◇家族の生活のために日本へ
アブル カラム イドリスさんは1958年にバングラデシュのコミラで生まれました。貧しい家庭に育ったアブルさんは、9人兄弟の末弟でしたが、成績がよかったため大学院まで進むことが出来ました。しかし家庭の経済事情が悪化したため2年間で中退せざるを得ませんでした。アブルさんは1981年に結婚をしましたが、バングラデシュでは働く場所もなかったため、就労を目的として単身でサウジアラビアに出かけていきました。サウジアラビアではウエィターや造船関係の仕事をしていました。その後、妻のAFROZAさんを呼び寄せ、1988年には長女のマルアちゃんも生まれ幸せな生活を送っていました。しかしサウジアラビアでは給料が安いうえに兄弟に仕送りをしていたため貯金がまったく出来ませんでした。アブルさんは、もっと安定した生活をしたいと望むようになりました。そんな時に友人から日本の話を聞きました。日本に行けば何かビジネスのチャンスがあるのではないかと考えたアブルさんは単身で日本に行くことにしました。1990年3月、アブルさんは入国を認められ90日間の在留期間が与えられました。
◇ 家族を呼び寄せ安定した暮らしが…・
期待に胸を膨らませてアブルさんは一生懸命に働きました。認められた滞在
期間はあっという間に経過し、気が付いたときには超過滞在となっていました。数年が過ぎ、日本での生活も安定してきたためアブルさんは妻のAFROZAさんを呼び寄せいました。AFROZAさんは長女のマルアちゃんをバングラデシュに残してきたためにすぐに帰国する予定でした。しかしアブルさんが毎日汗にまみれて働き疲れ果てて帰ってくる姿を見て、もう少し滞在して面倒を見てあげたいと考えるようになりました。そしてAFROZAさんもまた認められた滞在期間は経過してしまい、超過滞在となってしまいました。1995年にはバングラデシュに残してきたマルアちゃんを呼び寄せ、1996年には長男のプリンスちゃんが生まれました。アブルさんは子どもたちに囲まれ幸せな日々を過ごしていました。
◇ 在留特別許可を求めて入国管理局に出頭
アブルさんは超過滞在となってしまったことにいつも悩み苦しんでいました。
とくに長女のマルアちゃんが中学に入学したときに、超過滞在ということで様々な問題が出てきました。アブルさん自身も長年にわたる日本での生活の中で2度も労災事故にあうなど、将来に不安を感じるようになりました。そして日本で合法的な滞在を認められる唯一の方法が在留特別許可であることを知らされました。
2002年1月、アブルさん家族は在留特別許可を求めて東京入国管理局に出頭をしました。必要な書類をすべてそろえて、弁護士やAPFSのスタッフとともに出頭をしました。東京入国管理局はアブルさんらを収容せず在宅で取り調べることにしました。その後、東京入国管理局からは何も連絡がありませんでした。今年4月には出頭時に中学1年生であったマルアちゃんは高校1年生になりました。また長男のプリンスちゃんも小学校に通うようになりました。入国管理局に出頭したアブルさん家族は摘発の心配もなくなり心の平安を取り戻し明るい日々を過ごしていました。
◇ 入管法違反で警察に逮捕される
入国管理局に出頭し在宅で取調べをすると告げられすっかり安心をしていた
アブルが本年6月18日に綾瀬警察に逮捕されてしまいました。アブルさんは、これまでも何度か警察に捕まったことがありましたが、すでに入国管理局に出頭していることを告げると、すぐに釈放をしてくれていました。しかし綾瀬警察は超過滞在期間が長いことなどを理由として弁護士やAPFSの要請にもかかわらず釈放することはありませんでした。何とか起訴だけは免れたものの拘留期限が切れる7月8日に東京入国管理局に身柄を移されてしまいました。昨年10月に、警視庁や東京入国管理局が超過滞在外国人に対する取締りに関連して共同宣言を出して以来、警察による取り締まりは日に日に厳しさを増しています。アブルさんもその犠牲となってしまったのです。また出頭から2年間も書類を放置しつづけた入国管理局にも大きな責任があります。
◇ アブルさん家族に在留特別許可を
アブルさんらは、すでに10年以上日本に在住をしています。10年余の生
活により日本に生活基盤を形成しています。バングラデシュには資産も財産もなく、家族が送還された場合、生活していくあてもありません。また6歳のときに来日した長女は高等学校の1年生となり、日本で生まれた長男も小学校に通うようになりました。子どもたちは日本語での教育を受けており、送還されれば適切な教育を受けられなくなります。アブルさん家族は地域の暮らしにもとけこみ多くの友人たちに囲まれて生活をしています。
アブルさんが警察に逮捕され、その後身柄を入国管理局に移されたからすでに2ヶ月が経過しようとしています。アブルさん家族の状況を考えれば、入国管理局がアブルさん家族に在留特別許可を認めて当然です。APFSでは、東京入国管理局がアブルさんの仮放免を早急に許可し、一日も早く在留特別許可を認めるよう求めています。
皆様のご支援をお願いします。
2004年7月13日
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