象外れだったのは曲は全部男嫌いというよりも性差別的な社会の中に生きる女の苦しみの歌。この苦しみを聞きながらウケるわ、泣けるわ、歌えるわ、感情を強く出せるような曲が次々とありました。
1月、6日、郵政ユニオンの中島さんが整えてくれた交流会に参加。小泉の郵政民営化はAUSでも大ニュース。郵便局の労働者がどのように反応するかは一番興味がありました。この課題で日本社会は二つに分裂したような感じがしました。普段、自民党万歳と言う感覚を持つ日本人も郵便局に関しては少し不安を感じたようでした。しかし問題はどうこの不安感を利用し、闘争を行うか。少数派である郵政ユニオンには戦いの道はまだ遠い。20年前NZは急激な民営化を経験し、それ以来、労働条件は悪化しました。日本の国鉄労働者と同じような歴史です。国鉄労働者が今でも戦い続けているのは全国労働者条件を保ってきたには違いありません。今までの戦いの正負を学びながら今回の民営化にどう対応するかが核心です。郵便局労働者ファイト!
1月、7日、資料館を案内してくれた高實先生の説明を聞きながら吐き気を感じました。吐き気は説明してくれた内容の残酷さと日本政府に対する怒りのための反応でした。加えて、この資料館は政府から支持を一切受けないと聞いて二倍に怒りを感じました。日本政府は原爆の悲劇のマントをかぶり、そのマントで中国人・朝鮮人に起こした悲劇を隠そうとしているように思えました。今まで平気で神社に行ったことを思い出すとゾッとしました。真実を引き続き教えてください。
その夕方、宝町からバスに乗ってどんどんと長崎の産業の中心へ向かっていった。飽の浦のバス停に降りると一瞬だけ原爆で亡くなった朝鮮人・中国人の画像が頭に浮かびました。
御用組合はAUSにはないため、吉川さん達から一番よく日本の組合の根幹を教わりました。日本労働組合の分裂する傾向は、少数派の組合が御用組合に対応しなければならないからです。しかし、組合が分裂しただけでは問題は解決されません。分裂が起こす問題をどう乗り越えて行くかも重要な課題だと感じました。
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