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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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『一坪反戦通信』
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 第169号(2005年7月28日発行)

新刊紹介 

『沖縄県の百年』

金城正篤、上原兼善、 秋山勝、仲地哲夫、大城将保

山川出版社 ; ISBN: 4634274701 ; (2005/04)

 −−政治・経済史と社会・民衆史の融合−−

 本著は、「琉球王国末期の、1840年代ごろから・・・1972年の「復帰」前後までを叙述の射程におさめ」、「沖縄の近・現代史」を通しての「通史の一つの試み」として編まれた。実際は、復帰後の沖縄振興開発計画の破綻、基地問題とそれに対する抗議運動の激化まで記述され、2004年までの、ほぼ1世紀半以上をカバーした分厚いものとなっている。「一 “世替わり”の胎動」「二 明治維新と沖縄」「三 初期沖縄県政と旧慣温存政策」「四 天皇制国家の支持基盤の形成」「五 明治後期から昭和初期の社会と文化」「六 戦争への道」「七 沖縄戦」「八 米軍統治から日本復帰へ」と、大きく八部分に分かれ、金城正篤・上原兼善・秋山勝・仲地哲夫・大城将保氏の五名が分担執筆している。沖縄の近現代史専門家による内容の詳細さ・正確さは改めて指摘するまでもないが、特に、近代史における「琉球処分」から「旧慣温存」期の政治・経済分析の研究蓄積に加えて、社会の変動、労働、移民、文化、といった社会史・民衆史の研究成果が織り込まれ、政治・経済史と社会・民衆史の融合した全体史が目指されているように思われる。女性労働、沖縄戦、民衆運動などの説明には当時撮影された写真が、また移民、基地化ではその実態を明示する図表が、挿入され、視覚的・具体的に状況が理解できるよう工夫されている。

 政治・経済史の分析と社会の変化が組み合わせられた結果、近代における「日本化」の実態が、「上から政策として進められ、また下からも積極的に呼応する形」として説明されている。大筋としてこのように整理されるのかもしれないが、言語・文化実践の「日本化」の浸透が地域・階級によってかなり異なっていたと本著でも指摘されているように、実際は、政府・県政による政策としての「日本化」と、沖縄の対応との関係は、かなり襞(ひだ)のあるものだっただろう。また、現在急速に研究が進められている分野であるとはいえ、戦後史の記述が少ないのは残念である。

 沖縄戦、米軍統治、復帰運動、その後の反戦・平和運動へ、という流れを考えると、沖縄が自らの展望を切り開こうとするとき、日本・「日本化」・アジアとの歴史的関係を捉え直そうとする文化・思想の動きがあるように思う。本著が、近現代を通じての「日本化」の問題や、沖縄戦における「祖国から強制連行された朝鮮人「軍夫」・「慰安婦」」といったアジアへの加害の問題に、しっかり向き合おうとしていることは、沖縄の自己認識の新しい展開をはっきりと示している。(A.M)