法務大臣の裁決の取消を求める一斉出頭者の裁判
<弁護団による最終意見陳述>
平成12年(行ウ)第38号 退去強制令書発付処分等取消請求事件
原 告 Mさん 外2名
被 告 法務大臣外1名
2001年12月13日
原告3名の主張は、これまでの準備書面に記載したとおりですが、弁論を終結するにあたり、弁護団を代表して、最後に意見を述べさせていただきます。
原告Mさんと、Yさんは日本に来てから、善良な市民として会社に、地域社会に溶け込んだ生活を送っています。原告たちが日本での生活を望むことが、そんなにいけないことでしょうか?原告たちにの本邦における在留資格を認めることによって、日本の善良な風俗・秩序に好影響を与えることこそあれ(例えば適法化による就労環境の安定など)、悪影響を及ぼすということは全く想定できません。
法務大臣の主張は、抽象論で、結局、本件訴訟の最終段階まで、原告3名親子が日本に残ることで、どのような弊害が具体的に生じるか、明らかにされませんでした。
他方、原告らが日本での在留が認められなければ、10年以上にわたって培ってきた生活基盤を失うことになります。原告Mさんは軍事政権に逮捕され、死亡する危険が高いです。原告Yさんと原告Yさんは、軍事政権による抑圧と人権侵害に怯えながら、刑務所に入れられるであろうMさんと離れて、日本であれば、「最低限の文化的生活」をはるかに下回る劣悪な環境のもとでの生活を余儀なくされるのです。
原告らが、入管法という法律に反したのは紛れもない事実ですが、単にそれだけのことで、原告らの築き上げた生活を奪い去ることが人道上許容されるのでしょうか。
自ら定めた入管規則で作成を義務づけられている裁決書を作らず、しかもそれで構わないと開き直っている法務大臣に、彼らの生活を根こそぎ奪う資格があるのでしょうか。
先進諸国では数万人単位のアムネスティを実施し、非正規滞在者の人権を救済しています。隣の韓国でも6万人、台湾でも2万人以上の非正規滞在者に対して、在留資格を付与しています。
先日出席したある会議で、ニュージーランドの学者が、非正規滞在者を正規化することによって、さらなる非正規滞在者が流入する呼び水にならないかという質問に対し、こう答えていました。「そういう懸念はある。しかし、だからといって、今、目の前の非正規滞在者が置かれている人権侵害は見逃すわけにいかない。」。
国家としての基本姿勢が、日本と正反対であることに、畏敬の念を感じました。そのような発言を誇らしげに語る彼の姿を見て、うらやましく思いました。
裁判所におかれましては、すでに述べた諸事情を十分に考慮の上、是非とも人道的なかつ適正な法解釈に基づく判断をされるよう、心より期待します。
以 上
ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY (APFS)