10月13日に河野デジタル大臣が2024年秋に健康保険証を廃止を目指すことを表明したことに対して、11月17日12時30分から14時まで衆議院第ニ議員会館で、「保険証廃止反対!オンライン資格確認・マイナンバーカード強制反対!」緊急院内集会が開催された。
200名超が会場を埋めつくしたほか、ライブ配信での視聴者を合わせ400名を超える参加者となった。
当日の模様は、以下で見ることができる。
▼zenrorenweb⇒こちら
▼Movie Iwj(INDEPENDENT WEB JOURNAL)⇒こちら
また、当日の資料はこちらからダウンロードできる。
院内集会では、保団連(保険医団体連合会)住江会長の挨拶のあと、各団体から
・共通番号いらないネットより、健康保険証廃止とオンライン資格確認等システム原則義務化の経過と内容からみた問題点
・東京土建一般労働組合社会保障対策部より、健康保険証廃止で想定される影響
・東京高齢期運動連絡会より、国会審議もなしに高齢者に使いづらいシステムがつくられること
・東京保険医協会より、オンライン資格確認等システム導入義務化の問題点
・神奈川県保険医協会より、一連の計画であるオンライン資格確認の原則義務化とマイナ保険証の実質義務化の、撤回運動の意義と取り組み
・マイナンバー違憲訴訟全国弁護団より、マイナ保険証の強制は番号法に違反し、所持を義務化する法改正は憲法違反13条になることやマイナンバーカードの危険性
についてなどの発言があった。
また立憲民主党や共産党の国会議員から、保険証廃止やオンライン資格確認義務化に反対してともに闘うとの挨拶があった。
●マイナ保険証とオンライン資格確認原則義務化の経過
共通番号いらないネットからは、健康保険証廃止とオンライン資格確認等システム原則義務化の経過と内容をまとめた資料(20221117.pdf⇒こちらからダウンロードできます)を示しながら、経過から見えるマイナ保険証の疑問・問題を指摘した。
今年の4月にオンライン資格確認システムを使うと患者の負担が増える加算を導入して大きな批判を浴びて以降、政府のやっていることは二転三転し迷走している。2兆円の予算をかけたマイナポイントでもマイナンバーカードやマイナ保険証の普及が政府が期待したほど進んでいないにもかかわらず、それを反省し計画を見直すのではなく、逆に来年3月の医療機関へのオンライン資格確認システムの原則義務化と2024年秋の健康保険証廃止を打ち出し、強引にマイナンバーカードを普及させようとしているのが10月13日の河野大臣記者会見だ。
●説明もできない乱暴な廃止方針
6月に閣議決定した「骨太の方針」(32頁)では、2024年度中は保険証発行の選択制の導入を目指し、オンライン資格確認の導入状況等を踏まえ保険証の原則廃止を目指す、ただし加入者から申請があれば保険証は交付されると明記していたにもかかわらず、それをわずか4カ月で変更した理由も説明していない。
実施のための細部を検討せずに保険証廃止だけ決める乱暴な方針で、これがデジタル庁のやり方だ。デジタル庁の担当者は「廃止に向けた詳細は今後検討する」「廃止の期限を決めないとPDCAを進められない。日本政府らしくないかもしれないが、アジャイルの観点で2024年秋に廃止する方針を決めた」と説明しているそうだ。デジタル庁はこのような「アジャイル・ガバナンス原則」を構造改革のためのデジタル原則の一つとして、規制改革・行政改革を進めようとしている(⇒こちら)。
●メリットを感じないマイナ保険証
河野大臣も岸田首相も「マイナンバーカードの取得の徹底」を言うが、番号法で申請は任意で所持は自由なマイナンバーカードの取得を、なにを根拠に「徹底」させようとしているのか。
「マイナンバーカードはデジタル社会のパスポート」と繰り返しているが、それはどういうことか。持っていないと生活できなくなる社会をつくろうとしているのか。2021年のデジタル法改革で平井元デジタル大臣が、「デジタル社会は多様な幸せを実現する社会で、マイナンバーカードを活用しない生活様式を否定するものではない」と答弁していたのは嘘だったのか。
マイナカードへの「一本化」で利便性が向上すると言っているが、一本化にデメリットを感じる人の選択は認めないのか。
マイナ保険証で患者はよりよい医療を受けられるメリットがあると言うが、政府の調査でもマイナ保険証を申請した人の88%はマイナポイント欲しさで、メリットは感じていない。特定健診情報の閲覧同意は、1年たってもマイナ保険証を持っている人の1割となっている(社会保障審議会医療保険部会2022年10月28日資料3の利用状況より算出)。
●マイナカードを持ち歩くのは危険
政府は私たちの感じるマイナンバーカードへの不安は「漠然とした不安」だと言う(10月13日官房長官発言等)。法に定めのない個人番号の提供・利用等を禁止しながら、「番号を知られても危険はない」などと言い出している。
しかしマイナンバーの付番が間違ったり(こちらの3頁)、マイナ保険証でも使う電子証明書が複数搭載されマイナポイントが複数付与される事件(こちら)が起きており、マイナ保険証は大丈夫なのか。
マイナカードと暗証番号がセットになるとマイナンバーで管理するあらゆる個人情報(「わたしの情報」)が漏洩することを認めながら、政府はそれは暗証番号の管理が悪いからと言っている(詳しくはこちら)。しかし16桁を含む4種類の暗証番号など覚えられず、メモしてカードと一緒に持ち歩いて被害を受けても自己責任だといえるか。マイナポータルの利用規約は、被害が出ても自己責任で利用者はデジタル庁にいかなる責任も負担させないと規定している。暗証番号を記憶する自信がなければ、マイナンバーカードを持ち歩かない方がいい。
マイナポータル利用規約
第3条 システム利用者は、自己の責任と判断に基づき本システムを利用し、本システムの利用に伴って生じる以下の情報及び利用者フォルダを適切に管理するものとし、デジタル庁に対しいかなる責任も負担させないものとします。
一 やりとり履歴
二 わたしの情報
三 お知らせ
四 手続の検索・電子申請
五 その他、システム利用者が閲覧、取得し管理している電子情報
●失敗したマイナカード普及策
政府は来年3月までに全国民にマイナンバーカードを所持させオンライン資格確認システムを利用させるという方針を2019年6月に決めて突き進んできたが、「2024年秋を目指す」と表明したことはその方針が達成できなかったことを認めるものであり、方針そのものを見直すべきだ。
いま政府は私たちの不安や疑問を聞く力もなく、説明責任も果たさないまま暴走している。このような暴走に対しては、私たちマイナンバー制度に反対している者だけではなく、今までマイナンバー制度を推進していた有識者からも、疑問や批判の声が上がり始めている。この暴走の行き着く先は、命と健康と人権が脅かされる監視社会だ。そのような社会を作らないために、健康保険証の廃止・オンライン資格確認の義務化・マイナンバーカードの押しつけを止めさせなければならない。