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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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『一坪反戦通信』
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 第151号(2003年11月28日発行)

抗 議 声 明

 本日・最高裁判所第1小法廷(泉徳治裁判長)は沖縄の米軍基地に土地を有する反戦地主8名に対し、97年「改定」駐留軍特措法違憲訴訟の判決を言い渡した。判決は地主側の提起した全ての憲法違反の主張を全面的に排斥した福岡高等裁判所那覇支部の判決を追認し、97年「改定」特措法を全面的に合憲とするものであった。私達は違憲立法審査権を有しているにもかかわらず、憲法の番人としての役割を完全に放棄したに等しい今回の不当判決に、満身の怒りを込めて抗議するものである。それまで地主の意思に反して強制的に土地を取り上げ続けてきた(旧)駐留軍用地特措法においてはもはやこれ以上土地取り上げができない状態にまで追込まれた政府が、1997年4月、ル一ルを一方的に捻じ曲げ、もっぱら政府の都合のいいように使用期限後も暫定使用できるとしたのが、今回の97年「改定」特措法である。それは、憲法の上に安保条約を置き、安保条約に基づくアメリカヘの基地提供のみをひたすら念頭においた安保翼賛国会ともいえる異常な国会審議のもとで、僅か2週間にも満たない短期間の間で成立させられたものである。ひたすらアメリカに追随し、沖縄にのみ基地の負担を押し付ける行政権と立法権による横暴を、司法権も追認してしまったことの意味は極めて大きい。政治部門による権力の専横に対して、司法が司法としての機能を果たさない時、法治主義ないし法の支配に対する国民の信頼は結局維持し得ないからである。今回の判決により政府・与党は、沖縄県や沖縄県民が何を言おうが、土地を強制使用し続ける法制度に最高裁のお墨付きを得たことに安堵しているであろう。しかしながら法治主義がその本来の意味で機能せず、司法権が行政追随の判断しかしない国家にまともな未来など断じてない。

 本日の最高裁判決では、1996年3月31日で実際に使用期限が切れ、不法占拠となった読谷村楚辺通称「象のオリ」に対する判断もなされた。判決は使用権原なく土地を使用し続けた389日間について、違法な公権力の行使による''不法占拠”と認めて国家賠償請求の対象となるとした1、2審の判断を是認した。何らの権原もなく、地主の意思に反して使用し続けたのであるから当然のこととはいえ、最高裁においても違法と判断されたことの意味は大きい。法を守るべき国が"不法占拠"を長期間継続した法的責任は大きく、国はその責任を問われているといえよう。しかしながら最高裁は、不当な法論理を用いてこの違法な土地使用によりすでに発生している損害賠償請求権が、その後に作られた97年「改定」特措法の損失補償規定とその補償規定に基づく弁済供託により消滅してしまうとした原審福岡高裁那覇支部の判断を支持した。土地を不法に占拠されていた所有者が受け取りを拒否している以上、損失補償規定による供託があっても、国家賠償請求権は消滅しないとして1審判決が僅かに示した司法の良心にさえ、最高裁は立ち返ることもなかったのである。今回私たちが最高裁に問い続けたことは、国の不法占拠が厳然たる事実として存在し、国家賠償請求裁判が現に進行しているその裁判の最中に、被告であり訴訟の一方当事者である国が、立法権を行使して自己に都合のいい法律を作り、損失補償規定をつくり、供託さえすれば損害賠償請求権がなくなるというそのような専横行為が本当に許されるのかということであった。「象のオリ」不法占拠という特定事件の処理のみを念頭において、損害賠償請求権を排斥することをもっぱらの目的とする「狙い撃ち」とも言える法律がはたして立法権の名の下で許されるのか否かということであった。本日の最高裁判決は、国の違法を救済するためであれぱ、事実上個人を狙い撃ちにする立法も可能であることを示したものであり、立法行為の横暴に対して司法が全く無力であることを示したものである。また国家の違法を確認し、損害の回復を図る国家賠償請求と、公益的な国家目的遂行の過程で国民に生じる(主に経済的)損失を公平の観点から填補する損失補償制度との質的相違を必要以上に相対化し、国家賠償制度を形骸化する危険性を有する判決といえる。このことは武力攻撃事態対処法や国民保護法などの有事法制の中で、国家行為に基づく損害賠償請求をあらかじめ(損失)補償規定で補おうとする立法の傾向に一層の拍車がかかる危険性とも相通ずるものであり、その点からも今回の最高裁判決は到底容認できないものである。

 なぜ沖縄だけが米軍基地の更なる重圧に耐えなけれぱならないのか。この沖縄からの問いにまたしても最高裁は真正面から答えることはなかった。しかしながらこれで闘いが終わったわけでは決してない。私たち反戦地主会、違憲共闘会議、反戦地主弁護団は今後とも、基地の取り上げに断固反対し、沖縄を基地のない平和な島にするべく全力を尽くすことをここに宣言する。

2003年11月27日  

権利と財産を守る軍用地主会(反戦地主会) 
基地違憲訴訟沖縄県民共闘会議 
反戦地主弁護団