軍用地を生活と生産の場に! |
沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック |
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『一坪反戦通信』 |
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第168号(2005年6月28日発行) |
アジアの連帯で平和実現へ日韓シンポがソウルで開催「韓日国交樹立40周年韓日平和シンポジウム」が去る6月25日、ソウルで開催されました。テーマは〈東北アジアの平和実現への模索〉。「戦争を越えて平和へ! 過去を越えて未来へ! 敵対を越えて和解へ!」というかっこいいサブ・テーマがついていました。 日本から28人のメンバーが参加し、私もその1人として関東ブロック代表でレポート(「コメント」)しました。 このシンポは、韓国や中国からの対日批判の高まりの中でこそ朝鮮半島やアジアの人々との市民・民衆間の交流と連帯を強め、真の和解と平和・友好の関係を築く出発点をめざそう——というもの。「朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、日韓条約から40年を問う2005年運動」が呼びかけたものです(日韓民衆連帯全国ネットワークなど6団体が連絡先になっている)。 シンポ会場はソウルの国会内、図書館講堂。 冒頭に民主主義民族統一全国連合のオ・ジョンニョル議長が挨拶し、「こうした試みは10年以上続けられてきたが、国会でやるのは初めて」と述べました。 「日本は東アジアに戻るべきだ」 日本側参加の稲見哲男議員(衆議院、民主党)も「日韓関係は気まずく、深刻な局面にある。日本・韓国・アジアとの連帯でこれを打ち破っていく闘いで『明日のアジア』を築こう」と挨拶しました。 オープニング基調講演で、韓国側のカン・マンギル高麗大学名誉教授が、東北アジア共同体形成を主張。皆さん予想していたのでしょうか?私には衝撃的講演。この大きなフロシキ(良い意味で)に果たして包み込まれていいものかどうか、この後の討論でも慎重論、留保意見も出されました。 同氏は「日本は脱亜入欧してアジアの平和を破壊し、その結果不幸になった。今、脱亜入米せずに東アジアに戻ることがアジアの平和実現の鍵。日本は二世の国民を平和主義者に教育しなければ文明国たりえない」と語りました。また国民国家相互が争うのでなしに、その境界を低くして地域共同体化することで平和実現が可能になる。日中韓3国はこれまで争いはあったものの、「東洋3国」であり文化的にも近く東北アジア共同体構成が可能。朝鮮半島の南北統一が日米寄りまたは中ロ寄りで実現されるのではいずれも均衡が崩れる」とも発言。さらに、日本の軍事大国化に反対している人々もいるが、真剣に身を挺してはいないのはいかがなものか——という趣旨の発言は、私にも厳しい内容でした。 日本側から荒井信一氏(茨城大学名誉教授)は、「韓国併合条約は不法・無効との条約。その不法・無効の訴えを門前払いした当時の国際法体系はpeace without Koreaに過ぎなかった。もしその訴えを受け入れていたら世界史は変っていたかもしれない。7年後の第一次大戦で3,000万人が死ぬことはなかったかもしれない」と講演。彼は戦後日本の「平和主義」もpeace without Okinawaに過ぎない、と述べました。 また彼は1965年の日韓基本条約締結時に、その第2条の旧条約無効規定をめぐって両国が別々の解釈で国内に説明した、と明らかにしました。最近、キム・ジョンビルが当時のこの食い違いのことを、知っていて敢えて締結したと言っているNHKの放映を私も観ました。彼によれば、旧条約当時の国際法はそもそも強者・日本が締結を強制した帝国主義時代の「力の論理」。アメリカもいさぎよくハワイ王国打倒謝罪決議で100年前のアメリカ政府の国際法違反を認定・謝罪したように、日本政府も65年条約の改正かまたは旧条約無効の宣言ないし国会決議をしてはどうか——というのです。 「韓国にも一坪共有運動あり」 この後、(1)東北アジアの秩序変化と対応の方向、(2)記憶をめぐる闘い、東北アジア平和のための試練——の2つのテーマで討論。 (1)のテーマでは日韓ネットの渡辺健樹氏も発言、●「平和文化ベルト」、柔らかい文化でアジアの平和体制形成が可能であり、その足かせであるアメリカの存在を抜きにして解決はありえない●ノムヒョンの戦略的柔軟性は「事大主義を助長」とはいえない●米国はひたすら自国利害。ささいな相手国理解はこれっぽちもない●多国間安全保障では米国の政策放棄を——などたくさんの発言がありました。 私は沖縄の反戦地主・一坪反戦地主について紹介し、軍用地強制使用についてふだんからとりくんでいる運動の実情について話しました。 浦島悦子さんがこの後、「辺野古の海からやってきました」と自己紹介。単管の第5やぐらで毎日闘っている彼女は「辺野古の海がどんなに美しいか、改めて毎日感動している」と述べ、「米軍再編は沖縄の基地負担軽減することを目的にするものではありえないから期待はできないが、沖縄では負担軽減を期待している人もいます」と語りました。 (2)のテーマでは「日本における歴史認識をめぐる論争と闘い」と題する西野瑠美子氏の発言が論旨明快。矢野秀喜氏の強制連行企業裁判のレポートと反天連から桜井大子氏の問題提起もありました。「日本からヒントを得たのかもしれないが、韓国での反基地闘争でも一坪共有運動がある」という発言もありました。 この後の討論で渡辺健樹氏は、個々の運動交流を太く大きいものにぜひしていこうと発言。 フロアから「質問」として、東アジア共同体とか「東北アジア共同の家」構想が言われているがその共同体・家を実現したとしてそしてどうするのか——という発言がありました。 この後、本年7月以降の11月APEC釜山会議反対行動など5項目について日韓共同のとりくみとすることを確認し、閉会しました。 グローバリゼーションとFTA 冒頭の基調講演でまさかの東アジア共同体形成論。予想外でした。これは無視できない提起です。現実性は十分にあると、私は思います。ただし日中韓は類似文化圏ですが、ASEAN諸国はイスラム圏もあり、そう簡単ではないでしょう。 しかし米軍・米国がこれまでも関与し、冷戦後も「不安定の弧」制圧を戦略的環に据えています。97年の信用危機の時もIMF、ワシントン・コンセンサスが強力に介入しました。却ってこのアメリカ・スタンダード強制が、混乱と危機拡大を結果し、韓国人民もこの反IMF・グローバリゼーションと闘って危機からの回復が実現できた経過があります。 この外からの強制・攻撃に対して、東アジアの内側から荒々しく押し出てくるエネルギーは自分の解放へのエネルギーを含んでいます。これを見まいとして無視すべきでしょうか? アジアで国民国家の障壁を低くして地域共同体が形成されるならば、米国はアジアではないから除外されます。米軍・米国はNAFTAあるいは拡大NAFTAの地域共同体へ進むでしょう。 アジアからの反グローバリゼーションであって、しかも国民国家に戻せと言うのではないものです。APECと同一視して、これに反対するというわけにはいかないものです。 北朝鮮の「ソフト・ランディング」から逆算して「アジアの家」を構想していると勘ぐる人もいるようです。しかし「被抑圧」側の解放を願うナショナリズムがその背後にないでしょうか? たしかに東アジア共同体は多国間FTAです。その内部ではアメリカ・スタンダードでないとはいえ、グローバリゼーションの嵐が吹くに違いありません。労働力移動もこれまで以上の規模で起こされるはずです。たしかにこれは「新たなアジア主義」です。米国の関与・強制に対抗するという意味での「アジア主義」でもあります。 シンポのフロアからもあったように、それが形成できたとしてそれでどこへ行くのか?という疑問が湧きます。その先には断固たる階級闘争の展開が待っている、そこへ向かって我々は今、進もうとしているのではないでしょうか? (Y)
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