第13号 2004年9月17日 |
サンフランシスコ訪問
サンフランシスコのユニオンスクエア近くで
みなさん
ここのところ号外ばかりを出していました。毎日・毎日いろんなことがあり、書く暇のないまま(そして消化する暇もないまま)、月日が過ぎてしまっています。ロス滞在も残り6週間になってしまいましたから、最後の追い込みです。
清々しく、日によっては寒いくらいだったサンフランシスコから帰ると、ロサンゼルスはなんと華氏100度(摂氏38度)を超える熱波に襲われていて、さすがに、暑くてどうにかなりそうでした。こちらの8月が涼しかったのでこたえましたが、今週は気温が下がってきて、一息ついています。
今回は以下の3点です。
1.サンフランシスコ訪問について
2.南カリフォルニア大学のアピチャイ・シッパーさんに会いました
3.ホテル労働者たちのストライキ・秒読み段階へ
高須裕彦
1.サンフランシスコ訪問について
対岸のオークランドを結ぶベイブリッジ
サンフランシスコ(8月27日―9月3日)の報告は、前号(号外)でお知らせしたとおり、労働情報の次号(10月1日号)にUCバークレイ・レイバーセンターについて詳しく書きましたし、今後、青野がレイバーメディア運動について書く予定です。
人でにぎわうサンフランシスコのチャイナタウン
前々号外でちらりと触れましたが、サンフランシスコは、街のかたちがロサンゼルスとはまったく違うところです。みなさんご承知のケーブル、路面電車をはじめ、バス網、地下鉄など、公共交通機関が発達していて、人びとがたくさん歩いている(夜遅くまで!)のが驚きでした(東京ではあたりまえのことですが)。街の中心地にチャイナタウンがあり、大きな存在感を持っています。人があふれていて、その活気は、ロサンゼルスのチャイナタウンとはまったく違います。
海に囲まれたサンフランシスコは、とっても美しい街です。夕方、太平洋側から突然霧が発生して、気温も10度ぐらい下がり、青空と青い海に霧が拡がっていく様子は何とも言えない光景でした。そして、日の落ちたサンフランシスコの夜景もすばらしい。
サンフランシスコにて筆者
レイバーフェスタで昨年来日された、アメリカのレイバーネットのスティーブ・ゼルツアーさん・鳥井和美さん夫妻に、自動車で、対岸のオークランドとを結んでいるベイブリッジの途中の島から夜景を見せてもらいました。周りが海だから真っ暗です。その暗闇に浮かびあがるダウンタウンの高層ビル群の夜景は最高でした。こんに美しい夜景は見たことがありませんでした。映像で表現できないのが残念です。
まだ行かれたことのない方には本当にお薦めの街です。そして、全米で最も先進的なそしてあらゆる運動のある街ですから、交流にも最適です。
2.南カリフォルニア大学のアピチャイ・シッパーさんに会いました9月16日に、日本に外国人労働者の組織化や運動について調査に来られていたアピチャイ・シッパーさんに会いました。その時の調査報告をもらいましたが、ほとんどの組織をまわって、日本の外国人労働者運動と支援運動の全体像をよくつかんでいます。
5月から8月まで日本に行かれていたそうで、その時の写真、全統一労組外国人分会のスタッフ、組合員たちの写真を見せてもらいました(みんな元気そうですね)。彼は、タイ生まれで10歳の時に移民しています。東海岸に長くいたので、ロサンゼルスの車の生活が合わないようで、普通は大学までバスで通っていると言っていました。
お連れ合いは日本人で、毎日、日本語を話していると言っていました。ということで、ロサンゼルスの移民たちの運動について、日本語で議論ができました。彼は、いま、この地域の移民たちの運動について、各組織を回って聞き取り調査をしています。労働者センター調査を終え、いまは、移民コミュニティの宗教関係の組織を調査しています。
日本との対比で言えば、移民たちの歴史は日本より長く、移民たちの数は桁違いの多さなのに、労働に焦点を当てた、労働者センターの運動が拡がったのが遅く(90年代初めから)、組織の数も少なく、組織化されている移民労働者の数もそれほど多くない(日本の方が組織の数も多く、組織率が高いのではないか)と言っていました。現在は、カリスマ的な指導者がいないそうです(農業労働者組合のシーザー・チャベスのような)。私の方からはHEREやSEIUに組織されている移民労働者のことも考慮する必要があるのではと少し議論しました。
3.ホテル労働者たちのストライキ・秒読み段階へUNITE-HEREのスト権投票へ向けた記者会見
(ダウンタウンレイバーセンターにて。9月9日)11号、12号で、ホテル労働者の市民的不服従行動について報告しました。
9月6日のレイバーデー(アメリカではメーデーをやらないかわりに、レイバーデーを労働者のお祭りとして取り組みます)には、ダウンタウンで、UNITE-HERE Local11を中心に、SEIUなどとデモをやり、カソリックの大聖堂(The Cathedral of Our Ladyof the Angeles全米で最大の規模の聖堂)へ向かい、レイバーデーのミサに参加しました。組合員のほとんどがラテン系だからカソリックの教会でミサをやることは当然と思いましたが、カソリックの司祭たちが、労働者の正義と権利を求める闘いを讃えるのは、何とも言えない感じでした。教会やコミュニティを味方につけるかれらの闘いの一端を見ました。
その後、組合(UNITE-HERE Local11)は、スト準備をはじめ、集団交渉をしている雇用者協会(Employers' Council)に加盟する9つのホテル(対応についてはすべて共同歩調を取っている)は、組合員約3000名全員のロックアウトをすると脅しています。
労使間の主たる争点は、協約期間を2年間として、2006年までにすること、賃上げ、健康保険をはじめ多岐にわたっていますが、最大の争点は、協約期間です。UNITE-HEREは、北米各都市の協約期間を2006年までとし、2006年に、大キャンペーンをやろうと準備しています。今年、協約の切れたワシントンDC、サンフランシスコ、ロサンゼルスを除く他の主要都市はすべて、2006年までの協約を勝ち取っているので、この残された三都市の闘いが焦点化しています。当然、経営側はその戦略をわかっていますから、拒否しています。
主要ホテルの多くが、北米レベルでチェーン化、さらには国際化している中で、一都市での孤立した闘いでは、経営に勝てないというのが、組合の分析です。それは、昨年10月から5カ月にわって闘われた5万9千人の南カリフォルニアのスーパーマーケットストライキの事実上の敗北に対する総括に基づいています。全国チェーンのスーパーと闘うのに、一地域で闘っても、経営に打撃を与えることはできないと。
今週、ワシントンDC、サンフランシスコもスト権を確立し、ロサンゼルスも13日の月曜日に83%の賛成でスト権を確立しました。
16日には、最も強硬派のウィルシャーグランドホテルが、別の交渉単位に属するUNITE-HERE Local52の組合員(洗濯労働者Laundry worker)をロックアウトしました。Local11と共同で交渉しているローカルですが、Local11全体をストライキに引き込む挑発行為と思われます。
Local11は、16日、対象組合員を急遽全員招集し(一日何度にも分けて時間差で)、ダウンタウンレイバーセンターのホールで、組合員集会を開催し、ストライキ準備を進めていました。ストライキにはいると6時間交代で、24時間体制でピケットラインを9つのホテルにはります。全員集会のあと、グループ別に分かれて、生活体制やローン対策、スト中のパートタイムの仕事の紹介などについて、議論していました。
昨晩は、KPFKという最も進歩的なコミュニティラジオの「レイバーレビュー」という1時間の番組で、ホテル労働者のストライキをどう支援していくかの特集をしていました。
来週早々にも突入しそうな情勢です。また、動きを報告します。
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ロス通信のバックナンバーは、以下のAPWSLのホームページから見られます。こちらは写真付きです。 http://www.jca.apc.org/apwsljp/------------------------------------------------------------------------
連絡先は以下のとおりです。郵便物・FAXはダウンタウンレイバーセンターへ送ってください。ロサンゼルス滞在は10月31日までです。
大学UCLA Downtown Labor Center675 South Park View St. Los Angeles, CA 90057-3306
Tel: 213-480-4155x203(代表電話の後203を押せばつながります)Fax: 213-480-4160
自宅Tel: 213-384-1029(留守電もついています)