マイナ保険証を押し付けるな!健康保険証をなくすな!! (3)

 健康保険証の廃止に対して世論は「反対」「延期」が大多数で、マイナ保険証は依然トラブルが続いて医療現場は困っている、それでも政府は12月2日に健康保険証の新規発行を終了する方針を変更しようとしない。
 そんな状況を打破するために、9月以降、様々な団体と力を合わせて反対の声をさらに広げ盛り上げようと努めてきた。

 マイナンバー制度反対連絡会は私たちと同様にマイナンバー制度がスタートした2015年から、個人参加中心の私たち共通番号いらないネットに対して、番号制度の廃止を求める全労連、東京地評、土建労組、自治労連などの労働組合や、全商連(全国商工団体連絡会)、税経新人会などの団体によって活動してきた。
 マイナンバー制度反対連絡会主催の健康保険証廃止を阻止するための一連の行動に、10万人を超える医師・歯科医が加盟する保団連(全国保険医団体連合会)などの医療団体、中央社保協や高齢期運動連絡会障全協(障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会)などの社会保障団体とともに私たちも参加してきた。
・10月9日 デジタル庁・厚生労働省抗議行動
・10月24日 国会前屋外集会
・11月7日 省庁要請行動~日比谷野音集会~銀座デモ
・11月28日 一日行動(保団連院内集会~国会正門前行動~厚労省・デジタル庁抗議行動)
 11月7日の日比谷野音集会~銀座デモは、私たちも広く参加を呼びかけ、日比谷野音を埋める2300名以上の参加があった(集会の模様は保団連こばと通信で)。

 監視社会に反対する取り組みを従来からともに行ってきた「秘密保護法」廃止へ!実行委員会・共謀罪NO!実行委員会とともに、国会審議に向けて院内集会や国会前行動に取り組んできた
・10月1日 能動的サイバー防御と健康保険証廃止に反対する市民の集い(オンライン配信はこちら
・11月6日 国会前行動、院内集会「警察の市民監視や情報収集は違法!ー大垣警察市民監視事件裁判から学ぶ」(オンライン配信はこちら
 また「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動」の10月1日臨時国会開会日行動、11月11日国会開会日行動、12月19日議員会館前行動などで発言してきた。

 2024年9月27日に行われた自民党総裁選挙の結果を受けて、10月1日第1次石破政権が誕生後、10月9日衆議院を解散し、10月27日投票の結果自民・公明が過半数割れし、11月11日第二次石破政権が少数与党政権として発足した。
 立憲民主党は前国会に議員立法で提案していた健康保険証廃止の延期を求める法案を、第215回国会(特別会)に改めて提案し、11月13日衆議院地・こ・デジ特別委員会に付託された(議案審議経過情報はこちら)。

立憲民主党提案の法案(要綱)
衆法 第215回国会 1
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案

一 被保険者証の廃止に関する改正規定の施行期日の改正(番号利用法等改正法附則第一条新第五号及び新第一条の二関係)
 1 番号利用法等改正法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律(令和五年法律第四十八号)をいう。)のうち、被保険者証の廃止に関する改正規定の施行期日を「公布の日〔令和五年六月九日〕から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日〔令和六年十二月二日〕」から「公布の日から起算して一年六月を経過した日以降において別に法律で定める日」に改めること。

 2 1の「別に法律で定める日」については、医療保険各法等の規定による電子資格確認による被保険者及び被扶養者(以下「被保険者等」という。)であることの確認が安全かつ確実に行われるための環境整備の状況、被保険者等が療養を受ける際の医療保険の被保険者証等の利用の状況、医療保険の被保険者証等の廃止が高齢者及び障害者をはじめとする被保険者等に支障を及ぼさないようにするための施策の策定の状況、医療保険の被保険者証等の廃止に関する国民世論の動向その他の事情を勘案して検討し、その結果に基づいて定められるものとすること。

二 施行期日等  (附則等関係)
 1 この法律は、公布の日から施行すること。
 2 その他所要の規定の整理を行うこと。
※ 法案はこちら

 私たちは11月28日の第216回国会(臨時会)開催日に、法案審議が付託された衆議院地・こ・デジ特別委の委員を議員会館に訪問し、下記の要請を行った。


 
 

マイナ保険証を押し付けるな!健康保険証をなくすな!! (2)

 厚労省は2024年5月24日から6月22日まで、健康保険法の省令から健康保険証の交付義務を削除するための意見募集(パブリックコメント)を行った。私たちは「健康保険証なくすな」の声をパブコメで届けようと呼びかけた(こちら参照)。
 このパブコメでは、当初、7月上中旬に結果を公表し省令改正を行う予定になっていたが(概要参照)、1カ月以上遅れて8月30日に結果が公表された(こちら)。寄せられた53,028件もの意見のほとんどは、改正内容に反対する意見だった。
 公表された結果一覧は、現行の被保険者証は継続するべき、マイナンバーカードと被保険者証の一体化に反対、高齢者等の通院では顔認証は負担が大きい、資格確認書の交付条件である「電子資格確認が受けられない状況」に本人の意思によりマイナンバーカードの交付を受けていない場合や登録を解除した場合も含まれることを明示的に規定すべき、資格確認書は被保険者の申請によらずに保険者が交付する義務を負うべき、などの意見で埋めつくされている。

 しかし厚労省はこの反対の声を受け止めず、8月30日、健康保険証の交付義務を削除する省令改正を行った(令和六年厚生労働省令第百十九号:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令)。
 同日、厚生労働省保険局長名で公布通知が各都道府県知事、各指定都市市長、地方厚生(支)局長、都道府県後期高齢者医療広域連合長、社会保険診療報酬支払基金理事長、全国健康保険協会理事長、健康保険組合理事長宛に発出されている(令和6年8月30日保発0 8 3 0 第1号)。

 私たちはこのような厚労省に対して、2024年9月26日、福島みずほ参議院議員事務所を通して
・健康保険証廃止反対の意見が多いことや、マイナ保険証の利用率が低いことを、どう考えているのか?
・マイナ保険証の利用登録解除は、いつから、どのようにおこなうのか?
・「資格確認書」の交付対象を広げるべきではないか?
・医療保険資格が正しく表示されないトラブルは、12月までに解決できるのか?
・マイナ保険証でも、他人が成りすますことはできるのではないか?
・マイナ保険証が一因となって医療機関が閉院していることを、調査し対策しているか?
などのヒアリングを行った(こちら参照)。
 なお同日総務省に対しても、携帯電話契約時の本人確認にマイナカードの公的個人認証しか認めなくすると報じられていることに対するヒアリングを行っている(回答はこちら)。

 厚労省の回答は、いらないネットのサイト(要旨はこちら、質疑内容はこちら)で報告している。またヒアリングの模様は「こばと通信 -声を上げる市民」の協力によりこちらで見ることができる。
 厚労省はパブコメに寄せられた意見は省令改正に反対する内容が圧倒的に多かったことを認めつつ、「より良い医療の提供のためにマイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」ため省令改悪を見直す考えがないことを回答した。
 ただ寄せられた意見を無視はでぎず、今後は指摘された不安を解消するための宣伝を行っていくと説明した。実際10月24日以降新聞各紙に下記広報を掲載するなど、マイナ保険証がなくても資格確認書で受診できることや健康保険証も最大1年間利用できることなど、それまでのマイナ保険証の利用促進一辺倒を若干修正した宣伝を行うようになった。
 市民の声が、政府の姿勢を変えさせた。

マイナ保険証有効登録数
(デジタル庁ダッシュボード11月30日時点)


 しかしマイナ保険証利用促進に比べ宣伝量は圧倒的に少ない。また10月28日から可能になるマイナ保険証の利用登録解除(10月9日厚労省事務連絡参照)について、ヒアリングでは周知すると答えながらまったく触れないなど、「不安解消」にはほど遠い内容だ。
 実際12月2日から健康保険証が使えなくなると誤解して、市区町村窓口にマイナンバーカードの申請が押し寄せ(総務省公表資料)、マイナ保険証登録が増加した。人々を不安に駆り立てることで利用促進を図る、こんな手法でどんなデジタル社会を作ろうというのだろうか。

 なおこのヒアリングでは、最近政府がマイナ保険証を促進する理由として「健康保険証では成りすましがある」と強調していることに対してマイナ保険証でも「技術的には」成りすましが可能と認め、また医療機関・薬局は患者にマイナ保険証利用を勧める義務はないと認めるなど、注目すべき回答があった。

 「資格確認書」の交付やマイナ保険証の利用登録解除は、保険者(健保組合、協会けんぽ、自治体=国保・後期高齢者医療、共済組合、国保組合等)が行うことになり、保険者の姿勢が重要になる。
 一部の健保組合では、2024年度入社した新人に健康保険証を交付せずマイナ保険証の手続きを義務づけた(日経2024年9月25日)とか、資格確認書の有効期限を3カ月にして有効期限内にマイナ保険証の手続きを催促したり、資格確認書をマイナカードの紛失や子の出生によりマイナ保険証が取得できない場合のみ発行すると案内している例(東京新聞2024年11月19日)が報じられている。
 そこで加入者約4000万人の最大の保険者である協会けんぽ(全国健康保険協会:健保組合に加入していない企業の従業員対象)に対し、9月30日次の質問書を送り、10月12日までの回答を求めた(いらないネットのサイトに掲載)。
 また公立学校共済組合に対して、全国学校事務労働組合連絡会議(略称「全学労連」)が9月13日に提出した要請書も、いらないネットのサイトに掲載している。

協会けんぽへの質問項目(全文はこちら
(1)「資格情報のお知らせと加入者情報」について
(2)「資格確認書」について
(3)マイナ保険証の利用登録解除について
(4)マイナ保険証のトラブルへの対応について

 しかし協会けんぽからは期日をすぎても回答も連絡もなく、協会けんぽ本部を訪問するなど再三求めた結果、すでに質問した事項が実施されはじめた12月3日にやっと回答がメールで送られてきた(回答の経過と回答内容はこちら)。政府は「国民の皆様の不安には迅速に応え、丁寧に対応する」(11月30日石破首相所信表明)と繰り返しているが、その実態がこの遅延だ。
 
 「資格情報のお知らせ」は、券面で保険資格情報がわからないマイナ保険証の利用登録者を対象に送ることになっていた。マイナ保険証を登録していない加入者は、券面で保険資格がわかる「資格確認書」が交付されるので、本来必要がない。ところが協会けんぽは9月から全加入者に送付している。なぜ全加入者に送っているのか、9月26日のヒアリングで厚労省は「なぜ協会けんぽが全加入者に送っているかわからない」と回答していたが、協会けんぽからは厚労省の指示(令和6年1月9日付事務連絡)にしたがい送ったと、矛盾する回答があった。

 「資格確認書」については「加入者に安心して医療機関を受診していただきたいとの考え」で有効期限を4年から5年の範囲で設定しているとの回答があった。厚労省は加入者を不安にさせる一部の健保組合の不当な対応を是正させるべきだ。

 マイナ保険証の利用登録解除については、早期に回答を得て周知したかったが、実施後の回答になった。当初はまずコールセンターに連絡しないと解除申請用紙が送付されなかったが、保団連が再三要望した結果、12月1日から申請書類がウェブサイトからダウンロードできるようになった(保団連医療ニュース参照)。私たちは申請の提出先が勤務先になると提出しにくくなることを心配したが、加入している協会けんぽ都道府県支部にて受付することになっている。
 なおマイナ保険証の利用登録解除をする際には、下記の申請書を提出するとともに、あわせてマイナ保険証の代わりになる「資格確認書交付申請書」を提出する必要があるので注意が必要だ(詳しくは協会けんぽサイト参照)。

協会けんぽの利用登録解除申請書(協会けんぽサイトより)

 

マイナ保険証を押し付けるな!健康保険証をなくすな!! (1)

 多くの市民や医療・介護の関係者等の反対にもかかわらず、政府は2024年12月2日、健康保険証の新規交付を終了した。共通番号いらないネットは8月31日の「どうなる保険証 どうする私たち」集会の論議を受けて、健康保険証の廃止阻止に向けて3ヶ月間全力で取り組んできた。
 新規交付は終了したが、健康保険証は有効期限まで最長1年間利用できる。マイナ保険証の利用率は11月末でも18.52%に低迷している。
 私たちは1月以降も
・健康保険証をなくすな! 健康保険証を使おう!
・マイナ保険証の押し付けを許さない!
・マイナ保険証を登録解除して資格確認書を使おう!
と訴え続けるとともに、今後の取り組みを検討することにしている。
 この間の取り組みと現状を概観する。

 8月31日「どうなる保険証 どうする私たち」集会では、医療や地方自治体、保険者の立場から問題提起を受けた。(当日の資料やビデオはこちら
 マイナ保険証に対しては、保団連(全国保険医団体連合会)による大規模な調査活動と、加盟する各地の保険医協会による医療現場からの問題指摘によって、厚労省が説明してきたマイナ保険証のメリットが実現できていないことが明らかになってきた(5月以降のトラブル調査報告はこちら)。
 医療機関では効率化するはずの窓口事務は、かえって手間がかかり患者とのトラブルが起きている。マイナ保険証で正確な医療保険資格を確認できるはずが、表示の誤りが多発して健康保険証を使って確認している。地域医療を長年支えてきた診療所では、経済的負担やセキュリティ確保への不安からシステム導入を機に廃業するところもでている。
 高齢者・障害者・施設入所者・DV等被害者などにとっては、マイナンバーカードの取得・利用・管理そのものが困難だ。「誰一人取り残さないデジタル化」のはずが、申請が必要なマイナ保険証や「資格確認書」では保険医療から排除されかねないことが浮き彫りになってきた。

 その一方、12月2日の健康保険証新規交付終了が迫る中で、マイナンバーカードの実務を担うとともに国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険者でもある地方自治体や、資格確認書交付やマイナ保険証の登録解除の実務を行う保険者への取り組みが重要になってきた。
 そこで集会では「地方自治体から健康保険証の存続の声を」のアピールを作成し(こちらを参照)、

・政府に対して健康保険証利用の存続・延長を求めること
・マイナ保険証を利用せずに保険診療が受けられることを住民に周知すること
・保険者として資格確認書の交付やマイナ保険証の登録解除を確実に行うこと

などの取り組みを地方自治体に訴えた。
 その後私たちは、自治体議員の研究会(こちら)や首都圏各地の学習会で問題提起を行ってきた。

 なお同じく8月31日には「地方自治と地域医療を守る会」によるシンポジウム「マイナカードと保険証の一体化による実害を考える」も開催され、自治体からの問題提起もされた(当日の模様はこちら)。当日の議論は弁護士JPニュース(こちら)で紹介されている。

 9月2日には木村真豊中市議・高木隆太高槻市議・難波希美子能勢町議の呼びかけで、各地の自治体議員200名以上が連名で総務・デジタル・厚労の各大臣に対し、「現行の健康保険証の廃止・マイナ保険証への一本化を強行しないよう求める申し入れ」を行った。
 現行保険証とマイナ保険証の併用を続けるとともに、12月以降も手元にある健康保険証は有効期限まで使えることや、資格確認書で保険診療を受けることができることなどの周知・広報を求めた。
 しかし厚労省・デジタル庁の担当者は、「マイナ保険証は医療DXのパスポートとしてより良い医療を可能にするもので、このメリットを早期に最大限発揮するため12月2日からマイナ保険証を基本とする仕組みに移行する」「マイナ保険証への移行は、マイナカードを持たない人も含め全ての人が安心して確実に保険診療が受けられるよう対応する」という説明に終始した。

 自治体からは健康保険証の存続等を求める意見書が、共通番号いらないネットの調査で2024年11月15日現在、自治体の1割を超える213議会から国に提出されている(自治体や意見書概要はこちら)。

 政府は12月以降も最大1年間健康保険証が使えるとか、マイナ保険証がなくても「資格確認書」で保険診療が受けられると言いながら、もっぱらマイナ保険証の利用促進ばかりをPRしてきた。2024年10月から開始予定とされたマイナ保険証の登録解除については、政府・保険者からほとんど宣伝もされなかった。
 そのため、12月からマイナ保険証がないと保険診療が受けられなくなる、との誤解が広がっていた。
 私たちは緊急の取り組みとして、「マイナ保険証はなくても大丈夫!」と訴えるチラシを作成し、各地での配布を訴えた(こちらからダウンロード)。

  ↑ マイナ保険証チラシNo1(2024年9月16日発行)
  ↑ マイナ保険証チラシNo2(2024年10月25日発行)


 チラシの裏面には8月31日集会の資料「これで安心!12月からどうなる保険証?あなたどうすれば?」を掲載し、マイナ保険証の所持の有無など一人一人の状況に応じて、マイナ保険証の登録解除、健康保険証新規交付終了、健康保険証の有効期限終了や失効、そして来年12月の健康保険証の利用終了の時期に応じて、どのようにすればマイナ保険証を利用せずに保険診療が受けられるかを説明した。

 共通番号いらないネットでは、毎月新宿駅南口で宣伝活動を行ってきた。活動の模様は「こばと通信 -声を上げる市民」の協力によってユーチューブで公開されている。
 今年は各地の団体とも協力しながら、5/19横浜駅7/21新橋駅9/29中野駅10/27王子駅11/17蒲田駅などにも宣伝活動を広げ、また健康保険証廃止に賛成・反対のシール投票なども行ってきた。