マイナ保険証を押し付けるな!健康保険証をなくすな!! (1)

 多くの市民や医療・介護の関係者等の反対にもかかわらず、政府は2024年12月2日、健康保険証の新規交付を終了した。共通番号いらないネットは8月31日の「どうなる保険証 どうする私たち」集会の論議を受けて、健康保険証の廃止阻止に向けて3ヶ月間全力で取り組んできた。
 新規交付は終了したが、健康保険証は有効期限まで最長1年間利用できる。マイナ保険証の利用率は11月末でも18.52%に低迷している。
 私たちは1月以降も
・健康保険証をなくすな! 健康保険証を使おう!
・マイナ保険証の押し付けを許さない!
・マイナ保険証を登録解除して資格確認書を使おう!
と訴え続けるとともに、今後の取り組みを検討することにしている。
 この間の取り組みと現状を概観する。

 8月31日「どうなる保険証 どうする私たち」集会では、医療や地方自治体、保険者の立場から問題提起を受けた。(当日の資料やビデオはこちら
 マイナ保険証に対しては、保団連(全国保険医団体連合会)による大規模な調査活動と、加盟する各地の保険医協会による医療現場からの問題指摘によって、厚労省が説明してきたマイナ保険証のメリットが実現できていないことが明らかになってきた(5月以降のトラブル調査報告はこちら)。
 医療機関では効率化するはずの窓口事務は、かえって手間がかかり患者とのトラブルが起きている。マイナ保険証で正確な医療保険資格を確認できるはずが、表示の誤りが多発して健康保険証を使って確認している。地域医療を長年支えてきた診療所では、経済的負担やセキュリティ確保への不安からシステム導入を機に廃業するところもでている。
 高齢者・障害者・施設入所者・DV等被害者などにとっては、マイナンバーカードの取得・利用・管理そのものが困難だ。「誰一人取り残さないデジタル化」のはずが、申請が必要なマイナ保険証や「資格確認書」では保険医療から排除されかねないことが浮き彫りになってきた。

 その一方、12月2日の健康保険証新規交付終了が迫る中で、マイナンバーカードの実務を担うとともに国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険者でもある地方自治体や、資格確認書交付やマイナ保険証の登録解除の実務を行う保険者への取り組みが重要になってきた。
 そこで集会では「地方自治体から健康保険証の存続の声を」のアピールを作成し(こちらを参照)、

・政府に対して健康保険証利用の存続・延長を求めること
・マイナ保険証を利用せずに保険診療が受けられることを住民に周知すること
・保険者として資格確認書の交付やマイナ保険証の登録解除を確実に行うこと

などの取り組みを地方自治体に訴えた。
 その後私たちは、自治体議員の研究会(こちら)や首都圏各地の学習会で問題提起を行ってきた。

 なお同じく8月31日には「地方自治と地域医療を守る会」によるシンポジウム「マイナカードと保険証の一体化による実害を考える」も開催され、自治体からの問題提起もされた(当日の模様はこちら)。当日の議論は弁護士JPニュース(こちら)で紹介されている。

 9月2日には木村真豊中市議・高木隆太高槻市議・難波希美子能勢町議の呼びかけで、各地の自治体議員200名以上が連名で総務・デジタル・厚労の各大臣に対し、「現行の健康保険証の廃止・マイナ保険証への一本化を強行しないよう求める申し入れ」を行った。
 現行保険証とマイナ保険証の併用を続けるとともに、12月以降も手元にある健康保険証は有効期限まで使えることや、資格確認書で保険診療を受けることができることなどの周知・広報を求めた。
 しかし厚労省・デジタル庁の担当者は、「マイナ保険証は医療DXのパスポートとしてより良い医療を可能にするもので、このメリットを早期に最大限発揮するため12月2日からマイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」「マイナ保険証への移行は、マイナカードを持たない人も含め全ての人が安心して確実に保険診療が受けられるよう対応する」という説明に終始した。

 自治体からは健康保険証の存続等を求める意見書が、共通番号いらないネットの調査で2024年11月15日現在、自治体の1割を超える213議会から国に提出されている(自治体や意見書概要はこちら)。

 政府は12月以降も最大1年間健康保険証が使えるとか、マイナ保険証がなくても「資格確認書」で保険診療が受けられると言いながら、もっぱらマイナ保険証の利用促進ばかりをPRしてきた。2024年10月から開始予定とされたマイナ保険証の登録解除については、政府・保険者からほとんど宣伝もされなかった。
 そのため、12月からマイナ保険証がないと保険診療が受けられなくなる、との誤解が広がっていた。
 私たちは緊急の取り組みとして、「マイナ保険証はなくても大丈夫!」と訴えるチラシを作成し、各地での配布を訴えた(こちらからダウンロード)。

  ↑ マイナ保険証チラシNo1(2024年9月16日発行)
  ↑ マイナ保険証チラシNo2(2024年10月25日発行)


 チラシの裏面には8月31日集会の資料「これで安心!12月からどうなる保険証?あなたどうすれば?」を掲載し、マイナ保険証の所持の有無など一人一人の状況に応じて、マイナ保険証の登録解除、健康保険証新規交付終了、健康保険証の有効期限終了や失効、そして来年12月の健康保険証の利用終了の時期に応じて、どのようにすればマイナ保険証を利用せずに保険診療が受けられるかを説明した。

 共通番号いらないネットでは、毎月新宿駅南口で宣伝活動を行ってきた。活動の模様は「こばと通信 -声を上げる市民」の協力によってユーチューブで公開されている。
 今年は各地の団体とも協力しながら、5/19横浜駅7/21新橋駅9/29中野駅10/27王子駅11/17蒲田駅などにも宣伝活動を広げ、また健康保険証廃止に賛成・反対のシール投票なども行ってきた。