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「場」を持つということ
7月の円卓会議では、「西陣」をテーマにみんなで語り合うこととなった。今まで、西陣織に関わる方々の取材をし、ウェブに掲載するという、地味な仕事をしてきた西陣プロジェクトにとっては、初めての晴れの舞台となる。今から、とてもわくわくする。
会社組織にしろ、市民活動にしろ、こうして「場」を持つということは、極めて大きな意味をもつ。そのためには、そこにいるひとたちが自由に自己表現をすることができることが必要である。

メーリングリストなどのようなバーチャルな場も、重要な役割を果たすが、実際にそこに人がいることにはかなわない。バーチャルな場は距離が離れていたりタイムラグがあったとしても成立しうる反面、逆に人間関係が希薄でも成立してしまうから。

実際に人が集まる「場」を設けると、そこに来る人たちは、わざわざそのために時間を割き、足を運ぶことになる。各々の考えや思想、ストーリーを抱きながら。足を運ぶ中で、各々がモチベーションを高揚させ、何らかの期待をしつつ、その場に臨む。そして、それらがぶつかり合う。実際に顔を見たり、空気を感じたり、世間話をしたりすることによって、そこにいる人たちは、スピーカの話すことすべてを包含する価値観が計ることができる。そして、それらはぶつかるだけではなく、混ざり合い、刺激しあい、新しい可能性を生むきっかけにつながる。そこには、新しいエネルギーが創出される。

ものづくり塾も、各々の思いを抱きながら、40余名もが在籍している。これも大切な「場」である。各ワーキンググループでメンバが交流し、思いをぶつけ合う機会を持つことができるようになり、今まで徐々にではあるが、成熟してきている。手探り状態で始めた各グループもその輪郭を明確にしつつある。確実に進歩している。それは、メンバが意志を疎通させる場があったからに他ならない。

しかし、初年度は、不定期に行われるミーティングはあったものの、全体の方向性を具体的に定める企画もなかったため、方向性が定まらず、混迷していた。各メンバの思いをぶつけ合うことがなかなかできなかったのが大きな原因だろう。

もちろん、ただ個性をぶつけ合うだけでは前には進まない。各々の意見全体を包含しつつ、あるべき方向へ導いていくコーディネータ役の存在が必要である。和楽では、その役割を雅楽之助が見事に演じている。

西陣円卓会議では、ものづくり塾がその役割を果たさなければならない。
西陣の方々には、様々な関わり方があり、それぞれに思いを持っている。「西陣はもうつぶれても仕方ないんや」というひともいれば、「西陣の業界を変えるんだ!」という熱い思いを持っている人もいる。それら十人十色の思いを理解し、西陣全体を包含し、あるべき方向へ導いていかなければならない。ものづくり塾は、まだまだ力不足かもしれない。でも、今まで西陣が混迷しているのも、コーディネータが不在であることに大きな原因があるのだから。私たちがやらなければ、誰もやらない。

とにかく、じっとしていても仕方がない。まずはやってみることにしよう。第1回西陣円卓会議へと準備を進める。新しい西陣への希望と緊張を乗せつつ...
▼INDEXへ 2001. 6. 2.