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『一坪反戦通信』
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 第177号(2006年4月28日発行)

ひんぷん

沖縄県東村高江区より
山原の自然と暮らしを守りたい!

文:安次嶺 雪音


 私たち高江区民が今回のヘリパット移設の計画を知ったのは、今年(二〇〇六年二月一〇日)の新聞報道によってでした。突然振って沸いて出た様な今回の計画に、ただただ驚くばかり。それまで、区民に対し対しどこからも何の報告もなかったのです。

 一九九九年にも今回の計画とは違う箇所への移設の話しはあったのですが、それは高江区民と東村の強い反対によりいつのまにかなくなっていました。(本当はもっとふさわしい場所を模索していたのかもしれませんが)。そして、区民が安心して平和な暮らしをしていた矢先の今回の計画。あまりにも強引で勝手な米軍と日本政府のやり方にただただ腹が立つばかりです。

 ここ東村高江区とは、沖縄の希少な動物や植物が沢山残っている自然豊かな地域です。また、水もきれいで豊富なので、県内の水のほとんどがここ東村のダムから送られています。そして、最近はヤンバルの自然の中で心豊かな暮らしを求め、のびのびと子供を育てたいと、高江区に移住してくる家族が急増しています。今まで過疎の村だったここ高江区が自然を壊し大きい建物を建てるのではなく、高江区ならではの豊かな自然を生かした暮らしを中心に盛り上がって来ているというそんな素晴らしい傾向に向かっている所へ、部落を囲むように六箇所ものヘリパットが出来てしまえば、心豊かな生活どころか毎日の騒音とヘリや米軍車両による事故の多発に恐怖と不安な気持ちでたまらなくなる事でしょう。(実際現在も一ヵ所あるヘリパットでの訓練による騒音はものすごく、低空飛行で夜間も無灯火で部落の上空をおかまいなしに飛んでいます。)

 ヘリパット建設予定地のほんの一・七キロ先には高江小中学校があり、飛行訓練の際の事故の危険はもちろんの事、子供たちの心の成長にも影響してくるのではという不安もあります。毎日ヘリコプターが低空飛行して飛んでいる爆音を聞いて育つ子供の心は一体どうなってしまうのでしょう。私達が自然を求めて静かな環境で来た事とまるで正反対の方向へ進んでしまうことにやりきれない思いでいっぱいです。

 先日、実際にヘリコプターの事故や爆音に長い間悩まされ続けている宜野湾市へ行き、市長や最も爆音のひどい上嘉数地区の自治会長さん等、数名の方々にお話を伺いました。現状はヘリが数分おきに頭上を通過していき、爆音のひどさに会話も全く聞こえないくらいだそうです。中でも一番印象に残ったのは、沖縄国際大学にヘリが墜落した事故が起きた時、現場のすぐ向かいの家にいた主婦のお話でした。子供とお昼寝中、たまたま友人から電話がかかり話をしていると、突然その友人が「ヘリコプターが落ちるっ」と言うので窓の外を見ると大きな黒い影が見え、慌てて子供(生後六ヶ月)を抱きかかえて逃げ、しばらくして家に戻ってみると、コンクリートやブロック、金属等あらゆるものの破片が家中ちらばっておりテレビにも大きな穴があき、子供と昼寝をしていた布団の上も破片だらけで唖然としたというお話しを涙ながらにしてくれました。同じ子供を持つ親としては人事とは思えず、そんな危険な米軍の訓練場を沖縄のどこにも、日本のどこにも作るべきではないと強く思いました。また、その方がこうもおっしゃいました。

 「宜野湾市の普天間基地はすぐにでもなくして欲しい。でもまた新しく基地が作られ自分達と同じ思いをする人たちが新たに出ると思うと、このままここにあったほうがいいのではないか?とさえ思います。」

 住民を危険にさらし、平和で穏やかな普通の暮らしを奪ってまで、本来その事を一番大切に思うべきである日本政府がどうして米軍の基地を作ろうとするのか。ただただ不思議でなりません。反対の声を上げることがまるで悪いことのようなこの国の雰囲気も不思議です。

 何も贅沢をしようなんて思っていません。自然の中で心豊かに笑って暮らしていきたい。その暮らしを守りたいだけなのです。そして何よりもこの自然を未来の子供達に残したい。ただそれだけなのです。

(写真提供は本永貴子さん。看板や幟は住民が子ども達と一緒に作った。)