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『一坪反戦通信』
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 第167号(2005年5月28日発行)

【報告 沖縄から】

米軍再編問題

 沖縄側では一般に、六月二十三日(慰霊の日)、小泉首相の口から「サプライズ」発表がある、あるいは、日米両政府の在日・在沖米軍の再編協議で「負担軽減」が実現する、という期待感がある。しかし、同時に、悲観的見方や「あきらめ」感もある。

その再編問題の一端を示すだろう動きを二点、まず、紹介させてください。

 一、 五月二十四、二十五日開かれた審議官級協議(ワシントン):報道によると、今年二月の外交・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を受け、三回目の審議官級協議が五月二十四、二十五日の二日間、ワシントンで開かれ、「米軍と自衛隊の統合運用のあり方、個別の在日米軍基地が担う戦略的な役割などについて話し合った」「米軍と自衛隊の役割・任務の分担のあり方や個別の在日米軍基地の再編案を集中的に論議した。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移転案見直しなども検討されたが、結論には至らず、引き続き協議することになった」という。協議には日本側から梅本和義北米局参事官(外務省)と山内千里防衛局次長(防衛庁)ら、米国側からローレス国防副次官らが出席(以上、朝日・五月二十六日夕刊)。

 あるいは、「七月以降に外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、役割分担などに関する合意文書を取り交わしたい考え。ただ、沖縄の負担軽減や、在日米軍基地の具体的な見直し案をめぐる調整は難航。特に、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)返還に伴う移設問題の扱いなど、政治的に難しい問題が残されており、今後の協議は曲折が予想される」(共同通信・五月二十五日)とも伝えられる。

 「沖縄の負担軽減」がテーマになっているようには思えない。要するに、日米協議は、自衛隊と米軍の「役割分担」の明確化、自衛隊の沖縄への本格的展開と、米国側既得権益との調整にすぎない。


 二、 「日米共同対処計画」:日米両政府が七月以降の2プラス2で正式に合意すると伝えられる同計画について、共同通信(五月十八日)は、次のように伝えていた。

 計画は数年かけて策定し、有事に米軍が使用できる空港、港湾などの施設を明記する。政府は米軍への協力を強化し、見返りに沖縄などの基地負担軽減を目指す構えだ。二月の2プラス2で合意した「共通戦略目標」に台湾海峡問題が盛り込まれたことに中国は反発しており、共同対処計画が台湾海峡有事を対象とするかどうかが最大の焦点になる。

 共同対処計画は、在日米軍再編で協議している米軍と自衛隊の役割分担の一環と位置付けられ、日本有事を想定した「共同作戦計画」と、周辺事態に関する「相互協力計画」からなる。一九九七年に改定された「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)は、両計画の「検討」を明記した。

 政府はその後、有事の際の米軍使用施設の選定を進めたが、関係省庁や自治体との調整は進展しておらず、米側は日米審議官級協議などで、確実に施設を使用できるよう強く要求。政府は米側の要求に応じなければ基地負担の軽減は困難と判断、使用施設の事前指定作業を加速させることにした。

 何のことはない。沖縄の基地負担軽減は、日本政府の協力「有事に米軍が使用できる空港、港湾などの施設」提供の「見返りに」過ぎないわけだ。

 このような動きに、憲法「改正」政治勢力による集団的自衛権確保のたくらみをも重ね合わせると、日米両政府は、法的整備も含め、日本の参戦準備を着々と整えていることが分かる。

 確かに、このように、状況は厳しい。しかし、日米両政府を相手に、この一年間以上もの間、辺野古現場での陸上・海上で「座り込み」に取り組む人々を中心に、私たちは、海上基地(普天間飛行場代替施設)建設のための海底ボーリング調査(現地技術調査)、六十三カ所のボーリング調査のうち、一か所たりと、ボーリングという海底を掘削する工事をさせてない。それどころか、沖縄県知事だけでなく、最近では、県議会与党さえも、「米軍普天間飛行場の県外・国外移転を政府に求め、日米特別行動委員会(SACO)で合意した名護市辺野古沖への移設計画を事実上見直す方針を決めた」(沖縄タイムス 五月二十四日)。

 ところで、たとえば、(1)いま、日本で、経済制裁や軍事力を背景に問題解決をはかろうとする社会意識が充満しつつあるように見えるが、何故なのか、(2)あれだけの戦争体験を強いられた沖縄の地で、自衛隊に対する拒絶意識が弱まったように見えるが、何故なのか。

 軍事力による平和抑止という考え方にとって代わるべき、軍事力によらない平和抑止という考え方を一歩でも、二歩でも前進させたい。

 自然環境保護運動と反戦平和運動との共闘を広げながら、いま、何としても、自衛隊の沖縄への本格的展開を拒否しつつ、日米両政府に、米軍基地・普天間飛行場の辺野古沖移設(海上基地建設計画)を断念させ、その一歩を踏みしめたい。四月二十六日からは連日、海上基地建設計画予定の陸上や海上で、二十四時間「座り込む」人々を想起しながら、この一文を締めくくる。(五月二十八日記)

  
 土田武信(ジュゴンネットワーク沖縄/沖縄ジュゴン環境アセスメント監 視団)

  (編集部注 一部洋数字を漢数字に変更しました。)