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 第182号(2006年10月28日発行)

 <仲村市議が初質問>
  防衛庁に絡めとられた名護市長

         仲村 善幸(名護市議会議員、ヘリ基地反対協事務局長)

 名護市議会議員選挙後に初めて行われた九月定例議会は、最も焦点となるはずの普天間基地移設問題を取り上げたのはわずか四名の議員で、議論も十分に深まらず市民の期待を裏切る形となった。

 私は最初の質問で、「キャンプシュワーブ内の遺跡調査をはじめ建物調査、環境予備調査が現に行われ基地建設に向けた作業が現に進んでいる最中に、市長が議会開会にあたって何のコメントもしないのはおかしいではないか」と質したが、市長からの答弁は一切なかった。

 今回の質疑で、「新沿岸案」受け入れが選挙公約違反であるだけでなく、政府・防衛庁に完全に絡めとられ、市民に背を向ける島袋市長の姿勢が一層鮮明になった。合意した「新沿岸案」は政府案とほぼ同じ場所であり、滑走路を2本(V字型)にすることで大浦湾と辺野古沿岸リーフ内にさらにせり出し、より拡大した巨大な軍事基地となっている。しかもそれによって藻場(*)が大きく埋め立てられ、大浦湾側は軍港化される可能性が高くなった。

 市長は四月七日の合意に至る間、防衛庁に呼び出され追い詰められることで、「沿岸案反対」を「現行案(軍民共用空港)のバリエーションの範囲」「辺野古、豊原、安部(あぶ)の上空飛行を回避することが譲ることのできないライン」と主張をすり替え、V字型という奇策で政府案に全面譲歩させられたのである。その合意案を「現行案のバリエーションの中におおむね含まれる」ので「公約違反ではない」と自己弁護を繰り返す島袋市長は、すでに市民側には立っていない。

 市長が唯一、市の意見を反映したという「使用協定」(**)は、「市、県、国との間で締結する」と答弁しているが、米軍と締結しない協定がどんな意味を持つのか。ザル法であることは明白であり、米軍の演習をスムーズに実施するための「騒音防止協定」以上のものではないことは明らかである。嘉手納や宜野湾の現実がその証拠である(***)。それ以上の協定が可能になるのは、安保条約と地位協定の改定による以外にない。市民を欺く市長の答弁を、さらに徹底して追及していく必要がある。

 最後に私は「市長は県外移設が望ましいと言っているが、名護への移設はほんとうは望ましくないということか」と質問し、市長は「私もできるなら県外移設が望ましいと思うが、現状を踏まえ熟慮に熟慮を重ね合意した」と答弁した。どのような現状を踏まえたのだろうか。誰のために、何のために、何を熟慮したのだろう。いったいどこの市長なのか。

 なんとも情けない答弁である。沖縄県民、名護市民は今、政府の言いなりになってはいけない。長いものに巻かれてはいけない。再び戦争の時代に向かう危険な状況の中で、平和な沖縄、平和な社会をつくる闘いを押しとどめてはならないのだ。普天間基地の即時撤去、県内移設阻止、米軍再編反対に立ち上がろう。

 今回の議会に臨んで、住民運動なくして議会活動はないという原則を痛感させられました。私も議会内外での闘いを担っていく決意です。共にがんばりましょう。


*もば 海草や海藻類が繁茂している海底。辺野古ではアマモが群生している。
**使用協定 今年四月七日の名護市長と防衛庁長官との基本合意書第四項。「政府は、平成一四年七月二九日に合意した『代替施設の使用協定に係る基本合意書』を踏まえ、使用協定を締結するものとする」。
***嘉手納や宜野湾の現実 日米合同委員会による普天間・嘉手納騒音防止協定や日米特別行動委員会最終合意の「普天間飛行場における夜間飛行訓練の運用制限」が存在する。だが実態は「米軍の運用」優先で、特に9・11以降は空母艦載機の騒音がさらにひどくなっている。