2005年のイギリス・グレンイーグルズサミットで、当時の小泉首相は、今後3年間でアフリカ向けODAを倍増することを約束しました。そして今年の4月には「対アフリカODA 07年実績17.1億ドル 3年で倍増達成」が財務省から発表されました。アフリカ向けの2007年のODA実績が17.1億ドル(暫定値、約1800億円)になり、03年の8.4億ドルの2.04倍となった、というものでした。
しかし、実際の支援額は逆に減少しているのです。減ったのに増加したとは、いったいどういうカラクリなのでしょうか?
日本政府は、03年、ベナン、モーリタニア、タンザニア、マリ、ウガンダのアフリカ諸国に対する約3億ドルの円借款債権を放棄しました。この債権放棄の金額がODAに組み込まれました。つまり、報道にあった03年のODA実績8.4億ドルのうち、約3億ドルは実際に援助資金を提供した額ではなく、債務削減の額ということです。07年のODA実績17.1億ドルの詳細はまだ明らかにされていませんが、前年度の06年の対アフリカODAの詳細を見てみれば、実際の援助額が増加していないことが分かります。
06年の対アフリカODAは、債務削減分を含めると25.58億ドルですが、債務救済分を除くと、5.17億ドルになります。03年の債務救済を除いた援助額は約5.4億ドルですから、増えてはいないのです。07年もおそらく同じカラクリです。
実際の援助ではないかも知れないが、債務削減だってアフリカにとってはありがたいことではないか、と考える方もいるでしょう。しかし、アフリカの人々が背負わされてきた債務の多くは、先進国やその支配下にある世界銀行や国際通貨基金(IMF)の都合によってつくり出されてきたものでした。
冷戦構造のなかで西側諸国の権益維持為のため独裁者に資金を援助し続けたり、借金返済の繰り延べや新たな資金供与の条件として人々の生活や福祉を犠牲にして貿易や規制緩和などをアフリカ諸国に強制したり、現地の人々の生活や環境を破壊する巨大開発プロジェクトの利益が、その国の独裁者や援助する側の企業・銀行に還流していたりと、アフリカ援助に関する醜悪な実態を上げるときりがありません。
先進諸国の政府や多国籍企業と途上国の独裁者の都合で膨らんだこのような巨額の債務を帳消しにすることを「援助」と呼ぶことはできないのではないでしょうか。
日本政府は、実際には増えていないのに、「ODAが倍増した」と声高に叫ぶのではなく、より緊急性を要する保健や教育などに関する具体的な公約の実現にむけて、利潤をインセンティブとする企業の目線ではなく、アフリカ現地や日本の市民社会との十分な協議に基づいた協力が必要ではないでしょうか。
債務問題についてはG8サミットを問う連絡会ウェブサイトに掲載されている「第三世界の債務問題とG8」もご参考下さい。http://www.jca.apc.org/alt-g8/?q=node/67