APFSは5月19日、辻元清美参議院議員(社会民主党)の仲介で法務省への要請行動を行ないました。今回は総勢5名(辻元議員秘書の大塚氏、菅本麻衣子弁護士、APFSからは山口代表、吉成相談役、吉田事務局次長)で法務省へと向かいました。 午後4時半、予定通りに法務省の建物に入り部屋に通されました。法務省側からは石崎審判課補佐官、小田川法務事務官ら3人が出席しました。 まず、山口代表が要請書を法務省側に手渡し、要請内容について説明していきました。
要請内容は、個別案件4件を含めた以下の6点です。 まず、子どもを有する家族を収容しないことを強く求めました。近年、家族全員が摘発を受け収容されるケースが増えており、両親は収容施設に収容され、子どもは児童相談所などに預けられて強制的に分離されています。これは日本も批准している児童の権利条約における「締約国は、児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確約する」という規定に反しています。山口代表は、特に子どもがいる家庭は子どもの教育などを考えて逃亡するとは思えないと強調しました。 これに対し法務省側は、子どもの収容に関しては長期にならないよう仮放免を許可し、特に幼い子どもは母親と一緒に仮放免にするなど現実的に対処しているとの回答。全件収容が原則であるから、あとはケースバイケースで対応するしかないとして、現状の根本的見直しへの明言を避けました。
2点目は仮放免の基準の明確化です。現在入国管理局は「全件収容主義」をとっているものの、実際は収容せずに在宅で調査するケースも多くあります。一方で、何度も仮放免申請をしても許可されず、長期にわたって収容されている者もいます。 この要請に対し法務省側は、仮放免の基準は明確にはなく、外部に出すようなかっちりした基準は出せない状況とのこと。この答弁に対し吉成相談役は、出せないではなく出すように努力してくださいと強く求めました。法務省側の消極的な姿勢に苛立ちを覚える場面でもありました。
この後は個別案件4件。
ミャンマー国籍のTHEIN NAINGさん家族は、不法残留で入管の摘発を受け、夫と共に、妻そして都立高校3年に在学する長男も収容されています。すでに長男の学校では授業が始まっており、長男は仮放免が認められないために学校に行けず、5月中に授業に出席できなければ卒業が困難であると同校の校長などは話しています。彼らは退去強制令書の発付処分取り消しを求め、現在訴訟を起こしており、司法の判断が出るまでに1年以上はかかるとみられています。このままでは長男の来年3月の卒業は危ぶまれます。こうした状況を考慮に入れ、人道的見地から長男の仮放免を認めてほしいと、現在行なわれている訴訟で彼らの代理人を務める菅本麻衣子弁護士とともに強く訴えました。 これについて法務省側は、「退去強制令書が発付されているということは、母国への送還が前提。長男が学校に戻るということは考えていない。そのため仮放免は出せない。」と、頑なな返答に終始しました。
フィリピン国籍のLIMON DEAN MARLO Pさんは、「不法残留」の容疑で逮捕され、すでに退去強制令書が発付されています。しかしながら2人の子どもはすでに中学1年生と小学1年生です。日本語しか話せず、日本の文化しか知らない子どもたちを今からフィリピンに返すのは子どもたちの今後の人生に大きな痛手を残しかねません。この一家に在留特別許可を認めるべきである旨を伝えました。 これに関して法務省側は、「現状では、十分在留特別許可が認められる状況にある」とのこと。あくまでも現段階での可能性との括弧つきではありました、良い感触をつかめたと感じました。
中国籍の韓奮さんは、やはり「不法残留」で入管の摘発を受け、現在、韓奮さんと妻、そして小学3年生の長女は仮放免になっています。妻は全身性エリテマトーデスという難病で、また長女も同病の可能性があると診断され、中国での治療が難しいこともあり日本での治療を望んでいます。長女は区立小学校に在学し、日本語しか話せません。こうしたことなどを考慮し、在特を認めてくれるよう強く申し入れました。 これに対し法務省側は、「私達が現段階で言えることは、このケースは早く判断が出るだろうということ」と回答しました。家族の状況を考慮に入れるか否かの明言は避け、近いうちの判断だけを匂わせました。
最後の個別案件として、バングラデッシュ国籍のTOTA MIAHさんの案件です。彼は超過滞在の間に日本人と結婚し、在特を求めて出頭しました。すでに出頭から1年半が経過していますが入管からの連絡がないまま放置されています。現在、日本人と婚姻した非正規滞在者が在特を求めて出頭した場合、3ヶ月程度で在特が認められるなど迅速化が進んでいます。彼の案件に関しても迅速な判断を求めました。 法務省側は、「何度か入管から彼の家に電話をしているが誰も出ないため、二人の同居を確信できない」との回答。夫婦共に仕事や地域でのボランティア活動に忙しいため、夜まで電話に出られないことが多いという実情を伝え、迅速な調査を再度お願いしました。
全体的に見て、今回も法務省側の官僚的・形式的な答弁の繰り返しが多く見られました。しかし、フィリピン国籍のLIMON DEAN MARLO Pさんの案件のように、良い感触を得られる場面もありました。
APFSは今後も真摯な態度でこのような訴えを続けていき、少しずつの進みではありますが在留特別許可の柔軟な運用・人権を尊重する社会の実現につながっていけばと強く願っています。 |
ASIAN PEOPLE'S FRIENDSHIP SOCIETY (APFS)