すでにテレビや新聞でご存知の方も多いと思いますが、さる9月21日、日本国内に強固な生活基盤が形成され、帰国しても生活していくことが困難な8名の長期滞在者が集団で東京入国管理局に出頭しました。日本で合法的に暮らしていくための唯一の方途、在留特別許可を求めての出頭です。全員が30、40歳代のバングラデシュ国籍男性でした。
◇ 摘発政策だけでよいのか ◇
現在国内に22万人存在すると言われる非正規滞在者は、きわめて困難な状況下におかれています。近年、多くの非正規滞在者が職場で、路上で、自宅から、警察や入管職員により摘発され退去強制を余儀なくされています。現在の入管行政は摘発―強制送還政策が先行しているのです。
しかし、このような摘発に偏向したやり方で非正規滞在者をゼロにすることなどできるわけがありません。日本国内に生活基盤があり、もはや祖国に帰っても生きていくあてのない人々が数多く存在している以上、一定の基準のもとに非正規滞在者に在留特別許可を認め、彼ら彼女らを合法化するのがもっとも現実的であり人道的な政策であると私たちは考えます。今回出頭した8名もまさに帰国しても生活のあてがない人々です。やむにやまれず、在留特別許可に一縷の望みを託した人々なのです。
1999年9月から始まった在留特別許可一斉行動の結果、日本に10年以上滞在し、中学生以上の子どものいる家族に対して在留特別許可が認められるようになってきました。しかし、子どもが小さい家族や、単身者にはまだまだ道は険しいのが現状です。
本年8月31日、野沢法務大臣は「人道的配慮」から在留特別許可を柔軟に運用していくことを記者会見の席で明言しました。また、法務省はそのホームページで2003年度の在留特別許可事例26件を公表しました。
私たちAPFSは、単身者であっても10年以上日本で生活してきた非正規滞在者や、その他汲むべき事情のある人々には積極的に在留特別許可を認めるべきだと主張しています。
◇「私たちは必死に働いて生きてきた」 ◇
出頭日当日、午前10時半から五反田のTOCホールで支援集会が当事者8人と支援40数名で行われました。報道機関も多数やって来ました。8人が緊張した面持ちの中にも固い決意を秘めているのがよくわかりました。
集会では今回の出頭行動にいたる経過が説明された後、8名を応援するため設立された「在留特別許可を求める長期滞在外国人を支援する会」(呼びかけ人16名、賛同個人150名、賛同団体25団体)の呼びかけ人を代表して村田敏弁護士が激励の言葉を述べます。村田弁護士は、第一次〜第三次在留特別許可取得行動の弁護団長でもあります。続いて、やはり在特弁護団の土井香苗さんが挨拶。
次に当事者一人一人がこれまで秘めてきた思いのたけをぶつけるように、決意表明を行っていきました。
自分達がどれだけ苦労しながら地域社会で生きてきたか、どれほど一生懸命働いて会社や同僚の信頼をかちえてきたか、なぜ自分達があたかも「犯罪者」のように扱われなければならないのか……。感極まって涙を流す出頭者が続きました。彼らの声は会場を埋めた人々の胸につきささりました。
その後は「支援する会」呼びかけ人の鈴木江理子さんから閉めの挨拶のあと、20分ほど記者会見を行い、いよいよ入管に向け出発です。
◇ 入管へ出頭 ◇
一同は品川の東京入国管理局へ向かいました。午後1時。6階の調査第三部門に入室します。支援者のうち、情宣部隊は入管正面でマイクアピールを行います。
屋内ではまず吉成勝男APFS代表と村田弁護士、山田正記弁護士、児玉晃一弁護士が「支援する会」の設
立趣意書や25団体150名分の賛同名簿などを入管側に手渡し、8名を収容しないよう強く要請しました。その後、当事者一人一人が呼び出されていきます。
30分、1時間と時間が経過し、支援者が心配しはじめたころ、入管側から「今日のところは全員、収容はしません」と告げられ皆、胸をなでおろしました。支援者から自然と拍手がわきおこります。
最後の一人が戻ってきたのは6時近くでしたが、なんとか一日の行動が無事に終わり、皆に安堵感がひろがりました。
しかし、まだ安心はできません。在宅での取調べとなったものの、全員が早くも10月6日に違反調査の呼び出しを受けました。この日に収容される可能性も高いと思われます。
闘いはこれからが正念場です。APFSでは8名全員が在留特別許可をかちとることを目指し、全力でこの課題に取り組みます。今後ともみなさまのご支援・ご協力を御願いいたします。
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