この陳情は、沖縄県政を糾す有識者の会・国旗国歌推進沖縄県民会議(恵忠久会長)か昨年9月21日付けで県議会に提出した陳情書であり、その内容は「県から給与・運営資金など何らかのかかわり合いのある外郭団体においては、一坪反戦地主会や過去においてその団体の一員であった者は、役員から即刻排除するよう強く求める」とし、特に、平和祈念資料館監修委員、県公文書館役員、県教育委員などからの排除を明示している。新平和祈念資料館や八重山マラリア記念館の展示改ざん問題が県民の大きな反発を受けていた時期に提出されたこと、また、陳情書提出者が「監修委員の中に一坪地主がいる。知事も監修委員を代えやすいだろうと考えた。」と認めているように、誤った県政運営で県民の集中砲火をあびていた稲嶺知事を応援するために出された陣情であり、陳情の事実関係にも多くの誤りがあるにも関わらず、無修正のうえ、与党が多数決により強行的に採択したことは極めて遺憾であり、県議会に対する県民の信頼を大きく傷つけた「歴史的汚点」である。
日本国憲法は、第13条で国民は立法その他の国政の上で個人として尊重され、第14条は国民は法の下に平等であり人種、信条、性別、社会的身分による政治的、経済的又は社会的に差別を禁止、第19条は思想及び良心の自由を侵してはならない、第21条は言論、結社、表現の自由は保障する、と規定している。このように憲法が保障する権利をことごとく否定し、民主主義を根底から覆す今回の陳情が、一坪反戦地主という特定の団体だけに止まらず、政府や県政に反対する意見を持つ団体すベてに該当することを県議会が認知したことは由々しき問題である。
自治労沖縄県本部は、この度の県議会の陳情採決が単なる特定団体の排除というだけの問題ではなく、民主主義と人権を無視した政治、思想・信条による社会的差別という重大な問題であるとの立場から強く抗議するとともに、特定の主義・主張に加担し、反対意見や少数意見を排除することに県議会が手を貸した今回の陳情採択について、再考と反省及び速やかな採決の取り消しを求めると同時に、再度、県議会の中で論議をやり直し、県議会に対する一日も早い信頼回復に努めるための行動をとることを求める。
2000年4月4日
沖縄県議会議長 友寄信助殿
自治労沖縄県本部
執行委員長 大城治樹