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 第159号(2004年8月28日発行)

沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟

    米連邦地裁に提訴


土田武信(ジュゴンネットワーク沖縄)

 沖縄ジュゴン「自然の権利」訴訟(以下、ジュゴン訴訟)は昨年九月二五日(現地時間)、米国防総省(DOD)とラムズフェルド国防長官を被告に、米国カリフォルニア州にある連邦地裁に提訴された。原告(沖縄・日本側)は、沖縄ジュゴン、ジュゴン保護基金委員会(名護)、命を守る会(名護)、ジュゴンネットワーク沖縄(宜野湾)、日本環境法律家連盟(JELF、名古屋)、真喜志好一ほか二名の個人、米国側は、Center for Biological Diversity(生物多様性センター、ピーター・ガルビンほか担当)と、Turtle Island Restoration Network(タートルアイランド回復ネットワーク)である。原告側の訴訟代理人は、Earth Justice(マルチェロ・モロー弁護士ほか担当)。裁判所は、サンフランシスコ連邦地裁である。

 ジュゴン訴訟は米国文化財保護法(National Historic Preservation Act〔NHPA〕)に基づくもの。NHPAは米国政府に、他国の文化財保護も義務づける。沖縄ジュゴンは日本の文化財保護法上の文化財なのでNHPAの保護対象となりうる。沖縄ジュゴンについてNHPA上の保護対象となることが認められると、DODは沖縄ジュゴン保護のため所轄政府機関との協議が必要となる。このように、ジュゴン訴訟は米国政府に、沖縄ジュゴン保護の施策を求めるものだ。

 籠橋隆明弁護士(JELF事務局長)によると、「@米国政府の行為が国内でも違法であることを明らかにする。A沖縄ジュゴン問題を米国内で認知させ、日米環境派、平和派の共同戦線を作る。BESA訴訟につなげる」と意義づける。海上基地建設計画そのものの阻止をねらった、ESA(Endanered Species Act)に基づく訴訟等の前段としても位置づけるわけだ。

 また、提訴のあと、「@軍事・外交問題は裁判になじまない。ANHPAは他国の主権下には及ばない。B基地建設は日本政府の役割にすぎず、米国政府は関与していない。C米国政府の関与としているDOD文書(一九九七年)は最終的なものではない。DNHPAは生物を保護していない。E基地建設はジュゴンに影響を与えていない。」等をめぐり攻防が繰り返された。八月四日は、裁判所が法廷で原告・被告からの言い分を聞き、そのような攻防に一段落をつけるための手続きだった。

 さて、沖縄から三人――東恩納琢磨(ジュゴン保護基金)、土田武信(ジュゴンネットワーク沖縄)、新垣勉(弁護士)、また、JELFから七名(弁護士)が、その八月四日サンフランシスコ連邦地裁に臨んだ。米国政府の関与を示す二〇〇一年DOD文書の提出を求める等、裁判所の姿勢は積極的だった。裁判所は一、二か月中に、DOD側からの主張――私たちの訴えを却下すべしに対し、裁判所の判断を示すだろう。

 米国の世論づくりでは、Earth Justiceがマスコミ対策を行ったようだ。カリフォルニア州内ではあるが、サンフランシスコの有力紙が破格のスペースで取り上げたし、三つのTV局が報道した。沖縄からの三名を含む傍聴者約五十名も寄与したと思う。日本側は、県内マスコミが強い関心を寄せ、大きく報道したが、本土側は共同通信の配信にとどまった。

 法廷のあった四日、カリフォルニア州立大学バークレイ校で歓迎レセプションも約百名の参加者で行われた(写真)。ジュゴン訴訟で、ウチナンチュ・日系、在日関係者(レセプション主催者)との連携の可能性も出てきた。環境NGOやジュゴン研究者訪問も行なった。

wellcome

【ジュゴン訴訟関係サイト】
  1. http://homepage3.nifty.com/sizennokenri/ ([自然の権利])
  2. http://www.biologicaldiversity.org/swcbd/ (Center for Biological Diversity)
  3. http://www.earthjustice.org/ (Earth Justice)
  4. http://www.jelf-justice.org/ (日本環境法律家連盟)
  5. ジュゴンネットワーク沖縄の主な動き